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国際交流  International Exchanges

遠藤祐子 「武漢大学留学報告書」

はじめに

今回、私は基礎上級の一環として、4/19〜5//14の約1カ月の期間で中国湖北省、武漢大学に留学する機会を得ました。
以下の報告は単なる事実の報告というよりは寧ろ、私個人の感情を多く含んだ体験記のようなものです。
ここで私が語りたいのは、一日本人医学生である私が味わったたくさんの小さな経験や、内側から見た中国・武漢大学です。
この滞在中に得たたくさんの小さな驚きや発見を本稿に書き留め、皆さんにお伝えできればと思います。そのため、私的感情を多く含んだ読みにくい文章であることをご容赦下さい。

医学部5年 遠藤 祐子

研究について

研究テーマと手法

Antiretroviral treatment of HIV in Hubei province, China (中国湖北省におけるHIVに対するレトロウイルス治療について)。自記式のアンケートによる調査および面接調査による横断研究。

この研究テーマは、直接には同講座に留学していた2人のスウェーデン人学生によって提示されたものである。
私が武漢に到着したときには既にこの研究は始まっていて、調査テーマの設定、関連資料の収集、調査デザインの選択、アンケートの作成までは終了していた。従って私が関与したのは、調査の実施とデータ入力に過ぎず、以後に続くデータ分析、結果考察は今後彼らの手によって行われる予定である。
一連の研究が完了するのは2009年秋の予定である。

武漢に着いた翌日、Prof.Tanの部屋に呼ばれるや否やこの研究テーマに着手することになった。
なぜこの研究テーマなのか、誰がこの研究のメンバーなのかなど、詳細については全く何も分からず、始めの数日はただ目の前に与えられた作業をその通りにこなしていくだけだった。
後ほどスウェーデンの学生から、彼らの大学でよく似た先行研究が別の地域を対象に行われており、その研究の一環であることを教えられた。

 

襄樊 (シャンファン)

武漢に着いて3日目の朝、目的も十分に把握し切れぬまま武漢の北西の市、襄樊へ向かう。
メンバーはスウェーデン人留学生2人、武漢大の若い女性講師、通訳として英語の上手い同ラボの学生、そして私の計5名。3国籍、初対面同士、境遇もさまざま、という5人であったが、行きのバスの中から意気投合し、アカデミックな話やらそうでない話やらで襄樊に着くまでの4時間、盛り上がった。
いつも同じ場所、同じ相手と暮らしていると、「分からないこと、不確実なこと」が往々にしてストレスになるが、こうも全てが分からないと、逆に一つ一つ知っていくことが大きな喜びとなることを実感した。

 
襄樊CDCのスタッフの方々と。レストラン(屋外)にて。      隋州のレストランにて。第1回中瑞日麻雀国際試合の様子

アンケート調査

今回の研究では、武漢、襄樊、隋州、他もう一箇所(忘れてしまった)計4箇所をフィールドとしており、この時の目的は襄樊、隋州でのアンケートの回収と、隋州の患者に面接調査を行うことであった。

アンケートを読み取って統計用ソフトに入力すること。これが私の滞在中の一番の仕事であったといってもいい。
アンケート1部につき43の質問項目があり、これが計85枚集まった。
アンケートは多肢選択式で、回答者が選んだ番号をそのまま入力していくだけの単純な作業のはずなのだが、データ入力は骨の折れる作業だった。というのも、質問項目の中には患者自記式の質問がいくつか含まれており、それを中国語から英語に翻訳しなければならなかったからという理由と、もう一つは学生手作りのアンケートであったため、内容に若干の不備があり、アンケート作成者と相談しながら進めなければならなかったためである。
日本も漢字の文化圏なので、作業を進める大体の内容は察することができるようになり、ある程度一人で入力を進められるようになったが、やはり「これって何?」「ここってこうだよね?」「これを入力し終わったら10分休憩しよっか」「いや、まだ残りがこんなにあるからダメだよ」「やっぱり?」などと、ラボの仲間とああでもないこうでもないと言いながら作業を進めていくのはとても楽しかった。
英語は得意だが漢字が分からない人、統計ソフトの使い方は詳しいが英語は話せない人、漢字も英語も中途半端に分かる人と、皆何かはできるが一人では作業ができない人たちの集まりだったので、うまい具合にそれぞれの持ち場が与えられ、誰が主導権を握ることもなく作業は進んでいった。

違った考え方をすれば、こんなに分からないことだらけの調査員同士なのに研究が形らしい形になっのも、ひとえに武漢大学の先生方の惜しみない協力と、研究チーム全員の熱意と努力のお陰であると感じる。
NO PLANで武漢大学に飛び込んだのに、こんなにも素晴らしいメンバーと共に、かなり本格的な研究の一員になれたことは、幸運だったとしか言い様がない。


襄樊CDCの視察

 


武漢CDCに貼ってあった AIDSの啓発用ポスター

 

