菊地臣一 コラム「学長からの手紙  〜医師としてのマナー〜

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48.文化の違いは想像以上である事を認識して外国人に接せよ

文化的背景という言葉を我々はよく使いますが、その現実はかなり厳しいものがあります。我々日本人にとって常識である事が、外国人にとっては非常識である事は希ではなく、その逆もまたしばしばあります。私はカナダ滞在中、朝の病棟回診の時に私の師匠Dr.MacNabがよく冗談を言って患者やスタッフを笑わせていました。

その時、彼等は一様に私が判ったかどうかという事を面白がって、私の顔を見ます。私はそれが嫌で嫌で堪りませんでした。判らない事にも二つあって、一つは意味は判っても何故おかしいのかが判りません。もう一つは、全く意味が判りません。この事が私のカナダ滞在中、嫌だった事の一つです。

クリスマスパーティの時に彼の家に招かれて、私はDr.MacNabに「先生が冗談を言って、私が判ったかどうかスタッフの皆が私を見るのが堪らなく嫌だ」という事を率直に言いました。そしたらDr.MacNabは「心配するな。それは当たり前だ。文化が違う。我々のジョークの背景にはシェークスピアと聖書がある」と言われました。

私はその時非常に大きなショックを受けました。やはり文化の違いはいくら努力しても、越えられない何かがある様です。これは、良いとか悪いとかの問題ではない様に思います。我々も現在、外国人留学生を受け入れていますが、その文化的背景、考え方の違いにかなり戸惑っているのが現状です。ですから、日本人の常識は話さなくても判るというのは誤りで、率直に、親切に言うべき事は言わなければならないと考えているこの頃です。

 

 

 

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