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福島県立医科大学:理事長兼学長ごあいさつ
竹之下誠一理事長兼学長写真
理事長兼学長
竹之下 誠一

令和4年度、2022年度は私たち福島県立医科大学にとって、新しいフェーズへの飛躍を掛けた年となります。震災から10年間、私たちは常に前例のない多くの課題に直面し、チャレンジを繰り返してきました。その過程には将来の可能性を感じさせる成果もあれば、失敗もあります。そして、成功体験も失敗も、そのひとつひとつに福島県の復興と本学の使命を完遂しようとする先人と私たちの想いが詰まっています。だからこそ失敗の経験も含めてなにひとつ無駄にすることはできません。

本学にとって今年度からの10年間は、これまでの様々な経験を束ね、新しい価値としていかに集大成させるかが、最大の課題になります。その新しい価値とは、他大学にない、本学を特徴づけるものであり、世界の中で本学を際立たせるものでなければなりません。そうでなければ「飛躍」とは言えません。幸いにして本学は、放射線科学、創薬医療分野や原子力災害に関するデータや知見の集積・発信において、他に追随を許さない多くの成果を蓄積してきました。しかし、それはまだまだ「知る人ぞ知る」という段階です。これをいかに全国に、世界に通用する成果として「知らぬ者はいない」「万人の知るところ」にするのかが、これからの私たちの10年の課題となります。この課題達成のために、一歩でも先へ、最先端を切り拓く志と覚悟を決めて、新年度の業務に取り組んでまいります。

そして同時に、忘れてはならないこともあります。それは、そもそも何のために、誰のために、その研究や教育、診療や復興策が始まったのかを常に意識することです。目的とターゲットを見失ったプロジェクトは、必ず迷走し、最善の結果を出すことはできません。過去からのつながりの先に、未来はあります。だからこそ、常に原点に返って、現在のステータスを確認する作業は必要不可欠です。もちろん現状に鑑みて、そのプロジェクトが実情に合ってなければ、目的もターゲットも変えることはあり得ます。しかし、そうであっても、いや、だからこそ、単に先端を走ろうとするばかりでなく、原点に立ち返り、検証するプロセスを忘れてはならないのです。

歴史の積み重ねの上に今の本学はあります。過去を忘れることは、今日までを築き上げて来た先人や、犠牲を払ってきた人々、そして私たちを支えてくださった多くの皆様への敬意をないがしろにし、それまでの成果を無にする行為に他なりません。それを如実に表したのがロシアのウクライナ侵攻でした。世界は、20世紀前半、果てしない戦禍と計り知れない犠牲を経て世界の平和を維持する枠組みとして国際連合を作りました。しかし、その中核である常任理事国のロシアが軍事侵攻を行ない、国連は世界の平和維持において機能不全に陥っています。これからの世界の平和の行方に暗雲が垂れ込めています。リヒャルト・フォン・ワイツゼッカー元ドイツ大統領が1985年に行った演説の一節「過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目となる」という言葉を今、もう一度私たちは咀嚼する時なのかもしれません。

世界規模の危機に比べれば、本学の過去からの積み重ねと未来への取り組みはごく小さなものにすぎません。しかし、新しいフェーズへの飛躍を目指す以上、過去を振り返り、現在を検証し、未来を洞察することは、事象やプロジェクトの規模に関係なく必要とされる姿勢です。本学では、今年度のスタートにあたり、これこそが本学のひとりひとりに特に求める姿勢であることを伝えました。県民をはじめ、多くの皆さまの変わらぬご支援をどうぞよろしくお願い申し上げます。

令和4年(2022) 4月1日
福島県立医科大学 理事長兼学長 竹之下 誠一

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