菊地臣一 コラム「学長からの手紙  〜医師としてのマナー〜

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4.他人への思いやり

他人への思いやりが大切である事は、医師としての職業に拘らず普遍的なものです。でも、翻ってみてどれだけ周囲に気を配っているでしょうか。先日こんな事がありました。宴会での席上、医局員の一人が披露したので御存知の方も多いかと思います。

医局内部の室温は必ずしも高くありません。しかし、炎天でない限りその湿度は相当なものです。中で仕事をしている秘書や医師にとってはエアーコンディショナーが入っていなくても、さほど苦痛でもなく、むしろその状態が快適なのかもしれません。しかし、病棟や外来で仕事をしてきた人間がホッと一息いれる為に、或いは会議の為に医局に集まるとしたら彼等にとっては入った時にヒンヤリと感じなければ快適さは得られないのです。

タクシーに乗った時に冷え過ぎる位冷えていないと気持ち良いと感じないのと同様な事です。中の温度に慣れるに従ってエアーコンディショナーを弱くしていくのが、よくなされている方法です。

この様に自分を中心に考えるいつもの天動説ではなくて、地動説で、他人がどんな状態でいるのか、その他人の環境にとっては何が快適なのかを少しでも考えれば自ずと思いやりの行為が出てくるものです。例を挙げれば幾らでも似た様な話はあります。さりげなく気を配る事が紳士、淑女のマナーです。

 

 

 

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