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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2016.11.25

vol.392  − 決 (けっする) −

慌ただしいなかで迎えて過ごす11月です。
11月は、12月を前にして来し方(こしかた)の1年を振り返る月でもあります。

菊を愛(め)でる催しが各地で開催されています。只、昨今の人々の菊への関心は薄れている様(よう)に感じます。江戸時代の熱狂振りはどこへいったのかと訝(いぶか)しがる程です。
         (vol.343 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=383
丹精込めて“菊作り”をする人達の熱狂に押されて、所謂(いわゆる)素人が気後れ(きおくれ)して、結果的に、菊を遠い存在にしてしまったのではと案じています。

一点の乱れもない、完璧な形に整えられた菊の美しさ、中国の磁器をみるようです。
只、自然に寄り添いながら、然(さ)り気なく手を入れるという “和の心” からは少し離れてしまった様な気もします。

一度きりの人生の四季、晩秋から初冬は峠です。
下り坂しかない峠、時の流れに身を任せるか、内なる自分を磨くべく努力を続けていくかの岐路(きろ)です。

11月が好きです。好きな理由の一つが、時雨(しぐれ)です。
         (vol.12 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=27
         (vol.52 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=78
         (vol.103 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=131
         (vol.199 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=235
         (vol.245 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=282
         (vol.297 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=334
         (vol.340 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=379
信夫の里は、内陸に位置する盆地なので、この時季、時雨に見舞われます。
11月は時雨月(しぐれづき)ともいいます。時雨虹(しぐれにじ)もみられます。古来、多くの時雨の歌が心象風景を絡(から)めて詠(うた)われています。

生垣(いけがき)の山茶花(サザンカ)が咲き出しました。
朝陽(あさひ)が、構内のいろは紅葉(モミジ)に最後の輝きを与えています。
落葉の散り敷かれた道を歩く時、子供の頃、落葉の吹き溜まりにわざわざ足を踏み入れて、落葉が奏(かな)でる音を楽しみながら歩いていた事を思い出します。

振り返れば、各地の道を自らの足で、或いは車で歩んできました。
道はそこに住む人々の暮らしと共に在(あ)り、他所(よそ)のどこかへ繋がっています。
想い出に残っている道と言えば、米国のフェニックスからグランドキャニオンに至る“どこまでも続く道”です。
米国西海岸のカリフォルニア北部海岸線沿いに走っている絶壁に築かれている道、稚内の貝殻(かいがら)を敷いた海沿いの丘のうねっている小径(こみち)(vol.322)も印象に残っています。
         (vol.322 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=361

大平原で、大都会の真中(まんなか)でも、地平線で点となって終わっている真直ぐ(まっすぐ)な道に出会うことがあります。
どこまでも続く、真直ぐな道を歩くのは嫌いではありません。幾ら遠くても、歩き続けていればいつかは着くからです。

         此の道や行く人なしに秋の暮
                           芭蕉

道の風景を詠(よ)んでいる歌です。
秋の情景に寄せて詠んだ作者の寂寥感(せきりょうかん)が伝わってきます。

“道”、多くの詩が道に人生の歩みを重ねています。高村光太郎、清沢哲夫、谷川俊太郎、相田みつを、柴田トヨなどの“道”の詩が知られています。
道の詩、“出来上がっている人生の道”を歩くことを詠っているのと、“新たに切り拓(ひら)いていく道”を詠う2つがあります。

出来上がっている道を黙々と歩き続ける人が、新たな道を切り拓く人よりも劣っているのかというと、そんなことはありません。過去を見つめ直して、その道を究(きわ)める営みか、未来を創(つく)っていくかという違いです。
生き方が異なっているだけなのです。

どちらの人も世の中には必要です。只、どちらの生き方が、自分に適しているかは分かりません。
それが確かに見えている人が、“人生の達人”です。“自分のことは自分が一番知らない”のですから。

今週の花材は、沈んだ赤が印象的です。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■コブシ   モクレン科/落葉高木/《名前の由来》蕾または果実
の姿が子供の拳に似ていることから/開花時期を目安に農作業を
していたことから別名を「田打桜」(タウチザクラ) 。3〜4月、葉に先
だって白い花が咲き、桜より一足早く春の訪れを告げる。
■プロテア〔キングプロテア〕   ヤマモガシ科/半耐寒性低木/
名前の通り、満開時には直径30cmにもなる大きな花。圧倒的な存
在感で花の王様と称賛され、ドライフラワーにも適す。 南アフリカ共
和国の国花。
■LAユリ〔モセレ〕    ユリ科/球根植物/鉄砲百合とスカシユリ
を掛け合わせた品種。両種の良い所を持ち合わせた中輪咲のユリ。
「モセレ」はピンク色。
■ドラセナ〔ミヤケアカネ〕   リュウゼツラン科/日本で流通する
観葉植物の代表種。「ミヤケアカネ」は葉色が美しい華やかなグリ
ーン。
■ヒムロ杉    ヒノキ科常緑高木/サワラの園芸品種。灰色がか
った緑色の線形の葉が枝に密につく。葉の柔らかさと葉付きの良さ
で、クリスマスリースの花材として人気。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3921.jpg

【秘書室】
■モカラ〔サンライズ〕   ラン科/バンダ・アラクニス・アスコケン
トルムの3種の蘭を交配した人工種。 南国らしい鮮やかな花色が
特徴。「サンライズ」は大輪系のオレンジ色。
■ピンクッション〔サクセション〕   ヤマモガシ科/常緑低木/針
山に待ち針を刺したような独特の花姿。 待ち針のような部分の一
つひとつが雄しべ。「サクセション」はオレンジ色。
■ヒペリカム〔マジカルモカ〕   オトギリソウ科/半常緑低木/切
花では花後の実を楽しむものとして流通。実色は赤ピンク系を中心
に緑や茶、白色などもある。「マジカルモカ」は丸実の茶色。
■ドラセナ〔コーディラインレッドエッジ〕    リュウゼツラン科/理
事長室と同じドラセナ類。 「コーディラインレッドエッジ」は細葉で葉
の縁に赤が入る。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3922.jpg

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