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大学院学位記授与式 学長式辞  (令和2年9月30日)

大学院学位記授与式の様子1 大学院学位記授与式の様子2 大学院学位記授与式の様子3

本日ここに学位を授与された大学院修了生十八名の諸君に、福島県立医科大学の教職員を代表して、心からお祝いを申し上げます。併せて、今日の学位記授与式を迎えるまで、ご家族、および関係者の皆様よりいただいた数々のひとかたならぬご支援に対し、厚く御礼申し上げます。

さて皆さんは、本学に入学以来、多くの苦労や困難を乗り越え、この日を迎えることが出来ました。ここに至るまでの努力に深く敬意を表したいと思います。これから皆さんは、医師や看護師、保健師、研究者といったそれぞれの肩書を持って社会に出ていきます。月並みではありますが、これがゴールではなく、新たなスタート地点に立ったことを改めて認識してください。
 そして、新たなスタート地点に立つとは、学び続けなければならない、ということと同意であると心に刻んでください。もちろん、これは容易なことではありません。科学の進化のスピードは目覚ましく、学んだ知識も技術も、短期間でさらに新しい知見へと塗り替えられる宿命を負っているからです。ですから、医療の専門職であり続けるために、そして、より高いレベルのプロフェッショナルを目指すために、私たちは、絶えず学び続け、専門性を追求する歩みを止めることはできないのです。

ただし、社会に出るということは、単に専門性を磨けばそれで良いというものではありません。いま、世界規模で新型コロナウイルス感染症が蔓延し、「withコロナ」の時代をいかに生きるかが人類の大きな課題になっています。その結果、社会の在り方そのものが、変化しようとしています。これらの動きを「自分には関係ない」と見過ごさないでください。社会の形が変わるということは、医療の在り方も変わるということだからです。安定した医療の提供、着実な医学の進歩は、安定した社会の上に成り立っています。先ほどお話しした、学び続けるということも、安定した社会があってのことです。医療活動が根差している社会そのものが、変化しようとしているのですから、私たちがそのことに無関心でいるわけにはいかないのです。
 例えば、地域や地方分散生活の価値が見直されています。都会の人々が一極集中のリスクを認識し、自ら積極的に地方、地域へ分散することを考え始めました。すると、今の体制ではあまねく医療を提供することは難しくなります。遠隔医療が進み、AIの導入が進めば、診断や治療、看護の形も変わります。患者さんとのコミュニケーションも形も変わるでしょう。地方分散化により、必ずしも身近に医療機関があるわけではない生活では、保健、予防啓発が、今にもまして重要性を増すことも考えられます。さらに高齢化と相まって、患者さんが医療機関に来院する負担が大きくなれば、医療スタッフが医療機関に常駐し、患者さんを待つ形は、ニーズに合わなくなるかもしれません。在宅勤務へのシフトが進むことでも、同じような課題が生じるでしょう。
 これまでの医療の形は通用せず、全く新しい医療の形を構築しなければならない時代を、私たちは迎えつつあります。「ニューノーマル 新しい生活様式」を模索する中で、多くの当たり前だったことがそうでなくなる、すなわち、パラダイムシフトが起きようとしているのです。しかも、この変化は不可逆的、恒久的であり、社会がコロナ以前の姿に戻ることはないでしょう。不可避となった変化を傍観するのではなく、いかにプラスに変えていくかという視点での対応が求められます。
 そのために必要なことは、医療とそれにかかわる社会を、面的にも時間的にも俯瞰し、考えることです。社会の変化の必然や背景、本質を探り、掴む努力をしてください。そうすることで、社会ニーズに裏打ちされた将来構想、いわゆるビジョンを描くことが可能になります。ビジョンのないまま闇雲に行動することは、個人であっても組織であっても、社会ニーズに沿えず、孤立を招きかねません。私たちが社会としっかり噛み合った、頼られる存在となるために、社会全体を俯瞰する力、時に専門外、医療以外のジャンルにも触れ、時に医学史を紐解くなど、視野を広げることを意識してください。

まさに今この時に、社会に出る皆さんは、好むと好まざるとにかかわらず、歴史の流れの中で、必然的に新しい社会における新しい医療の形を構築するフロントランナーと位置付けられます。難しい要求かもしれませんが、今起きている社会の変化は避けて通ることはできません。そうであれば前向きに事に当たるほうが建設的です。何事もそうですが、前向きであることが可能性を広げます。ある日本の科学者の言葉です。「出来るというより出来ないという方が難しい。出来ないと言い切るためには、あらゆる可能性を探し、試さなければならないからだ」必ずどこかに突破口はあります。ぜひ、新しい社会のニーズに噛み合った新しい医療の形を模索し、実現してください。  今日から始まる皆さんそれぞれの新しいスタートが、将来にわたり実り多いものとなることを祈念し、はなむけの言葉とします。

本日はおめでとうございます。

令和2年 9月30日
福島県立医科大学 学長
竹之下 誠一

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