FUKUSHIMA WILL... 福島県立医科大学
学生災害ボランティア活動報告会


福島県立医科大学HPセンターTOP
福島県立医科大学 学生災害ボランティア活動報告会
自治医科大生からのメッセージ

 自治医科大生からのメッセージ


「福島県立医科大学 学生災害ボランティア活動報告会」の開催に当たり、
福島県出身の自治医科大生からメッセージが届きました(一部抜粋)


● 今、私たちに出来ること

私たち医学生が今できることは、放射線を含め医師として働くときに必要な知識を蓄えることであると考える。将来患者さんから「今の福島の放射線の状況はどうなのか」「震災時福島にいたが健康に影響があったのか」「今の自分の病気が被曝と関係しているのか」と問われることが多々あるだろう。その時に患者さんを自信を持って答え、患者さんの不安を取り除くことができるかは、今後の勉強にかかっていると思う。将来少しでも患者さんの力になれるように、残りの学生生活を過ごしていきたい。

今現在医師ではなく、しかし数年後には確実に医師になる私たちにできることは、放射能に対する正しい知識を得ることである。将来福島県で医療を行う際、放射能被曝による長期的な健康被害を受けた患者さんや、実際には関係なくても、自身の疾患は放射能の影響によるものと考える患者さんに出会うのはほぼ確実だろう。その時に、放射能被曝に対する正しい知識を身に付けておくことによって、患者さんに、正しく対応することが出来るはずだ。
大学生という、比較的時間のある立場を利用して、災害復興のボランティアに行くことも可能である。しかし、私の友人に、ボランティアに行ったことで(詳しい理由は分からないが)精神的に病んでしまい、結果学業を休学するまでに至った者がいる。そのような危険があることも考慮に入れると、一概にボランティアに行くのが本当に良いのかどうかは分からない。



▲ページTOPへ


● 未来へのメッセージ

次の震災が何年後に起き、その時自分がどこで働いているか分からないが、急性期の医療、つまり、災害医療の心得は必要だと思う。災害医療は通常の業務とは異なり、トリアージなどの特殊な考えが必要であるので、どこかで学んでおくことが大切である。どこにいても災害は起こり得るので、必ずやっておくべきだと思う。
また、今回の震災での経験、反省点をまとめ、次回に活かすことが出来れば有用である。停電による病院の対応マニュアルなどを、実体験を通して、より実用的なものに改良出来ればいいと思う。


今回の震災によって医療に限定してみても様々なトラブルが起こったと思う。地震による救急患者で病院がパンクするようなことはなかったようだが、電力や重油の不足で患者の管理ができなかったり、被災者は病院に行けず、薬が足りなくなったり、透析ができなくなったり、福島でほとんどを産生していたものがストップしそれが使えなくなったり(血液培養に使う培地は福島県がかなり作っており、関東圏でも血培ができなくなった病院が多いと聞きました。)など。そういった問題点を収集し、リストアップし、対策を考え、厚生労働省や他の医療機関に発信することが、医療サイドからできる大切なことだと思います。


▲ページTOPへ


● 福島や福島医大に対する他県からのイメージ

今回の震災を通して、福島の状況が他県にはあまり伝わっていないと感じた。福島県に隣接する栃木県ですら、得られる情報は全国版のテレビニュースや真偽不明なインターネットからであり、日本のどこでも得られる情報と同じ程度であり、どこか遠い地域の事件のように報じられていた感がある。
栃木県の何箇所かで被災した方々を受け入れてくれたことは、福島県出身の私たちとしても、大変ありがたいことであったが、その一方で福島ナンバーの車が傷つけられた・石を投げられたなどの悲しい話も耳にした(この事件も真偽も確認したわけではない)。最近テレビでは空間や食品の放射線のニュースを除き、被災者のニュースは減ってきており、このまま他県の人たちにとって震災が風化されてしまうのではないかという不安を感じる。  未だ原発事故は収束しておらず、福島を敬遠する人たちが他県に大勢いるため、これからも情報を県内から発信してほしいと思う。


