菊地臣一 コラム「学長からの手紙  〜医師としてのマナー〜

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133.目的と手段の把握が充分出来ている医局員もいる

最近非常に嬉しいことがありました。医局員と自宅で会食している時に忘年会の話になりました。忘年会の出席者が年々増えて、収容出来るかどうかが心配になってくる位です。この話題をしていた時に、案内状を出す人を制限しようかと私が提案しました。私はそれもやむを得ない選択肢かなと考えました。ところが、医局員から、「普段御世話になっているMRやディーラーの人達に酒を注いで、お礼を言う機会は仲々無い、やはりこのシステムは続けるべきだ」という言葉が複数の人から出ました。私は、教授就任以来初めて自分の医局員に心から誇りを持ち且つ教えられたような気持ちになりました。久し振りに美味い酒でした。

このような考えが浮かぶのは、目的と手段をはっきり弁えているからです。忘年会は、忘年会をすることが目的ではありません。忘年会という手段を通じて何かを達成する為に忘年会はあるのです。その目的とは、この会を通じて人の輪を広げ、公私共により円滑な人間関係を築き、その結果として自分の人生が精神的にも物質的にもより豊かになることにあるような気がします。そういう観点からすると、先程の医局員の何気ないセリフは充分にこの目的を自然な形で把握して、しかもそれを自然な形で口に出来るという素晴らしさを示したもので、私としては久し振りに感動しました。

何度も言いますが、医師がいないと病院は動きません。しかし、医師だけでは動きません。色々な人の協力があって初めて医療という行為は成立するのです。医師が自らの感謝の気持ちを周囲の人々に表す場として忘年会を捉えているということは素晴らしいことだと思います。どうぞそういう心を医局員は何時までも忘れないで下さい。

 

 

 

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