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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.409〔終〕 − 綴 (つづる) −
“名残りの雪”です。“過ぎ往く(ゆく)時”に、暫し(しばし)、想いを馳せます。
里山に辛夷(コブシ)、構内には白木蓮(ハクモクレン)、土手には蝋梅(ロウバイ)、連翹(レンギョウ)、山茱萸(サンシュユ)の黄色、青空を背景にして咲いています。“北の春”です。
今の職に就(つ)いたのが平成20(2008)年4月1日です。そして、その年の7月30日からの週に一度の“花だより”、足掛け8年7ヵ月の連載でした。
開始時の本学HP(ホームページ)へのアクセス数は121万でした。3月28日の時点で710万を越えているそうです。
最終である409号、この数字自体は中途半端で、小さな数字です。しかし、己にとっては、“愚直なる継続”の証(あかし)で、到達点となった大きな数字です。
“花だより”の執筆を始めた時、ここまで書き続けられるとは思っていませんでした。
毎日、使用済みの紙を切り揃えた裏紙のメモ用紙を持ち歩いています。
メモ用紙を持ち歩くという習慣は、カナダで修業中、恩師から学んだ“仕事の仕方”の一部です。
道中、歩いている時、時と所を構わずに、気付いた事をこのメモ用紙に記しておきます。
若い時に読んだ本、旅の記憶などをも甦(よみがえ)らせて、それらを元にして原稿に仕上げていくという営み(いとなみ)の繰り返しでした。
書き続けていて気付いたことがあります。その一部は、記しました。
(vol.150 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=183)
(vol.300 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=337)
一つは、己の思いを読み手に過不足なく伝えることの難しさです。
いつも一人の読者に語り掛けるように書いていました。伝えたいことを感情のおもむくままに書いても相手には伝わりません。
君看(み)よや双眼の色
語らざれば憂いなきに似たり
良寛
我流の解釈です。
この私の目をみてください。
何も語らないから心に何も無いわけではない、という意味でしょうか。
ここに、文章の極意(ごくい)に通じるモノがあります。
この花だより、校正は、毎回20回を超えます。削りに削って、余情や余白を以て(もって)伝えると、時に、書き手が予想もしていなかった感情を読み手に呼び起こしてくれます。
もう一つは、“身の丈(みのたけ)以上のコトは書けない”ということです。
書かれた文章は、書き手がそれまでに歩んで来た人生の、その時点での集大成です。己の体験を通しての言葉と文章しか、読み手の心には届きません。生半可(なまはんか)な言葉は、すぐ底が割れてしまいます。
さらに、文体です。
日本語は主語が無くても成立します。そのことに頼り切っていると、誰に向かって何を言いたいのか、読み手に分かりません。
日本語だからこそ、時に、主語と述語を明確にすることを心掛けると、伝えたいことがはっきりします。
最後に、直裁的(ちょくさいてき)な文章や物言いは、微苦笑(びくしょう)やはにかみを伴わないと、相手には素直に伝わらないことです。ユーモアと言ったら良いのでしょうか。
409回に渡って綴った“花だより”の一箇所が、たった一人の読者に届けば、この週一度の連載を全う(まっとう)した甲斐(かい)があります。
400回以上続いたこの連載で、文章の構成が、「作る」というよりは、回を重ねる毎に「出来る」ようになりました。“愚直なる継続”の効用です。
毎週書いてきて、“文は自らの身体を削るようにして紡(つむ)いでいく”というのは本当です。学んだのはそれだけか、と言われればそれまでですが…。
今週の花材は、執務室は見得(みえ)を切った様です。一方、秘書室は、明鏡止水(めいきょうしすい)です。
足掛け約9年間、壊れもせず、務め続けくれた花器は、毎週の花々の装いの為に拙宅から持ってきた品々です。“御苦労様”の一言を掛けてやります。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
※長きにわたりご愛読いただき、ありがとうございました。
