《講義》 これからの緊急被ばく医療体制
講師 : 谷川 攻一(ふくしま国際医療科学センター)
  福島原発事故の大混乱期に住民避難、原発作業員への医療を現場で支え、その経験をもとに原発災害医療の再構築を中心になって推進してきた経験を紹介し、新しく施行された緊急被ばく医療体制を現場の医療人の立場からわかりやすく解説

 感想等(抜粋)
福島原発事故の際の緊急被ばく医療の体制は多くの点で後手になって多くの方、特に高齢者等の医療弱者の尊い生命を奪う事になってしまった。この事を私たちは忘れる事なく原子力災害時に、限られた資源ではあると思うが最大限に効率的に被ばく医療が提供できるよう、平時より医療ネットワークの構築と関係機関との緊密な連携に努めていかなくてはならないと感じた。


《ランチョン》 被災住民の避難生活
講師 : 安井 清孝
  避難開始から避難所、仮設・借り上げ住宅、そして現在の避難者の生活と健康問題について解説

 感想等(抜粋)
避難所の問題は多々あるが、やはり焦点を絞るとすれば高齢者の問題がクローズアップされると感じる。この問題は福島県だけの問題でなく今後、超高齢化社会を迎える本邦全体の縮図ともいえるもので、これらを糧に今後の災害対策を模索しなければならない。また,高齢者が被災し環境変化が起こると、生活のみならず家族の役割変化や社会との繋がりの変化などとなり、生活不活発病の発生から介護申請率の上昇など社会的問題になることも新たに認識した。


《講義》 福島の今の健康問題
講師 :橋本 重厚(県民健康管理センター)
  「県民健康調査」の健診結果をもとに、震災後の福島における実際の健康問題を紹介し、特に被災地における生活習慣病リスクの高まりに対する改善策を参加者と共に討議・検討

 感想等(抜粋)
この講義は直接的な放射線による健康被害ではなく、避難生活という環境変化や生活パターンの変化が福島の人々の健康被害に繋がることがリアルに理解できる内容であった。このような健康変化を早期に把握し対応することは、災害医療の目標の一つである「災害による二次健康被害の予防」に密接に関係し、またこれらを放置することにより、「関連死」=「防ぎえた災害死」の発生の要因になることを忘れてはならない。


《講義・演習》 リスク認知
講師 : 中谷内 一也(同志社大学)
一般大衆に対する統計情報の影響力、リスク認知のあり方等について社会心理学的実験の結果を交えて解説。及びリスク認知の講義を受け、5グループに分かれて社会心理学的実験を含むワークショップを実施。
  

 感想等(抜粋)
この講義で、これまでの言いようのない無力感のようなものがだいぶ整理された。「未知のもの・放射線」に怯えることの裏付けを分かりやすく知ることができた。また非常に高いリスクを説明する場合、比較対象を用いると逆効果になりやすい事、主要価値類似性モデル(SVS)が土台に無いと信頼されず、主要な価値を自分と共有していると感じるとその相手を信頼するとの事、また信頼度が低下している場合は特に価値共有が大事であり、技術力や専門性をアピールしても効果は低いとの事で、県内の医療従事者がすべきことは多いようだ。確かに、県内住民に話すことと他都道府県の人に話す場合、その内容や言い方、相手の理解などに差が有ることは何となく経験してきた。ただ、どうしてそうしなければならないのかを上手く咀嚼できていなかったように思える。もう一つの課題は、県外避難をした人達との意見交換であろう。あの混乱とどうしようもない不安を経験し、別の選択をした人達がどの立ち位置なのか、背景が複雑で難しい課題である。無いことを願うが、今後同様の災害が発生した場合は、「共有を得ようと外部から入ってくる場合は、自発的に。」を基に行動したいと思う。