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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.396 − 至 (いたる) −
12月も半ばを過ぎ、人間(ヒト)各々(それぞれ)、一年の想いが交叉する時季です。
誕生日、年齢の数の日本水仙(ニホンズイセン)が届きました。
寒風のなか、凛(りん)として佇(たたず)んでいる姿・香りとともに心惹かれる花です。
空風(からかぜ)が身に沁みます。春は、遙か先です。
寂寞(せきばく)とした今の風景のなか、八つ手(ヤツデ)があちらこちらで目につきます。
21日は冬至です。昔は柚子(ユズ)を風呂に浮かべて、夜の底を意識したものです。
日の入りは既に遅くなり始めています。一方、日の出の最も遅いのは、1月3日から9日(6時54分)です。
それまでは“春を待つ”です。
子供の頃、講談の口調(くちょう)を真似ていた言い方では“草木も眠る丑三つ時”(うしみつどき)、の夜更け(よふけ)です。丑の刻の三番目ですから、今なら午前2時から2時半頃です。
外は、冷気が漲(みなぎ)り、ひっそりと静まり返っています。この静寂、今という時代が、闇とともに、失ったモノの一つです。日中(ひなか)、斗(たたか)い疲れた人々にとっては“心への贈り物”です。
寒風吹き荒ぶ(ふきすさぶ)なか、空を見上げると、頭上高く、冷たい光を放つ寒月(かんげつ)があります。
秋の月と比べると小さく見えます。寒月の周りには多数の星が瞬(またた)いています。
淋しさの底ぬけて降るみぞれかな
内藤丈草(ないとう・じょうそう)
信夫の里は、みぞれこそ見舞われていませんが、寂寥(せきりょう)感が漂っています。
冬の味覚の代表である蜜柑(ミカン)や林檎(リンゴ)が店先に出廻っています。
いずれも、昔に比べると、随分甘くなっています。
風雲(ふううん)は人の前に向うて暮れやすし
歳月(さいげつ)は老いの底より還りがたし
惟良春道(これよしのはるみち)
風が吹き、白い雲が流れている冬の景色、人間がこれに向き合っていると、あっという間に時間が過ぎて暮れてしまう。同じように、一旦過ぎ去った歳月は、老いた人間に再び戻ってくることはない。
ゆく年の惜(お)しくもあるかな
ますかがみ みよかげさへに暮れぬと思えば
紀貫之(きのつらゆき)
暮れてゆく年は名残り惜しい。鏡に映る己の姿は老い、昔の面影はもはやない。
和漢朗詠集に載っているこの2首、いずれの歌も、去り行く歳月に己の身の移ろいを重ねて、“老い”を嘆いています。
以下、正直に書いてしまいます。
父を早くに亡くしているのですが、最近まで“人生”、“生”、“老”を詠(うた)った詩歌(しいか)に眼が行き届いていませんでした。仕事にのめり込む余り、心に余裕が無かったのでしょう。
やはり、ある年齢になって初めて理解出来ることが世の中や人生にはあるのです。
人間(ヒト)とは勝手なものです。人間は、1週間、1ヵ月、1年と“時”を区切っています。
“時”は、そんな人間の約束事にはお構いなく、残酷に過ぎ行きていきます。そして、人間の生命(いのち)を削っていきます。
自らが蒐集(しゅうしゅう)した美術品で構成する企画展がありました。その開催中に御当主が他界されました。
「The Power of Colors 色彩のちから」展です。
我が国における現代陶芸を“色”という視点から捉(とら)えています。
この美術館の基本的な姿勢は、ガラス越しでない、直接展示に良く表れています。
この企画展の白眉(はくび)は、藤本能道(ふじもと・よしみち)の作品群です。
彼は、現代における色絵の世界を新たに築きあげました。絵画のような繊細(せんさい)な色と質感を白磁の素地に表現しています。
もう一人は、三代 徳田八十吉(とくだ・やそきち)です。グラデーション(階調)を用いた表現で、鮮やかな群青色が印象的です。
現代陶芸の今を知るには絶好な美術展です。
今週の花材の赤、色の乏しいこの時季、温(ぬく)もりが届きます。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
