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大学院学位記授与式 学長式辞  (令和4年9月30日)

大学院学位記授与式の様子1 大学院学位記授与式の様子2 大学院学位記授与式の様子3

本日ここに学位を授与された、医学研究科博士学位取得者16名、看護学研究科修士学位取得者1名の計17名の諸君、福島県立医科大学の教職員を代表して、心からお祝いを申し上げます。併せて、本日の学位記授与式を迎えるまで、ご家族および関係者の皆様よりいただいた数々の多大なご支援に対し、厚く御礼申し上げます。

さて皆さんは、大学院入学以来、多くの苦労や困難を乗り越え、この日を迎えることが出来ました。特に皆さんにとっては、履修過程の大半がコロナ禍に見舞われ、医療の現場に出ることがなかなか叶わないという環境の中での学びだっただけに、その苦労は並大抵のことではなかったであろうと、容易に推察できます。皆さんの、ここに至るまでの努力に深く敬意を表したいと思います。そして、これから皆さんは、医師や研究者といったそれぞれの肩書を持って社会に出ていきます。月並みではありますが、これがゴールではなく、新たなスタート地点に立ったことを改めて認識してください。

コロナ禍は既に2年以上を経過し、いまだ日本をはじめ世界で猛威をふるっています。これだけ衛生環境が整い、医療の質も高い日本において、まさか感染症で大勢の死者が出るとは3年前には思いもよらなかったことです。しかも日本ではまださほど大きな影響はありませんが、新たにサル痘の感染拡大が世界では関心事となっています。長く医療に携わってきた私たちにとってもこのような事態は初めてという状況が続いており、次第に過去の経験が役に立たなくなってきています。これは医学、医療に限った話ではありません。進む気候変動により、これまで経験したことのないような豪雨やそれにともなう災害が目立つようになってきました。11年前の東日本大震災は100年に一度、1000年に一度といった表現が為されましたが、最近では災害のたびに何年に一度といった表現が為され、過去の経験則がうまく当てはまらない事態を招いています。

そして極めつけは、今年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻でした。77年前に、もう二度と世界を戦禍に巻き込まないようにと設立されたのが国際連合でした。そしてその中で、世界の平和と安全の維持に主要な責任を負うはずの安全保障理事会常任理事国のひとつであるロシアが自ら、他国を侵攻するという暴挙に出たのです。過去の経験と教訓に基づいて、利害の異なる者も共に合意し、創出した成果を、まさかその基盤を担う国が壊す行動を起こすとは、誰が想像できたでしょうか。
 このように、いまや国際社会全体が、課題解決のために前例を踏襲できない環境や状況に直面しています。過去の知見だけに頼っていては前に進めません。いや、社会の側が急速に変化をしている中では、前に進めないどころか、相対的には後退を強いられるかもしれません。そうであれば、私たちは過去の知見から何を導き出せるのかだけでなく、さらにどのような新しい知見を加えていくことが出来るのか、強く深い洞察力が求められます。何が正しいのか答えは分かりません。導き出した仮説を用いてチャレンジをするしかありません。そして残念なことに一度のチャレンジ課題が解決されることはまずありません。何度も試行錯誤と修正を繰り返すことで徐々に新しい対策を構築していくしかないのです。そこには答えなき事態に耐え抜く力、予測不可能な社会において、心身ともに破綻しない忍耐強さが求められることをよく承知しておいてください。

さて、ここまでお話すると皆さんは大変な時代への門出と思うかもしれませんが、それも捉えようです。これまでにない新しいことを構築するということは、皆さんがそのトップランナーとなることが出来る時代ということでもあるからです。私たち福島県立医科大学も、11年前の東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故による困難から、いかに復興するかが、大学の価値を維持し発展させるための大きな焦点でした。他大学と同じことをすることは 、誰かの後塵を拝することです。だからこそ私たちは敢えて「新しいこと」にチャレンジしてきました。その結果、本学はα線核種を使った放射線内用療法や、タンパク質マイクロアレイ技術の確立など、世界でも数少ない研究成果と技術を備えた大学となりました。そして、国が浜通りに設置を計画する国際教育研究拠点の中核組織として名乗りを上げ、イノベーションコースト構想へも参画し、貢献できるまでに発展しました。そこに常にあったのは「ピンチをチャンスに」というモットーでした。これを本学の「伝統」と言うにはまだ日が浅いですが、しかし、着実にそのモットーを体現していることは間違いありません。これから本学を母校とする皆さんが社会において、ピンチをチャンスに変える、たゆまぬ挑戦を見せてください。皆さんの努力によって、「ピンチをチャンスに」という言葉が本学の伝統である、と自他ともに認める日が来るのも決して遠くないことと信じています。皆さんのこれからの活躍と成功を祈って、はなむけの言葉といたします。

令和4年 9月30日
福島県立医科大学
学長 竹之下 誠一

事務担当 : 教育研修支援課

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