HOME > 大学紹介 > 理事長兼学長式辞 > 平成31年度 福島県立医科大学入学式学長式辞

大学紹介

平成31年度 福島県立医科大学入学式 学長式辞 (平成31年4月3日)

本日ここに、福島県知事様、福島県議会議長様のご臨席と、保護者の皆様のご列席のもと、平成31年度福島県立医科大学入学式を挙行できますことは、本学にとってこの上ない慶びであります。
 ただいま入学を許可された医学部130名、看護学部84名、大学院医学研究科40名、看護学研究科7名の皆さん、ご入学誠におめでとうございます。同期となる皆さんが互いに切磋琢磨し、将来、共にその志が実現されるよう、教職員一同、しっかりサポートしていきたいと思います。

さて、皆さんが本学に入学するにあたり、まず最初に、本学の担う使命と、本学で医療を学ぶ意味について一人一人にしっかり理解していただきたいと思います。
 2011年3月11日、福島は未曾有の災害に見舞われました。県内唯一の特定機能病院、そして、医師養成教育機関である本学は、震災直後いち早く「健康と医療の面から福島の復興を支える」と自らの新たな使命を宣言し、教職員が一丸となって総力を挙げてこの使命の完遂に当たることを決意しました。以来、今日に至るまで、本学は片時も休むことなく、県民の方々、被災者の方々の健康を見守り、支え続けています。
 ここにいる多くの皆さんにとっては、東日本大震災と福島第一原子力発電所事故は、小学生の頃の出来事であり、「よく知らない過去のこと」という意識が強いかもしれません。しかし、本学にとって震災と原発事故は、いまだに現在進行形なのです。

その結果本学は、見習う前例などない厳しい事態に向き合い続けることになりました。試行錯誤の過程ではお叱りを受け、批判を受けることもあります。その都度、私たちは悩み、苦悶し、自問自答し、将来の良い前例となるべく行動しようと努めています。
 このように本学は、他大学とは違い、不安を抱える県民を支え続け、この災害と惨禍に対して最前線に立ち続けることを宿命づけられた大学なのです。
 そういう大学で学ぶ皆さんは、震災、原発事故、その被災者の方々の悲しみ、苦しみ、悔しさと、自分自身との間に接点や課題を見出し、真摯に考え、行動することが求められます。自分は知らない、関係ない、という態度は許されないこと、福島の復興の在り方に常に問題意識を持ち続けること、の2つを肝に銘じ、本学での学生生活を始めてください。

さて、皆さんは「令和」元年入学の大学生、大学院生となりました。新時代を担う即戦力としての期待が、おのずと皆さんに寄せられています。そして、新しい時代のスタートは、新たな希望をもたらすものと期待したいところですが、現実には、社会そのものが不安定さを増しています。温暖化といった気候変動や、イギリスのEU離脱、アメリカの一国主義化、宗教や人種対立による難民の急増など、戦後、人類が英知を傾けて築いてきた安定が揺らぎ始めています。そのような時代に求められる人材はどのような人材でしょうか。いくつかの場面を通して、求められる人材像を示していきます。

まず、皆さんの大学における学びの姿勢についてです。大学では、既存の知識を覚えることは、学びの準備段階に過ぎません。もちろん医療のプロフェッショナルになるためには、覚えなければならない膨大な知識があります。しかし、皆さんが覚えなければならない知識は、たちまち時代遅れとなるのです。実は、皆さんが大学で真に学ばなくてはならないことは、時代遅れとなる知識を、常に、適切にアップデートする方法を、徹底的に考え、身に付けることなのです。そして、これがこれからの時代に求められる人材に必要な第1の要素でもあります。

次に、社会への関与についてです。 今、日本もまた、世界と同じく大きな転換期に差し掛かっています。過去には世界に冠たる経済大国だった日本も、今やアジア唯一の先進国とは言えなくなりました。今後、日本の労働人口は減少し、急速に高齢化していきます。いやがおうにも、世界における競争力が落ちていく、というこれまでに経験したことの無い事態に日本は直面しています。いかに国際競争力低下のスピードを緩やかにするかは、これからを生きる皆さんへの課題ともいえます。
 この課題に向き合うために必要なのが、他者や過去に学ぶという姿勢です。もちろん、直面する課題の解決策がそこにそのまま転がっていることはありません。しかし、常に他人や他国の取り組み、あるいは歴史における対応を学び、そこから現在の課題解決のヒントを見出し、知力を振り絞って考える力が私たち一人一人に求められています。 これがこれから求められる人材に必要な第2の要素です。

次いで、医療に携わる姿勢についてです。ここまで述べてきたような社会の変化に関心はない、という人もいるかもしれません。しかし、社会の在り方に無関心のまま、医療に携わることはできません。社会の変化はそのまま私たちを取り巻く医療環境も変えているからです。
労働時間に対する意識の変化は、医療人の働き方を変えていくでしょう。都市化は慢性疾患の増加を招き、これからの医療を治療主体から予防へと大きくシフトさせていくだけでなく、病院完結の医療から地域連携の医療への変化を促すはずです。人工知能技術が医療の分野に進出し、医療人の役割も変わってくるかもしれません。
 医療のパラダイムシフトが起きようとしている中で、皆さんは、これからどのような医療人を目指すのか、自ら考え抜くことが求められます。
 このように社会の動きを見据え、深く洞察する力を持つことが、これから求められる人材に必要な第3の要素といえるでしょう。

震災や原発事故からの復興、大学における学びの本質、国際競争力の維持、医療を取り巻く環境変化への対応、いずれにも共通して求められるのは「考える力」を持つ人材です。私たちがこれからの社会で生き残るために持ちうる、最大の武器が「考える力」だ、ということもできます。

では、どのようにして考える力を鍛えるのか。その方法はいろいろありますが、重要なのは、より多くの多様な価値に触れることです。自分にはない考え方、別の切り口から見た事象、異なる立場からの主張、宗教的差異、文化的習慣の違いなど、お互いに優先する価値の違いを、新たな発見として楽しみ、理解に努め、問題意識を持つことから思考は始まります。世間では課題解決のためのノウハウがクローズアップされがちですが、課題を見出す力の重要性を忘れてはなりません。なぜなら、問なしに思考は生じないのですから。

現状を正確に把握し、課題を抽出し、感情に流されることなく、客観的、論理的に考え、異なる価値観をすり合わせ、対話を促す。そういうプロセスを理解し、実践できる者こそが、これからの日本や医療界に求められる人材像であろうと考えます。鍛え抜いた考える力、つまり筋肉質の思考力は、いかなる逆境においても必ず自らを救い、社会に多大な貢献をもたらすものと信じています。
 特に学生時代は、人生の中において最も多様な価値に触れるチャンスがあります。言い換えれば、最も思考を深めることが出来る時期とも言えます。新しい時代を担うメインプレーヤーとして、筋肉質の思考力を持つ医療人となることを期待し、皆さんへの祝辞といたします。
 皆さんの健闘を祈ります。

平成31年 4月 3日
福島県立医科大学 学長
竹之下 誠一

事務担当 : 教育研修支援課

医学部教務係 : 電話024-547-1095
看護学部教務係: 電話024-547-1806
FAX(共通) 024-547−1989
Eメール
※スパムメール防止のため一部全角表記しています

▲TOPへ