誕生日、年齢の数の日本水仙(ニホンズイセン)が届きました。
寒風のなか、凛(りん)として佇(たたず)んでいる姿・香りとともに心惹かれる花です。
空風(からかぜ)が身に沁みます。春は、遙か先です。
寂寞(せきばく)とした今の風景のなか、八つ手(ヤツデ)があちらこちらで目につきます。
21日は冬至です。昔は柚子(ユズ)を風呂に浮かべて、夜の底を意識したものです。
日の入りは既に遅くなり始めています。一方、日の出の最も遅いのは、1月3日から9日(6時54分)です。
それまでは“春を待つ”です。
子供の頃、講談の口調(くちょう)を真似ていた言い方では“草木も眠る丑三つ時”(うしみつどき)、の夜更け(よふけ)です。丑の刻の三番目ですから、今なら午前2時から2時半頃です。
外は、冷気が漲(みなぎ)り、ひっそりと静まり返っています。この静寂、今という時代が、闇とともに、失ったモノの一つです。日中(ひなか)、斗(たたか)い疲れた人々にとっては“心への贈り物”です。
寒風吹き荒ぶ(ふきすさぶ)なか、空を見上げると、頭上高く、冷たい光を放つ寒月(かんげつ)があります。
秋の月と比べると小さく見えます。寒月の周りには多数の星が瞬(またた)いています。
淋しさの底ぬけて降るみぞれかな
内藤丈草(ないとう・じょうそう)
信夫の里は、みぞれこそ見舞われていませんが、寂寥(せきりょう)感が漂っています。
冬の味覚の代表である蜜柑(ミカン)や林檎(リンゴ)が店先に出廻っています。
いずれも、昔に比べると、随分甘くなっています。
風雲(ふううん)は人の前に向うて暮れやすし
歳月(さいげつ)は老いの底より還りがたし
惟良春道(これよしのはるみち)
風が吹き、白い雲が流れている冬の景色、人間がこれに向き合っていると、あっという間に時間が過ぎて暮れてしまう。同じように、一旦過ぎ去った歳月は、老いた人間に再び戻ってくることはない。
ゆく年の惜(お)しくもあるかな
ますかがみ みよかげさへに暮れぬと思えば
紀貫之(きのつらゆき)
暮れてゆく年は名残り惜しい。鏡に映る己の姿は老い、昔の面影はもはやない。
和漢朗詠集に載っているこの2首、いずれの歌も、去り行く歳月に己の身の移ろいを重ねて、“老い”を嘆いています。
以下、正直に書いてしまいます。
父を早くに亡くしているのですが、最近まで“人生”、“生”、“老”を詠(うた)った詩歌(しいか)に眼が行き届いていませんでした。仕事にのめり込む余り、心に余裕が無かったのでしょう。
やはり、ある年齢になって初めて理解出来ることが世の中や人生にはあるのです。
人間(ヒト)とは勝手なものです。人間は、1週間、1ヵ月、1年と“時”を区切っています。
“時”は、そんな人間の約束事にはお構いなく、残酷に過ぎ行きていきます。そして、人間の生命(いのち)を削っていきます。
自らが蒐集(しゅうしゅう)した美術品で構成する企画展がありました。その開催中に御当主が他界されました。
「The Power of Colors 色彩のちから」展です。
我が国における現代陶芸を“色”という視点から捉(とら)えています。
この美術館の基本的な姿勢は、ガラス越しでない、直接展示に良く表れています。
この企画展の白眉(はくび)は、藤本能道(ふじもと・よしみち)の作品群です。
彼は、現代における色絵の世界を新たに築きあげました。絵画のような繊細(せんさい)な色と質感を白磁の素地に表現しています。
もう一人は、三代 徳田八十吉(とくだ・やそきち)です。グラデーション(階調)を用いた表現で、鮮やかな群青色が印象的です。
現代陶芸の今を知るには絶好な美術展です。
今週の花材の赤、色の乏しいこの時季、温(ぬく)もりが届きます。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■ガマズミ〔トキワガマズミ〕 スイカズラ科
/常緑低木/花期は3〜4月頃で小さな白い
花を密集させ円盤状に開花する。秋に黒紫色
の実をつける。 ふっくらとした赤い蕾が実のよ
うで魅力的。
■バラ〔アランシオ〕 バラ科/落葉低木/
花形・花色など多岐にわたり約2万種超ある。
