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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.406 − 耐 (たえる) −
暖かくなり冬眠していた虫が穴から出てくる啓蟄(けいちつ)です。
風は丸みを帯び、陽射し(ひざし)が肌に和(やわ)らかく感じられます。
春暁(しゅんぎょう)、未だ寝静まっている街や大地を穏やかな空気が覆(おお)っています。
春の到来を告げる菜の花、おひたしや浅漬(あさづけ)が、我々の舌と目を楽しませてくれます。
東日本大震災に伴う原発事故は、人々の人生を大きく変えてしまいました。
本学の教職員も例外ではありません。
本学の置かれている苦境や職員の働き振りに就(つ)いて、綴(つづ)ってきました。
(vol.117、119、120、127、129、131、148、149、151、162、164、165、166、180、193、198、210、212、216、255、257、262、267、276、291、299、346、353、368、379、387 /31編のバックナンバーは文末※欄リンクからご参照ください)
極限状態に置かれた人間は、その時、端無く(はしなく)も、聖と俗(悪)の二面性を露呈(ろてい)しました。
身の危険を顧(かえり)みずに避難の放送を続けた女性職員、原発事故の現場に留(とど)まり対応にあたった東京電力の職員、津波に飲み込まれて命を絶たれた記者、黙々と課せられた任務を果たした自衛隊員、棺(ひつぎ)に折り鶴を添えた警察官などが記憶にあります。
現場と宿泊地の往復で峠を往き来する関係者に、毎日、道端に立ち、感謝を表していた幼い姉弟の姿もありました。
一方、本学職員にガソリンの提供を申し出たスタンドに押し掛け、職員や従業員を殺気立って取り囲んだ住民、福島駐屯の自衛隊が本学職員の為にガソリン給油の便宜(べんぎ)を図って下さった事を悪用して、本学職員の身分証をコピーした、或いはさせた人間などがその対極に居ます。
彼らが駐屯地内を傍若無人(ぼうじゃくぶじん)に車で走り回って苦情が来た時は、己は恥じ入るばかりでした。
極限にある人間に対峙(たいじ)した自衛隊員の姿を「兵士は起(た)つ」(杉山隆男)が、余す所無く描いています。
当時から今まで、プロとしての職業的使命感の尊さを目にしてきました。それは、医療人が持っている職業的使命感や倫理感に支えられている“病める人々に注ぐ優しさ”と根っこにあるものは同じように感じます。
そこに個々の人間が元々持っている情感が加わって職業人としての個性が出ます。
事故発生により、本学に、突然、“県民の不安や健康を長きに渡って見守っていく”という歴史的使命が課せられました。黙々とその使命を果たして今日(こんにち)に至っている本学職員に改めて感謝します。
勿論(もちろん)、我々だけが大変な思いをしている訳ではありません。原発の事故現場で、収束(しゅうそく)、廃炉に向けて今も葛藤(かっとう)を続けている5000人余りの方々には、只々、頭が下がる思いです。
極限状態では、一人ひとりがその行動と心を問われました。
今、本学には次の世代に、何を、どう残し、伝えていくかが問われています。そして、その評価は歴史に委(ゆだ)ねられています。
プロの精神と働きは、修羅の場でしかみられないかというと、そうではありません。
市井(しせい)での日々の暮らしのなかにもそれは見て取れます。
おでん屋で銚釐(ちろり)を使って燗酒(かんざけ)の加減を絶妙に行う職人、素人(しろうと)には出せない色と艶(つや)を短時間で出してみせる靴磨きのおじさんやおばさん、常人には想像もつかない数の客の顔と名前を記憶しているというホテルのドアマンなどです。
ここでも対極の姿があります。一流と評される店で、同僚と喋(しゃべ)りながら、目を合わせず、客の問い掛けに答えている店員など、その典型です。
今週の花材は、“春到来”です。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
※ 本文8行目〜「理事長室からの花だより」バックナンバーURL
(vol.117 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=146)
(vol.119 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=150)
(vol.120 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=151)
(vol.127 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=160)
(vol.129 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=162)
(vol.131 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=164)
(vol.148 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=181)
(vol.149 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=182)
(vol.151 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=184)
(vol.162 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=196)
(vol.164 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=198)
(vol.165 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=199)
(vol.166 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=200)
(vol.180 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=214)
(vol.193 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=229)
(vol.198 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=234)
(vol.210 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=247)
(vol.212 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=249)
(vol.216 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=253)