研究以外のことについて

Prof.Tan のラボ

私が訪れたときProf.Tanの講座には、3年〜5年の学部生2、3人、大学院生4人、ケニアからの留学生1人、スウェーデン人留学生2人、私、の10名超の学生がいた。年齢は19〜24歳で、これといった上下関係もなく、雰囲気のよいラボであった。
基本的に皆真面目で親切だが、話すと色々面白い人たちである。個人的な印象だが、この講座の仲の良さを作り出している1つの要因として、Prof.Tanの学生の面倒見のよさと人柄が挙げられると思った。Prof. Tanは学生たちを大変可愛がっており、他愛ない話で学生と一緒に盛り上がったり、一緒に飲みに行ったりしていた。

また、英語教育に熱心でもあり、ラボの中では積極的に英語で会話するように促したり、週一回のペースで英語によるプレゼンテーションの場を設けたりしていた。
プレゼンテーションのテーマは自由で、大体の学生が自分の研究テーマについて発表していたが、私もこの場で福島医大や日本についてプレゼンテーションをさせてもらった。

この様な方針のお陰で、彼らの英語はかなり上手く、普段から使い慣れている印象を受けた。

 
タン先生と一緒に。黄石の国家鉱山公園にて          タン先生の講座のメンバー。Goodbye Party の日に

 

学生一般

私のいた医学部キャンパスはインド系留学生を筆頭に留学生の割合がかなり高く、キャンパス内を歩いていると3人に1人は中国人ではない顔とすれ違うような感じだった。(日本人は私たち2人だけだった)
全体的な学生の印象としては 「活気があってのびのびした感じ」 である。
これは医大と比べると圧倒的に大学の規模が大きい事と、全寮制なので仲間との絆が深い事に起因しているのかもしれない。休み時間や放課後には男子学生がバスケットボールをしていたり、週末には講堂で学生主催の催し物で盛り上がったり、毎晩遅くまでキャンパス内が賑やかだったりと、医大にはないものばかりだった。
物珍しくもあり、このパワーと賑やかさが少し羨ましくもあった。


医学部キャンパス内のバスケットボールコート。いつも誰かいる。


医学部キャンパス内の体育館。バドミントン、卓球も盛ん。


ミスキャンパス決定戦。週末には様々な催し物が頻繁に行われる。

日常生活

私たちの滞在中に宿泊したのは「迎賓館」というキャンパス内にあるホテルで、毎朝ルームサービスが入り、一部屋にはベッドが二つあるような、もったいない位立派なところだった。
私たち以外にこのホテルに滞在している留学生は恐らく誰もおらず、多くの留学生は留学生用の寮に宿泊していた。

※部屋に備わっていたもの
湯沸しポット、冷蔵庫、テレビ、温水シャワー、トイレ、ベッド×2、クローゼット、イス×3、エアコン

朝食は前日に買っておいた簡単なもので済ませ、毎朝8時半にはラボに行き、午前中3時間ほどパソコンをしたり資料を読んだりする。その後ラボの友達と連れ立って学食に行き、2時過ぎごろまで長目の昼休みを取る。
始めのうちは昼寝の習慣を知らず、皆昼食後に自分の寮に戻っていくのが不思議だったが、そうと知ってからは、時々私も食後の昼寝を楽しんだ。

昼寝で心身がリフレッシュしたところで、午後の活動を再開。午前中の作業の続きをする。
私のラボでは何時に終わるというはっきりした時間がなかったので、5〜6時頃に友達の夕飯に便乗してみたり、もっと遅くまでラボに残って作業をしたり、インターネットをしたりする日もあった。その後は自室に戻って寝支度をし、隣の部屋の慧子 (註※廣岡慧子さん) と今日一日の報告をし合う。

・・・と、これは本当に何も予定がない日で、実際にこの様な日を過ごしたのは全部で1週間弱くらいしかない気がする。
ほとんどは、先生方やドクターから夕飯のお誘いを受けたり、友達に夕食がてら街に連れて行ってもらったり、ということが多かった。ほぼ毎日誰かしらが 「今夜は/週末は何か予定あるの?」 と何らかに誘ってくれた。
また、私はProf.Tanのフィールドである湖北省内の様々な市や街によく同行させてもらったので、武漢市内にいない日も少なくなかった。
という訳で、私の日常生活は毎日が 「非日常的」 だったというのが適切かも知れない。


荊州旅行。三国志の劉備の城門


医学部キャンパスの向かい、東湖。

おわりに

以上に書いてきたことで、医学研究の面においてもその他の面においても、武漢での滞在が非常に充実したものであったかがお伝えできたのではないかと思います。

最後になりましたが、今回の留学を発案、企画、準備して下さった皆様、留学に際してご支援、ご指導下さった皆様、現地でお世話をして下さった皆様に厚く御礼を申し上げます。
学長の菊地臣一先生、副学長の藤田禎三先生、衛生学・予防医学講座の福島哲仁教授、微生物学講座の錫谷達夫教授、薬理学講座の木村純子教授、解剖学講座の八木沼洋行教授、武漢大学公共衛生学院のTan Xiaodong教授、企画財務課の沼田さん、武漢大学Foreign Affairs OfficeのDaisyさん、
他、今回の留学で出会った全ての方々、本当にありがとうございました。

 

協定大学

武漢大学 ( http://www.whu.edu.cn/  中国語サイト )

海外からの留学受け入れ希望情報は こちら をご覧ください (学内のみ閲覧可)

 

 

 

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