里山に辛夷(コブシ)、構内には白木蓮(ハクモクレン)、土手には蝋梅(ロウバイ)、連翹(レンギョウ)、山茱萸(サンシュユ)の黄色、青空を背景にして咲いています。“北の春”です。
今の職に就(つ)いたのが平成20(2008)年4月1日です。そして、その年の7月30日からの週に一度の“花だより”、足掛け8年7ヵ月の連載でした。
開始時の本学HP(ホームページ)へのアクセス数は121万でした。3月28日の時点で710万を越えているそうです。
最終である409号、この数字自体は中途半端で、小さな数字です。しかし、己にとっては、“愚直なる継続”の証(あかし)で、到達点となった大きな数字です。
“花だより”の執筆を始めた時、ここまで書き続けられるとは思っていませんでした。
毎日、使用済みの紙を切り揃えた裏紙のメモ用紙を持ち歩いています。
メモ用紙を持ち歩くという習慣は、カナダで修業中、恩師から学んだ“仕事の仕方”の一部です。
道中、歩いている時、時と所を構わずに、気付いた事をこのメモ用紙に記しておきます。
若い時に読んだ本、旅の記憶などをも甦(よみがえ)らせて、それらを元にして原稿に仕上げていくという営み(いとなみ)の繰り返しでした。
書き続けていて気付いたことがあります。その一部は、記しました。
(vol.150 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=183)
(vol.300 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=337)
一つは、己の思いを読み手に過不足なく伝えることの難しさです。
いつも一人の読者に語り掛けるように書いていました。伝えたいことを感情のおもむくままに書いても相手には伝わりません。
君看(み)よや双眼の色
語らざれば憂いなきに似たり
良寛
我流の解釈です。
この私の目をみてください。
何も語らないから心に何も無いわけではない、という意味でしょうか。
ここに、文章の極意(ごくい)に通じるモノがあります。
この花だより、校正は、毎回20回を超えます。削りに削って、余情や余白を以て(もって)伝えると、時に、書き手が予想もしていなかった感情を読み手に呼び起こしてくれます。
もう一つは、“身の丈(みのたけ)以上のコトは書けない”ということです。
書かれた文章は、書き手がそれまでに歩んで来た人生の、その時点での集大成です。己の体験を通しての言葉と文章しか、読み手の心には届きません。生半可(なまはんか)な言葉は、すぐ底が割れてしまいます。
さらに、文体です。
日本語は主語が無くても成立します。そのことに頼り切っていると、誰に向かって何を言いたいのか、読み手に分かりません。
日本語だからこそ、時に、主語と述語を明確にすることを心掛けると、伝えたいことがはっきりします。
最後に、直裁的(ちょくさいてき)な文章や物言いは、微苦笑(びくしょう)やはにかみを伴わないと、相手には素直に伝わらないことです。ユーモアと言ったら良いのでしょうか。
409回に渡って綴った“花だより”の一箇所が、たった一人の読者に届けば、この週一度の連載を全う(まっとう)した甲斐(かい)があります。
400回以上続いたこの連載で、文章の構成が、「作る」というよりは、回を重ねる毎に「出来る」ようになりました。“愚直なる継続”の効用です。
毎週書いてきて、“文は自らの身体を削るようにして紡(つむ)いでいく”というのは本当です。学んだのはそれだけか、と言われればそれまでですが…。
今週の花材は、執務室は見得(みえ)を切った様です。一方、秘書室は、明鏡止水(めいきょうしすい)です。
足掛け約9年間、壊れもせず、務め続けくれた花器は、毎週の花々の装いの為に拙宅から持ってきた品々です。“御苦労様”の一言を掛けてやります。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
※長きにわたりご愛読いただき、ありがとうございました。
今週の花
【理事長室】
■桜〔染井吉野〕 バラ科/落葉高木/古く
から親しまれる春の代表樹。 染井吉野(ソメイ
ヨシノ)は最も有名で、桜の開花予測の基準と
なる品種。
■ニゲラ キンポウゲ科/一年草/花弁が
退化し、ガクが花弁のように見える。 花後に風
船のような実になり、 黒い種が出来ることから