(vol.255 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=292)
(vol.257 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=294)
(vol.262 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=299)
(vol.267 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=304)
(vol.276 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=313)
(vol.291 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=328)
(vol.299 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=336)
(vol.346 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=386)
(vol.353 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=393)
(vol.368 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=409)
(vol.379 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=420)
(vol.387 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=428)
風は丸みを帯び、陽射し(ひざし)が肌に和(やわ)らかく感じられます。
春暁(しゅんぎょう)、未だ寝静まっている街や大地を穏やかな空気が覆(おお)っています。
春の到来を告げる菜の花、おひたしや浅漬(あさづけ)が、我々の舌と目を楽しませてくれます。
東日本大震災に伴う原発事故は、人々の人生を大きく変えてしまいました。
本学の教職員も例外ではありません。
本学の置かれている苦境や職員の働き振りに就(つ)いて、綴(つづ)ってきました。
(vol.117、119、120、127、129、131、148、149、151、162、164、165、166、180、193、198、210、212、216、255、257、262、267、276、291、299、346、353、368、379、387 /31編のバックナンバーは文末※欄リンクからご参照ください)
極限状態に置かれた人間は、その時、端無く(はしなく)も、聖と俗(悪)の二面性を露呈(ろてい)しました。
身の危険を顧(かえり)みずに避難の放送を続けた女性職員、原発事故の現場に留(とど)まり対応にあたった東京電力の職員、津波に飲み込まれて命を絶たれた記者、黙々と課せられた任務を果たした自衛隊員、棺(ひつぎ)に折り鶴を添えた警察官などが記憶にあります。
現場と宿泊地の往復で峠を往き来する関係者に、毎日、道端に立ち、感謝を表していた幼い姉弟の姿もありました。
一方、本学職員にガソリンの提供を申し出たスタンドに押し掛け、職員や従業員を殺気立って取り囲んだ住民、福島駐屯の自衛隊が本学職員の為にガソリン給油の便宜(べんぎ)を図って下さった事を悪用して、本学職員の身分証をコピーした、或いはさせた人間などがその対極に居ます。
彼らが駐屯地内を傍若無人(ぼうじゃくぶじん)に車で走り回って苦情が来た時は、己は恥じ入るばかりでした。
極限にある人間に対峙(たいじ)した自衛隊員の姿を「兵士は起(た)つ」(杉山隆男)が、余す所無く描いています。
当時から今まで、プロとしての職業的使命感の尊さを目にしてきました。それは、医療人が持っている職業的使命感や倫理感に支えられている“病める人々に注ぐ優しさ”と根っこにあるものは同じように感じます。
そこに個々の人間が元々持っている情感が加わって職業人としての個性が出ます。
事故発生により、本学に、突然、“県民の不安や健康を長きに渡って見守っていく”という歴史的使命が課せられました。黙々とその使命を果たして今日(こんにち)に至っている本学職員に改めて感謝します。
勿論(もちろん)、我々だけが大変な思いをしている訳ではありません。原発の事故現場で、収束(しゅうそく)、廃炉に向けて今も葛藤(かっとう)を続けている5000人余りの方々には、只々、頭が下がる思いです。
極限状態では、一人ひとりがその行動と心を問われました。
今、本学には次の世代に、何を、どう残し、伝えていくかが問われています。そして、その評価は歴史に委(ゆだ)ねられています。
プロの精神と働きは、修羅の場でしかみられないかというと、そうではありません。
市井(しせい)での日々の暮らしのなかにもそれは見て取れます。
おでん屋で銚釐(ちろり)を使って燗酒(かんざけ)の加減を絶妙に行う職人、素人(しろうと)には出せない色と艶(つや)を短時間で出してみせる靴磨きのおじさんやおばさん、常人には想像もつかない数の客の顔と名前を記憶しているというホテルのドアマンなどです。
ここでも対極の姿があります。一流と評される店で、同僚と喋(しゃべ)りながら、目を合わせず、客の問い掛けに答えている店員など、その典型です。
今週の花材は、“春到来”です。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
※ 本文8行目〜「理事長室からの花だより」バックナンバーURL
(vol.117 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=146)
(vol.119 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=150)
(vol.120 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=151)
(vol.127 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=160)
(vol.129 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=162)
(vol.131 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=164)
(vol.148 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=181)
(vol.149 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=182)
(vol.151 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=184)
