菊地臣一 コラム「学長からの手紙 〜医師としてのマナー〜

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177.研究は一人では出来ない

このテーマも以前に語った様な気がします。教授就任も9年目に入ると、医局員に対する問い掛けも大体同じ様なものになってきます。それは取りも直さず、人間の仕事、考え方、或いは行動は、プロフェッショナルとして完璧にはいかない、だからこそ、絶えず検証して確認の手順が必要なのだと再認識させられます。

研究に就いてもそうです。以前( No.174 )にも書いた様に、最近、研究をしてもそれを論文として仕上げない人が目につきます。多分それは、以前も指摘した様に、受け身でやっている人なのかもしれません。しかし、受け身であれ、自分から積極的に行った研究であれ、研究は一人では出来ません。

研究を遂行するにあたっては、研究する為の資金が要ります。組織の金銭的な負担があります。また、その研究を実施するにあたっては多くの人的資源、即ち指導者や協力者が必要です。更には、その人間が研究をしている間、本来その人がするべき仕事を他の人が負担して、その研究を影で支えている人がいます。研究費を稼ぐ為にも、他の人はその人間の代わりに診療の肩代わりしてカバーしている訳です。

一旦、研究が出来上がって発表し、出版する段階になれば、出版するまでの手続きや学位取得にあたって、様々な事務処理を一緒になって助けてくれる秘書や事務の人々が大勢必要です。そういう人達の汗や時間を無駄にしない為にも、最後まで研究を仕上げる必要があります。それが取りも直さず、支援者に対する研究者の礼儀ではないでしょうか。そして、一言御礼の言葉を述べれば、動いてくれた人の苦労は一瞬にして報われて、笑顔が返ってくる筈です。

多くの人に支えられて初めて研究は成立しているという認識があれば、自ずと自分の周囲に対する行動は謙虚なものになる筈です。研究は研究をすること自体が目的ですが、これも以前に指摘した様に、研究をする過程での様々な人との関わりや規則をクリアする為の手続きなどを学ぶことも同じ位重要だと思います。研究は一人では出来ないということに思いが至るだけでも、随分色々なことが見えてきます。

 

 

 

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