菊地臣一 コラム「学長からの手紙  〜医師としてのマナー〜

<< 前のページ  目次  次のページ >>

208.仕事を上手くするには、周囲への気配りを

新しい仕事に就いて、今まであまり接しなかった職種の人達と出会って、気が付いたことが一つあります。それは、仕事を円滑に進める為に、周囲へのさり気ない心配りをしていない人が少なくないことです。
医師は、他の医療従事者や患者さんとの間に円滑な信頼関係を築くために、若い頃から周囲への気配りの重要性を先輩から叩き込まれます。良い師匠を持ったら必ずそのような教育を受けます。そういう教育を受けてきた人間から見ると、他職種の人は、与えられた自分の仕事自体には素晴らしい能力を発揮し、頼れる人でも、その企画や計画を行動に移す段になると、周囲との間合いの取り方や気配りを、自分の話の妥当性や正当性を主張するに急ぐあまり、すっぽり抜けてしまうことが目に付きます。

医療のみならず、組織を上手く運営するには、構成員の情報の共有化と信頼関係が必須であることは、絶えず、昔から言ってきたことです。現在の世の中では、独りでは仕事が出来ないからです。その手段として、挨拶、服装、そして時間を守ることを意識することが最低限必要です。
今のような立場に立つと、職種の違いによる差別、或いは、正規職員の非正規職員への蔑視などを、当の加害者達は気が付かなくても私は痛い程感じます。当事者達がそのことに気が付いていないことは悲劇であり、深刻です。折角の能力を、将来、充分生かせなくなる危惧さえ感じます。そのような情景を見ると、哀しみと共に自分自身が若い頃、骨接ぎの子として医師から差別されたことを想い出し、そのような人間に怒りさえ感じます。
自分が仕事を上手く成し遂げる為、或いは自分自身が成長する為には、自分自身の努力は最低限必要なことです。しかし、それと同じくらい大事なことは、周囲に助けて貰うことです。周囲に助けて貰うことは簡単です。「有り難う」という言葉とさり気ない気配りです。その気配りは、自分がこうして貰ったら有り難いなと思うことをやるだけ、それだけです。是非、能力のある人ほど抜けがちな「周囲への気配り」と「目配り」の重要性にもう一度目を向けて欲しいものです。

(2009.01.23)

 

 

 

▲TOPへ