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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.400 − 磨 (みがく) −
二十四節気では大寒(たいかん)、“冬到来”です。山茶花(サザンカ)も萎(しお)れてしまいました。
早朝、大学の窓は夜露(よつゆ)に濡れています。
この冬初めての積雪です。
旅人にとって、雪景色は風情(ふぜい)です。
しかし、そこで暮らす人々には厄介(やっかい)でしかなく、風情は“他人の破れ傘”です。
日本海からは、“波の花”の便りも届きます。
食は、鮟鱇(アンコウ)鍋の季節です。西の河豚(フグ)鍋と並び称される食です。
榾柮(そだ)に煙なく 雪の夜は長し
地炉(ちろ)に酒を煨(あたた)むれば
煖(あたた)かきこと湯の如し
嗔(いか)る莫(な)かれ 老いたる婦(よめ)の盤(さら)の飣(つまみもの)なきを
笑いて灰の中を指(ゆびさ)せば 芋と栗の香ばし
范成大(はん・せいだい)
冬の夜長、木の切れはしを炉にくべる。
炉火(いろりび)で酒を燗(かん)するとすぐ出来上がる。
飲もうとすると酒の肴(つまみ)がない。
老妻の段取りの悪さを怒りなさんな。
彼女が指さす炉の灰の中には、芋(いも)と栗が香ばしく焼きあがっているではないか。
人間が到達できる理想の境地の一つです。
この詩では、家の中では灯(あかり)と火の爆(は)ぜる音、戸外の闇と静寂が鮮やかな対照をなしています。
“何を見ても 何かを思い出す”(ヘミングウェイ)、時々、この言葉を思い出します。
(vol.69 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=95)
(vol.82 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=108)
(vol.128 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=161)
(vol.278 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=315)
(vol.314 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=353)
“誰もが参加できるのが文明”(司馬遼太郎)です。
戦後、米国の、車を運転し、ショッピングセンターで買い物を楽しみ、電気洗濯機で洗い、冷蔵庫にたくさんの食べ物を入れる人々の姿に、国民は憧れを抱きました。
映画「人生の特等席」の場面、“朝から体に悪いものを食べ、安い酒場でビールの臭いを嗅ぎながらビリヤードをする”と主人公が話しています。
男の一部が憧れる“文明の一断面”かもしれません。
一方、“文化は移ろわない”のです。千年以上続く東大寺のお水取りはその象徴です。(司馬遼太郎)
例えば、“山河を惜しむ心”は、恐らく、民族という枠を越えて、人間(ヒト)が共通に持っている“文化”です。
言葉から考えてみます。
英語圏は“考える”文化です。言葉に必ず主語があります。分析的で、理性的と言えます。“虫の眼”です。
一方、一国、一言語圏という特異な我が国は、“感じる”文化です。言葉に主語はありません。俯瞰(ふかん)的で、情緒的です。“鳥の眼”です。
“和”の文化のもう一つの特徴は、全てが“究(きわ)める”方向に進んでいくことです。
剣道、柔道、華道、茶道、全てが“道”です。技術の錬磨に人生を重ねているようにも見えます。そのような究め方が、コーヒーにまで及んでいます。
(vol.253 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=290)
「私が『その人の仕事や生活について何がどうなっても構いやしないと考えているわけじゃない』ということが伝わる瞬間がある」というのは、真に、和の“コーヒー道”です。(加藤健宏「コーヒーの人−仕事と人生―」)
蕎麦(そば)、ラーメン、寿司の世界にも、作る側、食べる側の双方にその気配が無しとは言えません。
この源(みなもと)を辿ると、商人の職業倫理の礎(いしずえ)を築いた石田梅岩(いしだ・ばいがん)や鈴木正三(すずき・しょうさん)が説いた“勤勉の精神”に行き着きます。
(vol.189 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=225)
(vol.296 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=333)
恐らく、我が国では、古来、技術の習得とは、“鍛”(たん、きたえる)であり、“錬”(れん、ねる)なのです。
