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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2017.02.17

vol.403  − 震 (ふるえる) −

この時季、大地には色が乏しく、寒さのなか僅か(わずか)に松の葉が美しい緑を保っています。
雪があると、緑の色が一際(ひときわ)映えます。

花屋さんには連翹(レンギョウ)やフリージアが飾られています。連翹は“春を告げる花”です。
黄色い花が大地を覆(おお)って、春が定まります。

この冬の信夫の里、雪の降る機会が多く、戸惑っています。

         雪は
         天国の
         あまりにも
         幸福すぎるのに
         退屈して
         世の中へ
         フワフワと
         消えに降りてくるのだとさ
         フワフワと
         フワフワと
         雪はばかだなあ
                           矢沢 宰(やざわ・おさむ)

蒼(あお)い空の下に舞う風花(かざはな)のような雪だと、儚げ(はかなげ)で、誰にも迷惑を掛けないのですが…。

この時季、雪よりも寒風が堪(こた)えます。風花や雨を伴って、けたたましい音をたてて家屋を通り過ぎてゆきます。少しの隙間から風が入り込み、障子の紙を揺らします。

         ふりむけば障子の桟(さん)に夜の深さ
                                長谷川素逝(はせがわ・そせい)


こんな時、夜更け(よふけ)の寒さと厳しさを感じさせられます。
福寿草や流氷の便りが各地から届いています。雪解け(ゆきどけ)も始まります。春は確実に近づいています。

音楽に就(つ)いて記します。
音楽は人生の伴侶(はんりょ)であり、応援歌でもあります。音楽との出会いを記してきました。
         (vol.17 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=33
         (vol.21 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=38
         (vol.24 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=41
         (vol.37 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=61
         (vol.95 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=123
         (vol.105 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=133
         (vol.139 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=172
         (vol.189 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=225
         (vol.316 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=355
         (vol.347 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=387
         (vol.355 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=395

執務室にはクラシック、ジャズ、和洋の流行歌(はやりうた)、シンセサイザーミュージック、自然音(雨、波など)が、何の脈絡も無く、流れています。職員や知人からあきれられたり、訪問者には不思議がられたりもします。
己にはジャンル(領域)という概念がないのです。

流行歌(歌謡)と呼ばれるハヤリ唄でも30年、50年と後世に残れば、それはクラシック音楽です。
時という篩(ふるい)が、残ってゆく歌を選(え)り分けていくのです。

民謡も聴きます。“民謡”という言葉は、明治に入ってから使われるようになりました。民謡という名称の定着は戦後になってからです。
我が国の民謡には、短調が多く、長調の曲でも“ヨナ抜き音階”です。

ここ福島県は、民謡の宝庫です。
原発事故で大変な目に遭(あ)っている相馬には有名な“相馬盆唄”、相馬野馬追いという伝統行事で謡(うた)われる“相馬流れ山”があります。
新民謡の“新相馬節”もあります。故郷(ふるさと)の相馬を離れた人間(ヒト)が、故郷を偲(しの)んで作ったといわれています。切々たる抒情(じょじょう)溢れる旋律は、聴く者の心を震(ふる)わせます。

我が国の民謡には、労働の辛さを歌った詩が多く伝わっています。
岩手の沢内(さわうち)地方に伝わる“南部牛追唄”もその一つです。哀切、気品漂う歌です。その起源は、江戸時代初期に遡(さかのぼ)ります。

九州は宮崎、高千穂地方に伝わる“刈干切唄”(かりぼしきりうた)と“南部牛追唄”が似ていることが知られています。宮崎県と岩手県、共通点は太平洋に面していることだけです。
昔から人間の往き来(いきき)があったという証(あかし)でしょうか。

本県には、“会津磐梯山”という知られた新民謡もあります。
この起源は明治初期です。新潟の甚句(じんく)が元唄とされています。“塩の道”など、江戸時代の物資の輸送経路を考えると得心(とくしん)が行きます。

多くの民謡が、聴く者に“澄明な哀しみ”といった情感を持って訴え掛けてきます。その唄からは、当時の庶民にとって数少なかった娯楽である“祭り”の香りも立ち上(のぼ)っています。これも“和の心”の一つです。

今週の花材は、縦の線が尖塔(せんとう)の様(よう)ですが、暖色系の色が部屋を穏やかにしています。



(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)


今週の花


【理事長室】
■キイチゴ   バラ科/半落葉低木/ラズベリーやブラックベリー
などの総称で、木になるイチゴ。春に苺に似た小さな白い花が咲く。
ヤツデのように切れ込みの深い葉を持つ。
■雪柳   バラ科/落葉低木/春に小さな白い小花を枝いっぱい
に咲かせる。淡いピンク色の花を付ける「紅花雪柳」(ベニバナユキ
ヤナギ)もある。
■ピンポン菊〔オペラピンク〕   キク科/多年草/お供え花として
だけでなく、お祝い用途にも人気の菊。「オペラ」シリーズはダリアに
似たデコラ咲品種。
■ラナンキュラス   キンポウゲ科/球根植物/薄く柔らかい花弁
が幾重にも重なるのが特徴。花色が豊富で、花径13cm以上にもな
る大輪品種もある。
■モカラ〔ムーンライトイエロー〕   ラン科/バンダ・アラクニス・ア
スコケントルムの3種の蘭を交配した人工種。鮮やかな花色が豊富
な南国の花。「ムーンライトイエロー」は明るい黄色。
■ドラセナ〔レインボー〕   リュウゼツラン科/常緑低木/縦縞模
様の細い葉をもつドラセナ。「レインボー」は赤みが強い品種。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/4031.jpg

【秘書室】
■エピデンドラム   ラン科/細く伸びた茎の先端に小さな花が密集
して開花。次々と開花し、長期間楽しめる。
■フリージア〔クレア〕    アヤメ科/球根植物/甘い香りが特徴の
春の花。花茎に8〜10輪の筒状花をつけ、次々と開花する。
■トルコギキョウ〔ボヤージュグリーン〕   リンドウ科/多年草/花
色や大きさ、 咲き方など多岐にわたり品種がとても豊富。 「ボヤージ
ュ」シリーズはフリル咲の八重咲。花弁の巻きがしっかりしていてボリ
ュームがあり、花持ちが良い。
■カーネーション〔コマチ〕   ナデシコ科/多年草/母の日の花とし
て古くから親しまれ、世界的に生産量が多い主要花。「コマチ」は白い
花弁の縁にピンクが入る。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/4032.jpg

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