和名は「黒種草」(クロタネソウ)。
■モルセラ シソ科/一年草/花期は春
で、 大きな緑色のガクの中に白っぽい花が咲
く。ミントに似た芳香があり、独特な茎のライン
が特徴。
■ラナンキュラス キンポウゲ科/球根植
物/薄く柔らかい花弁が幾重にも重なる。
■ヒペリカム〔マジカルヴィクトリー〕
オトギリソウ科 /半常緑低木/花期は初夏で
小さな黄色い花が咲く。主に花後の実を楽しむ
ものとして流通し、 赤系を中心に白、茶、緑等
がある。
■ユーカリ〔ブルーガムナッツ〕
フトモモ科/常緑高木/オーストラリアを中心
に約600種が分布し、コアラの食べる木として
有名。 アロマオイル等に利用される代表的な
品種。
■ポリシャス ウコギ科/常緑低高木/品
種により葉形や葉色が異なり、 熱帯地域に約
100種が自生。今回は「グリーン」と葉が細い
「フルティコーサ」の2種を使用。
■菊 キク科/多年草/ピンポン菊…ポン
ポン玉のように真ん丸に開花する。 使用品種
「フィーリンググリーン」。デコラ菊…ダリアに似
た花姿の菊。使用品種「オペラピンク」「オペラ
オレンジ」。
■ハーブ〔オレガノアロマティカス〕
シソ科/多年草/表面を白い軟毛で覆われた
肉厚な葉っぱを持ち、ミントのような香りがする。
料理やハーブティーなどにも利用される。
■ギリア〔レプタンサ〕 ハナシノブ科/一年
草/花期は4〜6月頃で、小花が集まって球状
に開花する。可愛らしい球形と爽やかな青系の
花色でガーデニングでも人気。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/4091.jpg
■桜〔染井吉野〕 バラ科/落葉高木/古く
から親しまれる春の代表樹。 染井吉野(ソメイ
ヨシノ)は最も有名で、桜の開花予測の基準と
なる品種。
■ニゲラ キンポウゲ科/一年草/花弁が
退化し、ガクが花弁のように見える。 花後に風
船のような実になり、 黒い種が出来ることから
和名は「黒種草」(クロタネソウ)。
■モルセラ シソ科/一年草/花期は春
で、 大きな緑色のガクの中に白っぽい花が咲
く。ミントに似た芳香があり、独特な茎のライン
が特徴。
■ラナンキュラス キンポウゲ科/球根植
物/薄く柔らかい花弁が幾重にも重なる。
■ヒペリカム〔マジカルヴィクトリー〕
オトギリソウ科 /半常緑低木/花期は初夏で
小さな黄色い花が咲く。主に花後の実を楽しむ
ものとして流通し、 赤系を中心に白、茶、緑等
がある。
■ユーカリ〔ブルーガムナッツ〕
フトモモ科/常緑高木/オーストラリアを中心
に約600種が分布し、コアラの食べる木として
有名。 アロマオイル等に利用される代表的な
品種。
■ポリシャス ウコギ科/常緑低高木/品
種により葉形や葉色が異なり、 熱帯地域に約
100種が自生。今回は「グリーン」と葉が細い
「フルティコーサ」の2種を使用。
■菊 キク科/多年草/ピンポン菊…ポン
ポン玉のように真ん丸に開花する。 使用品種
「フィーリンググリーン」。デコラ菊…ダリアに似
た花姿の菊。使用品種「オペラピンク」「オペラ
オレンジ」。
■ハーブ〔オレガノアロマティカス〕
シソ科/多年草/表面を白い軟毛で覆われた
肉厚な葉っぱを持ち、ミントのような香りがする。
料理やハーブティーなどにも利用される。
■ギリア〔レプタンサ〕 ハナシノブ科/一年
草/花期は4〜6月頃で、小花が集まって球状
に開花する。可愛らしい球形と爽やかな青系の
花色でガーデニングでも人気。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/4091.jpg
【秘書室】
■フリージア アヤメ科/球根植物/甘い香りを放つ春の花。花茎に8〜
10輪程の花をつけ、次々と開花する。
■菊〔オペラピンク〕 (理事長室と同花材)
※拡大写真 http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/4092.jpg
■フリージア アヤメ科/球根植物/甘い香りを放つ春の花。花茎に8〜
10輪程の花をつけ、次々と開花する。
■菊〔オペラピンク〕 (理事長室と同花材)
※拡大写真 http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/4092.jpg