《講義》 急性被ばく症候群と放射線事故の歴史  講師 : 吉田 浩二
  急性放射性症候群の概説と、これまでの放射線事故(スリーマイル島、ハンフォード、JCO臨界事故等)の事例に関する講義

 感想等(抜粋)
被ばくによる前駆症状の重症度はさまざまな点で目安となるものであった。また、それの知識があると外部被ばく線量の推定が可能になる。今すぐ役に立つというわけではないが、これらの知識を持った人が地域や行政にいるというだけでも、放射能被害を目の当たりにした福島県住民の安心のひとつになると感じた。



《実習》 被ばく・汚染傷病者受入実習  
      講師 : 熊谷 敦史 ・ 安井 清孝 ・ 吉田 浩二
被ばく・汚染傷病者医療対応実習。第一報を得て、直ちにチーム編成と対応内容のブリーフィングを行った後に二班に分かれ対応。一例目は歩行可能な下腿汚染者、二例目は汚染を伴う下腿開放骨折とし、情報収集、防護服着用、汚染拡大防止、汚染患者救急対応を実践。
   

感想等(抜粋)
汚染傷病者受け入れの準備や、実際、対応の仕方などの実際をリアルに考えることができた。看護師・保健師としてリスクコミュニケーション能力を高める必要性を強く感じた。実習を重ねて受け入れに慣れていかないと実際に絶対動けないと感じた。


《修了式》   修了証書授与 : 大津留 晶

   

最後に、このセミナーへ参加しての全体のご意見・ご感想を伺いました。(抜粋)

  この講義を受講する前までは、私自身、小さい子供の親ということもあり、食品の放射能汚染や、(栃木県内の空間線量が若干高めの地域での)屋外での活動などについて、過剰に対応していたように思います。今回の講義を受講して(特に、熊谷先生からのわかりやすい説明をきいて)、科学的評価(客観的評価)に基づいて、被ばくのリスクを考えることができるようになったことが、私にとって最も大きな収穫でした。 その一方で、一般の方が、このようなリスク評価の方法を理解することは、とても難しいであろうということも感じました。安全と安心の違い、リスクコミュニケーションの難しさを感じました。 また、今回の講義では、医療の視点だけでなく、人文科学的な立場からみた災害の問題点や、幼稚園の先生からみた幼児への影響と保護者の葛藤など、異なる切り口で災害の問題について考えることができたこともよかったと思います。被災地の見学や、避難者の間で発生している様々な問題についての話をきいて、今回の原発災害の過酷さ、復興への道のりの難しさを痛感させられました。 最終日の、汚染傷病者受け入れ実習では、重症の傷病者に対して、通常の救命医療と被ばく医療を両立させて行うことの難しさを実感しました。今回の講義で得た知識を、今後、職場の仲間へフィードバックしていきたいと思います。また、被ばく医療、原発災害についての正しい知識を広めることは、とても大切なことだと思いますので、このような活動を続けていっていただきたいと思います。

  本研修は被ばくという人体に対する影響や問題を学問的に論じるだけでなく、実際に福島に起こったこと、起こっていること、起こりうることを医療者の視点と住民の視点の両面から客観的にプレゼンいただけたことは放射線事故の実情を知る為に大きな成果になった。福島県の住民心情や感情、言葉の不適正を抜きに率直に感想を言わせていただければ「楽しい研修」であり、学びの多い学習が行えたと思う。しかし、これらを生かすことがないことが望ましい。だが放射線事故や放射線被ばく事象起こりうる可能性はある訳であり、その際には今回の知識や技術を活用して対応したい。


  放射線技師は、放射線に対する知識を持っていて当然と思われがちですが、日々の業務(CTを撮影したり、X線撮影をしたり)に追われ、被ばく、放射線の知識よりも、より良い画像の提供に力を注いでいたように思い、改めて放射線の知識の無さを痛感しました。今回の震災では、放射線問題が多く取りざたされていますが、被災地では放射線以外の問題も多くあることを学びました。汚染患者の受け入れに対するシミュレーション実習では、医師、看護師、放射線技師、事務のそれぞれの役割が確認でき、当院でも放射線技師、放射線管理要員だけで、汚染患者の受け入れ方法、被ばくの測定、除染などの練習をかさねてきましたが、医師、看護師を含めた本番さながらの訓練を体験することにより、汚染患者の受け入れに対して自信を持つことができました。このセミナーを受講して、放射線の知識、放射線を正しく伝える力、メンタルケアの知識、放射線災害による医療対応の仕方、リスクコミュニケーションの知識など多くの知識を頂きました。これからは、その頂いた知識を多くの人に伝え、生かしていきたいと思っています。