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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2016.09.16

vol.382  − 渡 (わたる) −

青空の下、コスモスの上を乾いた風が吹き抜けています。
         (vol.142 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=175
         (vol.191 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=227
         (vol.196 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=232
         (vol.334 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=373
コスモスは、風に応(こた)えて、身を任せ、揺らいでいます。

赤蜻蛉(アカトンボ)が構内を乱舞しています。
桜の葉も黄色く色付き始めました。秋到来です。

萩(ハギ)が、いつもの時季に、いつもの場所で、いつもの様(よう)に咲き出しています。
秋の七草ですが、歴(れっき)とした木の花です。萩には木の花にない優しさがあります。

秋の大地の恵みを象徴する栗(クリ)の実が、毬(イガ)に包まれて木の葉の隙間から顔を出しています。
栗飯、御強(おこわ)の噛み応えと淡い甘さ、昔から、そして今も最高の御馳走(ごちそう)です。
今という時代、里山の手入れが行き届かず、栗の味も落ちてしまいました。

便りが添えられて、カボス、葡萄(ブドウ)が届きました。
店先には葡萄が並び、季節を実感させてくれます。

         紺碧の葡萄の房を抱きたる少女
         乗り来て秋となるバス
                             谷岡亜紀

少女が葡萄を抱えてバスに乗って来た途端に、車内が秋に彩られたという歌です。
映画の一場面を切り取った様な情景です。

己にも、高校生の時、秋の草花を抱いた女子校生が駅と学校の間を走っているバスに乗って来た場面に居合わせたことがあります。

         秋たつや川瀬にまじる風の音
                           飯田蛇笏(いいだ・だこつ)

河原の堤(つつみ)に立っていると、瀬音とともに風の音が耳に届き、山河に秋が来たことを知ります。
自然は確実に歩みを進めています。

信夫の里では梨が出廻っています。

川と言えば、古来、人間(ヒト)は営みの場を海や川に置いてきました。大海原や険しい山々を越える術(すべ)を持たなかった人々は、海沿い、川沿いが暮らしの全てだったのです。

海辺では、風待ち港、潮待ち港という名称にその名残りをみてとれます。
川辺り(かわべり)、古道は川に沿ってつくられてきました。川に添って曲がりくねって続いている道は、その痕跡(こんせき)です。我々は、道の有り様をみて、それが古道であることを知ります。

時代が移り、橋が架けられるようになりました。
日本人にとって、橋とは此岸(しがん)と彼岸(ひがん)を結ぶものと考えられてきました。自分の住んでいる場所と住まない場所の境でもあります。

橋は、古来、人々の別れ、出会い、喜び、哀しみの交叉する場です。
橋の下を流れている川の流れが、人間の哀歓(あいかん)のすべてを包み抱えて持ち去っていってくれます。
橋の欄干(らんかん)には多くの人々の涙、汗、笑い、切なさが染み込んでいます。どれだけ多くの「物語」が橋の上で紡(つむ)ぎ出されてきたのでしょうか。橋は只(ただ)、黙って人々の営みを見守っています。

故郷の橋、都会の橋、人間(ヒト)は“人生という橋”を渡り続けて、その生を終えます。

橋を主題にした多くの絵画、小説、映画、そして音楽が作られています。
安藤広重の「大はしあたけの夕立」(vol.169)をはじめとする数多くの浮世絵、クロード・モネの「アルジャントゥイユの鉄道橋」、松本竣介(まつもと・しゅんすけ)の「Y市の橋」などの絵画が知られています。
         (vol.169 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=203

映画では、「君の名は」の数寄屋橋、「哀愁」のウォータールー橋が有名です。
映画監督の加藤泰(かとう・たい)が創り出す橋の場面、彼にしか出来ない演出によって、その場の雰囲気が、観る者に情感豊かに伝わってきます。

藤沢周平の「橋ものがたり」、佐藤洋二郎の「東京ブリッジ」、ロバート・ジェームズ・ウォラーの「マディソン郡の橋」の小説が浮かびます。
音楽では、サイモン&ガーファンクルの「明日に架ける橋」や岩崎宏美の「橋」などの作品が知られています。

今週の花材は穏やかで、静やかな秋の訪れを連想させます。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■プロテア〔マディバレッド〕   ヤマモガシ科/常緑低木/《名前の由来》
ギリシャ神話のプロテウスの名より。同属とは思えないほど変異種が多く、
自由自在に変身できるプロテウスの名にちなんで/圧倒的な存在感を放つ
ワイルドフラワー。
■アナベル〔グリーンアナベル〕   ユキノシタ科/落葉低木/小さな花が
集まって手毬状に開花。蕾は緑色で開花につれ白色に変化し、20cm程の
テマリになる。今回使用しているのは満開に咲き切り、白から緑に変化した
もの。
■セダム〔ブリリアント〕    ベンケイソウ科/600種以上ある多肉植物の
一種。 肉厚な葉を持ち、耐寒性・耐暑性があり乾燥にも強い。 切花で流通
する品種も丈夫で長く楽しめる。
■雲竜柳(ウンリュウヤナギ)   ヤナギ科/落葉高木/《名前の由来》竜
が昇って行くような曲線を描くことから/日本でも広く栽培され、庭木や生け
花に利用。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3821.jpg

【秘書室】
■風船唐綿(フウセントウワタ)    ガガイモ科/花期は
夏で小さな白い花が咲く。 トゲトゲした紙風船のような実
を鑑賞。晩秋に実が熟すと、パカッと割れて綿毛と種子が
現れる。
■リンドウ   リンドウ科/多年草/秋の代表花で、野草
として古くから親しまれる。 花色は青紫系を中心に、ピン
クや白、複色等もある。 薬草としても知られ、根や茎に健
胃作用がある。
■ブバルディア〔ダイヤモンドボルドー〕   アカネ科/常
緑低木/4枚の花弁で十字型に咲く筒状花。枝先に多数
の花を房状に咲かせる。 「ダイヤモンドボルドー」は赤色
の八重咲。
■秋色アジサイ〔ライトグリーンアンティーク〕
ユキノシタ科/落葉低木/ 《名前の由来》 正しくは“秋色
アジサイ” という品種はなく、花の最盛期を過ぎ、 花色が
アンティークカラーに変化した 「西洋紫陽花」 (セイヨウア
ジサイ)の流通名。西洋アジサイは日本のアジサイがヨー
ロッパに渡り品種改良されたもの。
■ドラセナ〔コーディラインカプチーノ〕
リュウゼツラン科/日本で流通する観葉植物の代表種。
「カプチーノ」は赤黒い葉の縁に白色が入る。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3822.jpg

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