世界的にも古くから親しまれ人気の高い花。「ア
ランシオ」はオレンジ系で花持ちの良い品種。
■リュウカデンドロン〔プルモーサス〕
ヤマモガシ科/常緑低木/硬質な葉を持つア
フリカ原産のワイルドフラワー。「プルモーサス」
は松ぼっくりのような蕾で、 開花すると綿毛が
あらわれる。
■ラナンキュラス〔リモージュ〕 キンポウゲ
科/球根植物/幾重にも重なる柔らかい花弁
が特徴。パステル〜ビビッドなものまで花色が
とても豊富。「リモージュ」はオレンジ系で花芯
部に近いほど赤味を帯びる。
■グロリオサ〔ニューレッド〕 ユリ科/球根
植物/花弁が反り返り、赤く燃える炎のような
独特の花姿。半蔓性で支柱や他の植物に絡ま
って成長する。絡むために葉先が巻きヒゲにな
るのが特徴。
■ピンポン菊 キク科/多年草/ピンポン玉
のように真ん丸に開花する菊。花持ちの良い菊
の中でも特に長く楽しめる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3961.jpg
■ガマズミ〔トキワガマズミ〕 スイカズラ科
/常緑低木/花期は3〜4月頃で小さな白い
花を密集させ円盤状に開花する。秋に黒紫色
の実をつける。 ふっくらとした赤い蕾が実のよ
うで魅力的。
■バラ〔アランシオ〕 バラ科/落葉低木/
花形・花色など多岐にわたり約2万種超ある。
世界的にも古くから親しまれ人気の高い花。「ア
ランシオ」はオレンジ系で花持ちの良い品種。
■リュウカデンドロン〔プルモーサス〕
ヤマモガシ科/常緑低木/硬質な葉を持つア
フリカ原産のワイルドフラワー。「プルモーサス」
は松ぼっくりのような蕾で、 開花すると綿毛が
あらわれる。
■ラナンキュラス〔リモージュ〕 キンポウゲ
科/球根植物/幾重にも重なる柔らかい花弁
が特徴。パステル〜ビビッドなものまで花色が
とても豊富。「リモージュ」はオレンジ系で花芯
部に近いほど赤味を帯びる。
■グロリオサ〔ニューレッド〕 ユリ科/球根
植物/花弁が反り返り、赤く燃える炎のような
独特の花姿。半蔓性で支柱や他の植物に絡ま
って成長する。絡むために葉先が巻きヒゲにな
るのが特徴。
■ピンポン菊 キク科/多年草/ピンポン玉
のように真ん丸に開花する菊。花持ちの良い菊
の中でも特に長く楽しめる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3961.jpg
【秘書室】
■コチア アカザ科/球根植物/クリスマスツリーを雪が覆ったような
樹形が特徴。多肉植物のような白銀色の肉厚な葉を持つ。
■ラナンキュラス〔茜てまり〕 (理事長室と同花材)
「てまり」シリーズは香川県オリジナルの育成品種。「茜」の他、紅や桃、雪、
小春、レモンてまりなどもある。
■クリスマスブッシュ クノニア科/常緑中高木/オーストラリア原産で、
現地では10mにもなる木。花期は初夏で1cm程の白い星形の花が咲く。
開花後にガクが肥大して赤く色付き、クリスマスシーズンに流通。
■ヒペリカム〔マジカルトリンプ〕 オトギリソウ科/半常緑低木/初夏に
黄色い花が咲く。主に花後の実を楽しむものとして流通。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3962.jpg
■コチア アカザ科/球根植物/クリスマスツリーを雪が覆ったような
樹形が特徴。多肉植物のような白銀色の肉厚な葉を持つ。
■ラナンキュラス〔茜てまり〕 (理事長室と同花材)
「てまり」シリーズは香川県オリジナルの育成品種。「茜」の他、紅や桃、雪、
小春、レモンてまりなどもある。
■クリスマスブッシュ クノニア科/常緑中高木/オーストラリア原産で、
現地では10mにもなる木。花期は初夏で1cm程の白い星形の花が咲く。
開花後にガクが肥大して赤く色付き、クリスマスシーズンに流通。
■ヒペリカム〔マジカルトリンプ〕 オトギリソウ科/半常緑低木/初夏に
黄色い花が咲く。主に花後の実を楽しむものとして流通。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3962.jpg