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令和7年度 福島県立医科大学入学式 学長式辞 (令和7年4月9日)

入学式の様子1 入学式の様子2 入学式の様子3

本日、福島県立医科大学に入学を認められた449名の皆さんを迎え、令和7年度福島県立医科大学入学式を挙行できますことは、このうえない慶びであります。そしてご多忙の中、福島県知事 内堀雅雄様、福島県議会議長 西山尚利様のご臨席を賜りましたことを、厚く御礼申し上げます。

今年度の入学生は、医学部130名、看護学部84名、保健科学部145名、別科 20名、大学院生70名です。皆さんひとりひとりが抱く志を実現すべく、私たち教職員一同、全力を挙げて サポートしていく所存です。

祝辞を述べる前に、ひとこと、3月28日にミャンマーで発生した地震へのお見舞いを申し上げます。ミャンマー中部で起きた地震は、ミャンマー連邦共和国のみならず隣国のタイ王国まで、甚大な被害を及ぼしているとのこと。日々拡大する被害の報に接し、深く心を痛めております。両国においてお亡くなりになられた方々に衷心より哀悼の意を表しますとともに、被災された全ての方々に心よりお見舞い申し上げます。

さて、このように世界各地で災害が起きていますが、本日より皆さんの母校となる福島県立医科大学は、世界で唯一、震災、津波、原子力災害という世界に例のない複合災害に見舞われた医科大学です。全ての教職員が被災者であったにもかかわらず、本学が福島県の医療の最後の砦であることを意識し、医療崩壊を防ぐため一丸となって死力を尽くしてきた歴史があります。そして、福島県の復興を医療と健康の面から支えるという使命を果たすべく、今も試行錯誤と挑戦を繰り返しているのです。加えて、今の本学があるのは、私たちの努力だけでなく、県民の皆さま、全国の皆さまから多大な支援と応援をいただいてきたからだ、ということを忘れてはなりません。ですから、本学の学生である以上、福島の地と人々の心に刻まれた災害の歴史に対し、私は知らない、関係ない、という姿勢は断じて許されないことをしっかり理解してください。皆さんが、震災、原発事故、その被災者の方々の悲しみ、苦しみ、悔しさや不安に対し無関心でいることは絶対に許されないのです。その使命を考えながら、皆さんは本学でしか学び得ない経験と知識を、少しでも多く蓄えてください。

これから皆さんは、それぞれの志の実現に向かって学び始めます。人の命と健康を守るための学びは大変厳しいものです。今日の晴れがましい場にはそぐわないかもしれませんが、明日からの学びに向けて気を引き締め、覚悟をしてください。
 大学における学びとは、答えのない課題を見出し、考えることが中心となります。問い、聞き、調べ、考える。この繰り返しをどれだけ数多く行うかが、皆さんの学びの結果を左右すると言っても過言ではないでしょう。そのサイクルの起点となるのが、問う力、すなわち課題を発見する力です。よく言われていますが「日本人は「学問」というと「学ぶ」ことに重きを置き、「問う」ことを重視しない」の通りで、皆さんは問うことに慣れていません。なぜなら、これまで皆さんは答えのあることを学び、覚え、応用することが学びの中心だったからです。そこで、これから大学で学びを始めるにあたり、今日、皆さんに心に刻み付けて欲しいことは、常に問いを探し、問い続けよということです。課題を発見し、その解を探り続けよ、と言い換えることもできます。

ひとつの問いは、その解決策を探るうちにさらに多くの問いを生み出します。なぜなら、ひとつの課題は一つの要因で生じているわけではないからです。例えば生活習慣病患者を減らすという課題について考えるとき、その要因には単に患者さんの高齢化だけではなく、食生活の変化、日常生活における運動の頻度なども挙げられます。運動の機会を増やすには、そのための施設や地域によっては遊歩道の整備なども課題になってくるでしょう。他の例を挙げれば、以前から警鐘が鳴らされている気候変動は感染症の流行と強い相関性があると指摘されています。このように、直接関係ないと思われることが、複合的、重層的に絡み合って課題は存在します。課題に対し、なぜなのか、と問い続けることにより、それらを解きほぐし、顕在化していない関係性を炙り出していくことは、結果として自らの問いの本質を見極めることにつながり、皆さんの洞察力を磨くことにもつながるのです。

皆さんは医療の専門家になることを志して本学に入学しました。しかし、だからといって医療以外の社会の動きに無関心でいることはできないということです。医療の専門家になるためには、一見、医療とは直接関係のないと思われることまで視野を広げて情報を受け取り、そこに医療との関係性を探る姿勢、問題意識が求められます。極端ですが、全てのニュースは自分の学びに関係があると思うくらいがちょうど良いのです。これから過ごす学生生活の期間、常に社会全体にまんべんなく関心を向け、なぜなのかと問い続けてください。卒業時までそれを続けることができれば、間違いなく一人前の専門家として成長できるでしょう。優れた専門家ほど、深く鋭い問題を問うことができるのはそのためなのです。

もちろん、これからの学びの道のりには多くの困難や挫折もあるかと思います。しかし、幅広い問題意識を持ち、考える習慣がついていれば、突破口となる選択肢も多く見出せるものです。本学のモットーは「ピンチをチャンスに。変化を進化へ」です。この言葉の通り、前向きに、自らの志の実現に向けて邁進してください。私たち教職員は、皆さんをサポートする万全の体制を整えています。そして、4年後、6年後、ここにいる全ての皆さんが、一流の専門家となることを祈っています。皆さんの奮闘と努力を期待しています。

令和7年4月9日
公立大学法人福島県立医科大学
理事長兼学長 竹之下 誠一

事務担当 : 教育研修支援課

学生総務係 : 電話 024-547-1972
FAX 024-547-1984
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