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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2016.11.18

vol.391  − 勤 (いそしむ) −

起床時、灯(あかり)が必要です。西風、北風が冷たく、肌を刺します。

縁側(えんがわ)や木々の葉や草に宿っている露(つゆ)が、日の出とともに眩(まぶ)しい程に輝き出します。
しかし、陽が昇るとともに消えてしまいます。“儚さ”(はかなさ)を学ぶ情景です。

背後から上ってくる太陽に照らされて、東の山々が、赤銅色の発光体のように輝いています。
西の嶺々(みねみね)が、顔を出していない太陽の光を受けて頂上だけが赤く染まり、刻々とその光の帯が麓(ふもと)に降りていきます。

カーテンを開けると、執務室の窓々が夜露に濡れています。仕事を始めていると金色(こんじき)に輝く太陽が山の上に顔を出し、信夫の里全域を赤味を帯びた黄金色(こがねいろ)に照らし出します。
この光景、夕べには東と西が所を変えて再現されます。

小春日和(こはるびより)、本格的な冬に入る前の一時的な暖(だん)の戻りが愛(いと)おしく感じられます。
日溜りの仄(ほの)かな暖かさに、小学校時代の木造校舎の下見張り(したみばり)の板、板が雨風に曝(さら)されてできた木目の浮き模様を思い出します。

夜、蒼(あお)い空を背景に“冬の月”や星座が輝いています。宵(よい)の明星が寄り添っています。

大学に着くと、建物の灯(あかり)が、己を迎えてくれます。
その灯が、張り詰めた心へとスイッチを入れてくれます。
大学に赴任した当初、早朝、大学に着いても、病院棟を除いて全棟が闇(やみ)に包まれていました。当時は、今よりも“時の歩み”が遅かった所為(せい)もあります。が今は、己の到着時、多くの部屋に灯が点(つ)いています。

教員として本学に着任して以来、学生、弟子、部下達に説いてきたことがあります。
“己のような凡人にも出来ることがある。それは「愚直なる継続」である”と。
       〔学長からの手紙〕
         (No.39 http://www.fmu.ac.jp/univ/daigaku/letter/039.html
         (No.209 http://www.fmu.ac.jp/univ/daigaku/letter/209.html
         (No.214 http://www.fmu.ac.jp/univ/daigaku/letter/214.html
         (No.215 http://www.fmu.ac.jp/univ/daigaku/letter/215.html
         (No.221 http://www.fmu.ac.jp/univ/daigaku/letter/221.html
         (No.224 http://www.fmu.ac.jp/univ/daigaku/letter/224.html
才ある人間(ヒト)でも、“才ある人間こそが己の才の無さを誰よりも良く知っているからこそたゆめず努めるのだ”とも。それを人間(ヒト)は天分と言います。

海外で修業中、言葉の壁に打ちのめされて絶望の淵(ふち)に居る時、亡き恩師が励ましてくれた“努力できることも才能の一つである”と。この言葉が己の人生を変えました。
       〔学長からの手紙〕
         (No.36 http://www.fmu.ac.jp/univ/daigaku/letter/036.html
         (No.212 http://www.fmu.ac.jp/univ/daigaku/letter/212.html
       〔理事長室からの花だより〕
         (vol.35 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=55
         (vol.100 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=128
         (vol.199 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=235
         (vol.250 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=287

幾度も四季が巡り、気が付けば、嘗(かつ)ての教え子達や教職員が早朝から務めています。
早朝、卒業生や部下から“朝早く来て仕事をしています”という挨拶を受けます。

言うまでも無く、“朝早く出る”ことが目的ではありません。
人間には、平等に1日に24時間しか与えられていません。これをどう使うかは己の意志一つです。朝は、己の好きな様(よう)に、独り、静かに勉強したり、仕事が出来る“自由な時間”です。

己に能力が足りないと思えれば、そこに時間を掛けて足りない能力を補うしかないのです。要は、それを努力で補えるかどうかです。努力すれば全てが解決できる程、世の中単純ではありません。努力ではどうにもならないことは、世の中、多くあります。しかし、努力しなければ何も成し遂げられません。

日々、黙々と努力していると、それを周囲が愛(いと)しく思い、救いの手を差し延べて下さるのです。
“人生の扉は他人が開く”のです。これに就(つ)いても書きました。
       〔学長からの手紙〕
         (No.202 http://www.fmu.ac.jp/univ/daigaku/letter/202.html
         (No.212 http://www.fmu.ac.jp/univ/daigaku/letter/212.html
       〔理事長室からの花だより〕
         (vol.168 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=202
         (vol.264 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=301
         (vol.269 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=306
         (vol.311 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=350
         (vol.320 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=359

今週の花材は、去り行く晩秋の静謐(せいひつ)さの表現です。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■赤芽柳(アカメヤナギ)   ヤナギ科/落葉高木/猫柳と山猫
柳の雑種で日本の山野に自生。赤い花芽の皮がとれると、銀白色
のモコモコした花穂が表れる。
■カラー〔キャプテンロマンス〕    サトイモ科/球根植物/花弁
のように見えるメガホン状の部分は苞で、その中に棒状の花序が
ある。江戸時代にオランダから渡来。“オランダから来た芋”の意味
で別名は「オランダカイウ」。
■ピンポン菊〔ガナッシュ〕   キク科/多年草/ピンポン玉のよ
うに真ん丸に咲く可愛い菊。 日持ちの良い菊の中でも特に長く楽
しめる。「ガナッシュ」は赤黒色。
■ハイドランジア〔ライトグリーン〕    アジサイ科/落葉低木/
日本の紫陽花がヨーロッパに渡り、品種改良された西洋アジサイ。
日本原産の紫陽花アジサイに比べ、花が大きく華やか。
■アメリカデマリ〔ディアボロ〕   バラ科/落葉低木/コデマリの
一種。コデマリに似た淡いピンクの花が咲く。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3911.jpg

【秘書室】
■バラ〔ナイチンゲール〕   バラ科/落葉低木/花色・花形な
ど多岐にわたり約2万種を超す。世界的に古くから親しまれ、現
代でも人気の高い花。「ナイチンゲール」は綺麗な淡紫色で花持
ちの良い品種。
■アンスリューム〔プレビア〕    サトイモ科/常緑多年草/造
花のようなツヤツヤした花(苞)が特徴。団扇状の部分は苞で、花
は棒状の部分。 「プレビア」は紫色のシックな色合いで小ぶりな
チューリップ型品種。
■エリンジューム   セリ科/多年草/長く鋭い苞と松かさのよ
うな花が特徴。成長とともに青みを帯びる。
■ピンポン菊〔セイルアノパープル〕
(理事長室と同花材) 「セイルアノパープル」は紫色。
■ドラセナ〔コンパクタシルバー〕   リュウゼツラン科/日本で
流通する観葉植物の代表種。「コンパクタシルバー」は小葉タイ
プで赤黒い葉に白が入る。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3912.jpg

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