福島県立医科大学解剖慰霊祭
その尊い御遺体を捧げた故人の徳を偲び、御霊の冥福を祈るため、遺族、来賓を招き、教職員、学生の出席のもとに、毎年秋に解剖慰霊祭を執り行っています。
第74回福島県立医科大学解剖慰霊祭 学長式辞 (令和5年10月25日)
第七十四回福島県立医科大学解剖慰霊祭を挙行するにあたり、御遺族の皆様、御来賓の各位とともに、教職員、学生一同、謹んで御霊前に哀悼の意を表し、御霊の安らかならんことをお祈り申し上げます。
本日、お供えをいたしました御霊は276柱であります。これまで合わせて18,260柱をお慰めしてまいりました。
自らの尊い御意志と御遺族の方々の深い御理解と御協力のもと、医学、看護学、助産学、保健科学の教育や学術研究の発展のために、皆様は御遺体を供してくださいました、その崇高な御心に対し、ここに深甚なる敬意と感謝の念を捧げます。
医の道を志して本学に集うほぼ全ての学生にとって、御遺体を前にすることは初めての経験であり、最初は誰もが少なからず動揺し緊張するのが常であります。だからこそ、学生たちは無意識のうちにも、自らの感覚を鋭敏に研ぎ澄まして御遺体に向き合うことになります。
そして、身体の仕組みを学ばせていただく中で、その精緻さと神秘さを目の当たりにし、生命の尊厳を感じずにはいられなくなるのです。真摯な気持ちで御遺体と触れ合う学生たちは、必然的に御遺体の生前のお想いを推しはかり、医療を志す者としての使命を深く考えて自問自答を繰り返すこととなります。それはまさに沈黙のうちに行われる学生と御遺体との間のコミュニケーションであります。
学生は御遺体の“言葉にならざるお言葉”のご指導をいただき、ご献体という崇高な行為と想いに触れ、医の道を進む自らの覚悟をより強く固めていくのです。御遺体とともに行われる学生たちの実習は、決して身体の仕組みを学ぶためだけの場ではありません。医療に携わる全て者の根底に流れる共通の意識、すなわち生命に対する畏怖の念と人に対する慈しみを育む、欠くことのできない場でもあるのです。
ご遺体を解剖に供してくださいました皆様は、未来の医療を担う本学の学生たちが、病の砦となり、社会の安心と安定の礎となること、そして、新たな学びと研究の成果を広く社会に届け、より高度な医療の発展に資する人材となることを願った方ばかりであります。私たちは、その願いに思いを馳せ、必ずや学生たちを一人前の医療人として育ててまいります。
そして、病に苦しむ人々の希望となり、人々の生命の輝きを守る医療人、病に挑戦する努力を惜しまず、少しでも医の高みに達すべく前進しようとする医療人を社会に送り出すことを御霊と御遺族の方々にお誓い申し上げます。
最後に、皆様の御高徳を偲びつつ、その御霊が安らかならんことをお祈りして、式辞といたします。
令和5年10月25日
福島県立医科大学 学長
竹之下 誠一
事務局:教育研修支援課
学生総務係
電話:024-547-1972
FAX:024-547−1984
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