鍛(きたえる)だけでなく、錬(ねる)のです。そこに精神の意味が込められています。
今週の花材は、両室とも、暖色系の色彩が心に暖かさをもたらしてくれます。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
早朝、大学の窓は夜露(よつゆ)に濡れています。
この冬初めての積雪です。
旅人にとって、雪景色は風情(ふぜい)です。
しかし、そこで暮らす人々には厄介(やっかい)でしかなく、風情は“他人の破れ傘”です。
日本海からは、“波の花”の便りも届きます。
食は、鮟鱇(アンコウ)鍋の季節です。西の河豚(フグ)鍋と並び称される食です。
榾柮(そだ)に煙なく 雪の夜は長し
地炉(ちろ)に酒を煨(あたた)むれば
煖(あたた)かきこと湯の如し
嗔(いか)る莫(な)かれ 老いたる婦(よめ)の盤(さら)の飣(つまみもの)なきを
笑いて灰の中を指(ゆびさ)せば 芋と栗の香ばし
范成大(はん・せいだい)
冬の夜長、木の切れはしを炉にくべる。
炉火(いろりび)で酒を燗(かん)するとすぐ出来上がる。
飲もうとすると酒の肴(つまみ)がない。
老妻の段取りの悪さを怒りなさんな。
彼女が指さす炉の灰の中には、芋(いも)と栗が香ばしく焼きあがっているではないか。
人間が到達できる理想の境地の一つです。
この詩では、家の中では灯(あかり)と火の爆(は)ぜる音、戸外の闇と静寂が鮮やかな対照をなしています。
“何を見ても 何かを思い出す”(ヘミングウェイ)、時々、この言葉を思い出します。
(vol.69 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=95)
(vol.82 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=108)
(vol.128 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=161)
(vol.278 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=315)
(vol.314 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=353)
“誰もが参加できるのが文明”(司馬遼太郎)です。
戦後、米国の、車を運転し、ショッピングセンターで買い物を楽しみ、電気洗濯機で洗い、冷蔵庫にたくさんの食べ物を入れる人々の姿に、国民は憧れを抱きました。
映画「人生の特等席」の場面、“朝から体に悪いものを食べ、安い酒場でビールの臭いを嗅ぎながらビリヤードをする”と主人公が話しています。
男の一部が憧れる“文明の一断面”かもしれません。
一方、“文化は移ろわない”のです。千年以上続く東大寺のお水取りはその象徴です。(司馬遼太郎)
例えば、“山河を惜しむ心”は、恐らく、民族という枠を越えて、人間(ヒト)が共通に持っている“文化”です。
言葉から考えてみます。
英語圏は“考える”文化です。言葉に必ず主語があります。分析的で、理性的と言えます。“虫の眼”です。
一方、一国、一言語圏という特異な我が国は、“感じる”文化です。言葉に主語はありません。俯瞰(ふかん)的で、情緒的です。“鳥の眼”です。
“和”の文化のもう一つの特徴は、全てが“究(きわ)める”方向に進んでいくことです。
剣道、柔道、華道、茶道、全てが“道”です。技術の錬磨に人生を重ねているようにも見えます。そのような究め方が、コーヒーにまで及んでいます。
(vol.253 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=290)
「私が『その人の仕事や生活について何がどうなっても構いやしないと考えているわけじゃない』ということが伝わる瞬間がある」というのは、真に、和の“コーヒー道”です。(加藤健宏「コーヒーの人−仕事と人生―」)
蕎麦(そば)、ラーメン、寿司の世界にも、作る側、食べる側の双方にその気配が無しとは言えません。
この源(みなもと)を辿ると、商人の職業倫理の礎(いしずえ)を築いた石田梅岩(いしだ・ばいがん)や鈴木正三(すずき・しょうさん)が説いた“勤勉の精神”に行き着きます。
(vol.189 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=225)
(vol.296 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=333)
恐らく、我が国では、古来、技術の習得とは、“鍛”(たん、きたえる)であり、“錬”(れん、ねる)なのです。
