菊地臣一 コラム「学長からの手紙  〜医師としてのマナー〜

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37.出会いを大切に

私が医局員に度々言う言葉に「出会いを大切にしなさい」という事があります。人間の一生には、この人に出会わなかったら決して現在の自分はないであろうという人が何人かは必ずいるものです。

私自身はDr.MacNabに出会わなかったら、決して現在の自分が無かった事だけは言えます。彼の2通の論文、すなわち『Traction Spur』、それから『Blood Supply of the Lumbar Spine』といった論文が私を感激させました。誰でも見ているレントゲン写真、誰でもしている手術、しかしその中からあの論文に書いてある様な事実を見付けたのは彼一人です。いつか彼に出会ってみたい、彼に会って彼の教育を受けてみたいと思っていました。

しかし、カナダで一緒に働いている時に今考えている様に、あの出会いがなかったら、現在の自分はないであろうとは思いませんでした。この事実の示唆している所は、「人にはその人の人生にとってかけがえのない出会いがある。しかし、その出会いが、自分の人生にとってかけがえがあるかないかはその時は判らない」という事です。

ですから、どの出会いが自分の人生で忘れ得ぬ人になるかは判らないわけですから、全ての出会いを出来るだけ大事にして、誠心誠意付き合い、その人から得られる全てのものを吸収する様に努力すべきでしょう。その結果、裏切られる事もあるでしょう。しかし、自分で悔いが残らない様に付き合っていれば、例えこの出会いが何も生み出さずに終わったとしても、自分の受けるダメージは少なくて済みます。後悔しなくて済みます。

 

 

 

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