



理事長兼学長
竹之下 誠一
新年度がスタートする矢先、3月28日にミャンマー中部で大規模な地震が発生し、隣国のタイ王国まで被害が広範に及んでおります。両国において、お亡くなりになられた方々に哀悼の意を表しますとともに、被災された全ての方々に心よりお見舞い申し上げます。そして、被災地の一日も早い復旧・復興を心より願っております。
さて、本学では昨年度、二つの大きなプロジェクトの構想がまとまり、今年度から具体的に目に見える形でその計画が動き始めます。
ひとつは双葉地域における中核的病院の整備と附属病院化です。震災により大きく棄損した医療体制の再構築のため、双葉地域における中核医療機関の整備は急務とされてきただけに、その期待は非常に高いものがあります。そして、もう一つのプロジェクトは光が丘の附属病院病棟の建て替え再整備です。より良い療養環境のもとで先端医療を提供するため、老朽化の進んだ病棟の建て替えもまた喫緊の課題でした。
これらのプロジェクトが今年度、いよいよ実施段階へと駒を進めることになります。そこで、私たちが留意しなければならないことは何でしょうか。それは端的に言えば「しなやかに学ぶ」という姿勢を持ち続けることです。
プロジェクトが構想段階だったこれまでは、いろいろなリスクや可能性を俎上に上げ、検討を繰り返すことができました。しかし、私たちは往々にして、一度構想が固まり計画が動き出すとリスクやニーズの“その後”に注意を払わなくなる傾向があります。しかし、言うまでもなくリスクもニーズも時間の経過とともに変わっていきます。予めどんなに丁寧に構想を練り、詳細を詰めたしても、時間の経過、社会の変化によって新たなニーズやリスクが生じることに抗うことは出来ません。
ですから、常に私たちは現状の把握に努め、変化への対応を考え、必要に応じて学び続けるしなやかさを保持し続けなければなりません。私たちのミッションはこれらのプロジェクトを社会に広く貢献できる形にすることです。社会に貢献するとは、すなわち、出来る限り県民の皆さんのニーズに対応し、満足度、納得度の高い医療施設を作るということです。当事者の頭の中から、誰のため、何のための医療施設なのかが消えたままプロジェクトが進行してしまうと、結果として出来上がるものは、誰のニーズも満足させることのできない施設となってしまいます。私たちは常に変化し続けるニーズやリスクに関心を持ち続け、想定されるリスクを少しでも見越した医療施設を完成させるために考え、しなやかに学び、行動することで、このミッションの完遂を目指してまいります。
プロジェクトの骨格が固まったからといって、盲目的にそれを推進していけば良いというものではないということは、このプロジェクトに限った話ではなく、全てのことに通じることです。何事においても、これまで繰り返してきた検討と練り上げた構想をより高い価値ある形にするために、さらに丁寧にニーズやリスクの検証を続け、必要に応じて学ぶ。すなわち「しなやかに学ぶ」姿勢を、すべての教職員自らの肝に銘じて行動する1年としたいと思います。そして、医療を取り巻く環境もニーズも大きく変わる中、これからの医療のより良い在り方を体現したモデルとなるべく、本学の教育と研究、診療を推進してまいります。
令和7年(2025) 4月18日
公立大学法人福島県立医科大学
理事長兼学長 竹之下 誠一