鍛(きたえる)だけでなく、錬(ねる)のです。そこに精神の意味が込められています。
今週の花材は、両室とも、暖色系の色彩が心に暖かさをもたらしてくれます。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■マンサク マンサク科/落葉小高木/《名前の由来》早春に他
の花に先駆けて開花することからの「まず咲く」が転じて/早春に葉
に先だって細くねじれた黄色い花弁の花が咲く。
■レッドウィロー ヤナギ科/落葉低木/鮮やかな赤色の細枝が
美しい柳。しなやかで曲げても折れず、アレンジメントに適す。
■サンダーソニア ユリ科/球根植物/細い茎にベル型の小さな
花を連なって咲かせる。花色はランプを灯したような可愛らしいオレン
ジ色。
■ピンポン菊〔パラドフ〕 キク科/真ん丸に開花する可愛らしい
菊。キク類の中でも特に長く楽しめる。
■ヒペリカム〔マジカルヴィクトリー〕 オトギリソウ科/半常緑低木
/花期は初夏で黄色い小さな花が咲く。 主に花後の実を楽しむもの
として流通。
■ドラセナ〔コーディラインカプチーノ〕 リュウゼツラン科/常緑
低木/以前ドラセナ属だったため“ドラセナ”の名で流通するが正式
にはコルジリネ。「カプチーノ」は赤黒の葉の縁に白が入る。
■ユーカリ〔グニユーカリ〕 フトモモ科/常緑高木/オーストラリ
アを中心に約600種が分布。コアラの食べる木として有名。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/4001.jpg
■マンサク マンサク科/落葉小高木/《名前の由来》早春に他
の花に先駆けて開花することからの「まず咲く」が転じて/早春に葉
に先だって細くねじれた黄色い花弁の花が咲く。
■レッドウィロー ヤナギ科/落葉低木/鮮やかな赤色の細枝が
美しい柳。しなやかで曲げても折れず、アレンジメントに適す。
■サンダーソニア ユリ科/球根植物/細い茎にベル型の小さな
花を連なって咲かせる。花色はランプを灯したような可愛らしいオレン
ジ色。
■ピンポン菊〔パラドフ〕 キク科/真ん丸に開花する可愛らしい
菊。キク類の中でも特に長く楽しめる。
■ヒペリカム〔マジカルヴィクトリー〕 オトギリソウ科/半常緑低木
/花期は初夏で黄色い小さな花が咲く。 主に花後の実を楽しむもの
として流通。
■ドラセナ〔コーディラインカプチーノ〕 リュウゼツラン科/常緑
低木/以前ドラセナ属だったため“ドラセナ”の名で流通するが正式
にはコルジリネ。「カプチーノ」は赤黒の葉の縁に白が入る。
■ユーカリ〔グニユーカリ〕 フトモモ科/常緑高木/オーストラリ
アを中心に約600種が分布。コアラの食べる木として有名。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/4001.jpg
【秘書室】
■ピンクッション〔サクセション〕 ヤマモガシ科/常緑
低木/待ち針のように見える一つひとつが雄しべ。針山
のような独特な花姿と、南国らしい原色が特徴の個性的
な花。
■トルコギキョウ〔アンバーダブルミント〕 リンドウ科
/多年草/花の大きさや咲き方など多岐にわたり品種
がとても豊富。 「アンバー」シリーズは花弁が厚く、ろう
細工のような質感の品種。
■ブプレリュウム セリ科/一年草/清々しさを感じ
させる鮮やかな緑で、茎が葉を突き抜けるのが特徴。主
にグリーンとして利用されるが、黄色い小さな花が集まっ
て咲く。
■ラナンキュラス〔菜々てまり〕 キンポウゲ科/球根
植物/薄く柔らかい花弁が幾重にもかさなるのが特徴。
「てまり」 シリーズは香川県オリジナルの育成品種で日
持ちが良い。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/4002.jpg
■ピンクッション〔サクセション〕 ヤマモガシ科/常緑
低木/待ち針のように見える一つひとつが雄しべ。針山
のような独特な花姿と、南国らしい原色が特徴の個性的
な花。
■トルコギキョウ〔アンバーダブルミント〕 リンドウ科
/多年草/花の大きさや咲き方など多岐にわたり品種
がとても豊富。 「アンバー」シリーズは花弁が厚く、ろう
細工のような質感の品種。
■ブプレリュウム セリ科/一年草/清々しさを感じ
させる鮮やかな緑で、茎が葉を突き抜けるのが特徴。主
にグリーンとして利用されるが、黄色い小さな花が集まっ
て咲く。
■ラナンキュラス〔菜々てまり〕 キンポウゲ科/球根
植物/薄く柔らかい花弁が幾重にもかさなるのが特徴。
「てまり」 シリーズは香川県オリジナルの育成品種で日
持ちが良い。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/4002.jpg