(vol.162 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=196)
(vol.164 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=198)
(vol.165 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=199)
(vol.166 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=200)
(vol.180 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=214)
(vol.193 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=229)
(vol.198 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=234)
(vol.210 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=247)
(vol.212 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=249)
(vol.216 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=253)
(vol.255 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=292)
(vol.257 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=294)
(vol.262 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=299)
(vol.267 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=304)
(vol.276 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=313)
(vol.291 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=328)
(vol.299 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=336)
(vol.346 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=386)
(vol.353 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=393)
(vol.368 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=409)
(vol.379 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=420)
(vol.387 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=428)
今週の花
【理事長室】
■桜〔東海桜(トウカイザクラ)〕 バラ科/中国原産の「カラミ
桜」と日本原産の「小彼岸」(コヒガン)の交配種。 薄桃色の一重
咲で、甘い香りを放つ。桜前線のソメイヨシノよりも早く開花する。
しなやかな枝ぶりと枝いっぱいに花をつけることから近年人気の
品種。
■ムギ イネ科/一年草/コムギ・オオムギ・ライムギ・カラス
ムギの4種。切花として流通するのは主にオオムギ。ドライフラワ
ーとしても楽しめる。
■ハイドランジア〔ライトグリーンアンティーク〕
ユキノシタ科/落葉低木/ 日本のアジサイを改良した西洋アジ
サイ。日本原産に比べ、花が大きく華やか。ドライフラワーにも適
し、リースなどに利用される。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/4061.jpg
■桜〔東海桜(トウカイザクラ)〕 バラ科/中国原産の「カラミ
桜」と日本原産の「小彼岸」(コヒガン)の交配種。 薄桃色の一重
咲で、甘い香りを放つ。桜前線のソメイヨシノよりも早く開花する。
しなやかな枝ぶりと枝いっぱいに花をつけることから近年人気の
品種。
■ムギ イネ科/一年草/コムギ・オオムギ・ライムギ・カラス
ムギの4種。切花として流通するのは主にオオムギ。ドライフラワ
ーとしても楽しめる。
■ハイドランジア〔ライトグリーンアンティーク〕
ユキノシタ科/落葉低木/ 日本のアジサイを改良した西洋アジ
サイ。日本原産に比べ、花が大きく華やか。ドライフラワーにも適
し、リースなどに利用される。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/4061.jpg
【秘書室】
■アンスリュウム〔ルミナ〕 サトイモ科/常緑多年草/花弁のように見
える部分は苞で、中心の棒状の部分が花序。 主に苞を鑑賞するため、非
常に長く楽しめる。「ルミナ」は苞が細い“チューリップアンス”と呼ばれる品
種。苞に入るストライプと薄紫の花序が個性的な花色。
■ギリア〔レプタンサ〕 ハナシノブ科/一年草/北米西部に20〜30種
が分布し、花期は4〜6月頃。小花が集まって球状に開花する“カピタータ
種”と一重咲の“トリコロル種”がある。 「レプタンサ」はカピタータ種で花が
大きい品種。 可愛らしい球形と爽やかな青系の花色で、ガーデニングでも
人気。
■ハーブ〔オレガノアロマティカス〕 シソ科/多年草/表面を白い軟毛
で覆われた肉厚な葉っぱをもつ。ミントのような爽やかな香りがする。料理
やハーブティーなどにも利用される。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/4062.jpg
■アンスリュウム〔ルミナ〕 サトイモ科/常緑多年草/花弁のように見
える部分は苞で、中心の棒状の部分が花序。 主に苞を鑑賞するため、非
常に長く楽しめる。「ルミナ」は苞が細い“チューリップアンス”と呼ばれる品
種。苞に入るストライプと薄紫の花序が個性的な花色。
■ギリア〔レプタンサ〕 ハナシノブ科/一年草/北米西部に20〜30種
が分布し、花期は4〜6月頃。小花が集まって球状に開花する“カピタータ
種”と一重咲の“トリコロル種”がある。 「レプタンサ」はカピタータ種で花が
大きい品種。 可愛らしい球形と爽やかな青系の花色で、ガーデニングでも
人気。
■ハーブ〔オレガノアロマティカス〕 シソ科/多年草/表面を白い軟毛
で覆われた肉厚な葉っぱをもつ。ミントのような爽やかな香りがする。料理
やハーブティーなどにも利用される。
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