他県から福島県に対するイメージとして多くの人が持っているイメージは、「危険な県、近づきたくない県、関わりたくない県」ということだと思います。程度にはかなり差はあると思いますが、みんなそういうイメージを少なからず持っていると思います。(この間福島県で学会がありましたが、本当に行っても大丈夫なのか先生に何回も聞かれましたし、できれば行きたくないとも言っていました。)このイメージは何を発信しても拭い去ることのできるものではなく、時間が解決してくれるのを待つしかないと思います。放射線というなじみのなく理解しにくいものをみんな恐れています。放射線が0になったという事実でもない限りそのイメージは変わらないと思います。


▲ページTOPへ


● 県外から見ていた震災直後と放射線問題について、どう感じていたか

震災当日は栃木県でも全域停電となり、原発を含め福島についての情報は全く入ってこなかった。震災後3日目くらいでようやく原発事故に栃木県でも気づき始め、不安が広がった。自治医大では翌週には被曝についての緊急講義が全職員・学生を対象に2回行われ、そのときようやく原発事故が医学的にどういう状況なのかが知らされた。被曝とその影響について知識を得た上で改めて福島を考えると、テレビニュースの通り健康に対する影響は無視できるくらい小さいと感じることができるし、インターネット上の情報がいかにデマや風評に溢れているか実感する。しかし、放射線について学ぶ前の自分なら、不安に押しつぶされ、ネット上のデマに踊らされ、危険だ・命が危ないと叫ぶ悪いニュースばかり信じてしまうのではないかと思う。福島県内の方々もきっと同じストレスを感じているのではないか。何が危険で何が安全なのか、いかに伝えていくかが今後の福島の課題だと思う。

放射線については、とりあえず危ないけど、詳しいことは何もわからない、何も信用できないというのが、正直な感想でした。あまりにも多くの情報が錯綜していたことと、信頼できる政府などの情報源からはまともな情報が発信されなかった(ように見えた)ことがその原因だと思います。ある程度放射線というものを理解している、理解することのできる僕たちでもそうだったのだから一般人ならなおさらだと思います。また、放射線というものにはいろいろ種類があり、何で防げるかということもことなっているけれども、それがみんなに伝わっていないので、授業中にも窓を閉め切る学校が出ているなどおこっている問題もあります。こういった勘違いを防ぐためのわかりやすい情報発信は必要だと思いました。


▲ページTOPへ


● 福島復興に対する思い

今回の震災が、日本に与えた影響は甚大です。特に福島は、世界規模で「HIROSHIMA」「NAGASAKI」と同様、「FUKUSHIMA」として知られてしまいました。今後、どの程度まで被害が広がるか分かりませんが、将来福島で医療を行う際に、放射能の影響について考えるのは必須になると思われます。将来福島の医療の中心になる福島医大生と共に、自治医大生は頑張っていきたいと思います。お互いに協力し、医療の立場から、福島を支えていきましょう。

今回の震災で多くの人が傷つきました。災害の急性期は過ぎたけれど、問題は数多く残っています。震災が引き起こしたのは目に見えるケガや病気だけではありません。一生涯目に見えず残る心の傷も作っていきました。福島県立医大では低線量放射線の影響について研究することが課題であるということを聞きました。しかし、そのような研究で被災者の心が救われることはありません。その研究から対策がなされたからといってみなが安心できるということもないと思います。将来臨床の現場に立つ人は患者さんがどんなことを考え、何を不安に思っているかを知って、患者さんのためにどのように行動したらよいか考えることが大切だと思います。そして、ひとりひとりの丁寧な医療が、福島県の皆さんが、安心して暮らせるような福島県を作っていくのだと思います。福島復興に対して私たちのできることは少ないかもしれませんが、福島医大の皆さん、共にがんばりましょう。


▲ページTOPへ


                                            福島県立医科大学 医療人育成・支援センター 
                                              〒960-1295 福島市光が丘1番地
                                              п@024-547-1047  FAX 024-547-1715