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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.402 − 装 (よそおう) −
二十四節気では立春、寒さは尚続いていますが、暦(こよみ)では春です。
あちらこちらで、白梅や紅梅がほのかな香りを漂わせています。これから、東風(こち)が吹きます。冬型の気圧配置が緩(ゆる)んできているという兆し(きざし)です。
葉に抱かる雪つばきまた落椿
角川春樹
先日、信夫の里では、樹木を覆(おお)った雪が紅い寒椿を引き立てていました。雪の重さに堪(た)え兼ねて、花が雪の上に落ちています。この歌の様(よう)に、白と紅、そして緑の対比が鮮やかです。
玄関の大壺(おおつぼ)に生けた水仙と紅梅の枝、暗がりの中、疲れて帰る己を香りとともに迎えてくれます。
梅も水仙も和の装い(よそおい)です。
“和”の意匠(デザイン)には、太古の昔から、気候や風土、その土地に住んでいる人々の知恵や暮らしが色濃く反映されています。
湿気や風通しを考えた日本家屋の造りも、然り(しかり)です。
日本人が住みたいと思う建物やその有り様は、時代や世代を越えても変わっていません。
季節、用途、気分に応じて自由に移動でき、広さを調節できる柔軟な仕切りは、その典型です。
現代建築で用いられる大きな窓際で、安心感を高めるため少しだけ立ち上げた腰壁(こしかべ)は、今に伝わる工夫の一つです。
立っても座っても視線を妨げない抑えた天井の高さ、視線が天井から軒裏(のきうら)へ円滑に追える高さへの配慮、これも内と外を明確に区別しない和の建築の特徴の一つです。
軒先から雨が落ちて、踏み石を叩き、地面に染み込んでいく情景は、日本人が辿り着いた意匠の一つです。
間仕切りも和の設え(しつらえ)の一つです。平安時代の絵巻物をみると、几帳(きちょう)、御簾(みす)、衝立(ついたて)、屏風(びょうぶ)などで空間を仕切っています。
簡単に置け、移動でき、終われば折り畳んで仕舞えるパーテーションやスクリーンが、間仕切りとして、今、再び、姿を変えて登場しています。
家具も同様です。明治になって西洋から家具が入ってくるまでは、我が国の家具は、その時々の必要に応じて、場を設える道具でした。
床に座る時、座布団、卓(たく)、膳(ぜん)を持ってきて場を設えます。これらは、移動、収納が簡単で、限られた空間を自由に変えることが出来ます。
縁側や窓際に座布団を持ってきて座ったり、アジマックワ(vol.282)や座禅用布団を枕にして横になるなどは、“和の贅沢(ぜいたく)”の一つです。
(vol.282 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=319)
和室が、今、少なくなっています。
和の文化では、床の間は“聖なる空間”です。
テレビが普及していった時代、床の間はテレビの置き場所と化してしまいました。
(vol.295 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=332)
(vol.300 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=337)
伝統的な床の間の様式は消えても、我々日本人は、花や美しいモノを愛(め)でる心まで失ったわけではありません。
今という時代、現代の“床の間”の設えは、形を変えて至る所にみられます。
階段の踊り場(おどりば)、玄関の一角などに、長板一枚を“場”として、日本人が“美しい”と感じるモノが然(さ)りげ無く置いてあるのをみます。“精神的な床の間”です。
“現代の床の間”に飾るモノは、伝統を発展させて、個人の自由や好みが反映されています。
伝統を受け継いでいる骨董品(こっとうひん)、現代の作品などです。そこには時代、国、領域を越えて、飾る主(あるじ)が“美しい”と感じているモノが置かれていて、観る者を飽きさせません。
“床の間”に飾ってあるモノは、その出自がどこであれ“和の美しさ”なのです。伝統の呪縛(じゅばく)から解き放たれて、自由な美しいモノが、不思議と和を感じさせてしまうのです。それが“現代の和”です。
今週の花材は、執務室と秘書室で色使いが対照的です。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
あちらこちらで、白梅や紅梅がほのかな香りを漂わせています。これから、東風(こち)が吹きます。冬型の気圧配置が緩(ゆる)んできているという兆し(きざし)です。
葉に抱かる雪つばきまた落椿
角川春樹
先日、信夫の里では、樹木を覆(おお)った雪が紅い寒椿を引き立てていました。雪の重さに堪(た)え兼ねて、花が雪の上に落ちています。この歌の様(よう)に、白と紅、そして緑の対比が鮮やかです。
玄関の大壺(おおつぼ)に生けた水仙と紅梅の枝、暗がりの中、疲れて帰る己を香りとともに迎えてくれます。
梅も水仙も和の装い(よそおい)です。
“和”の意匠(デザイン)には、太古の昔から、気候や風土、その土地に住んでいる人々の知恵や暮らしが色濃く反映されています。
湿気や風通しを考えた日本家屋の造りも、然り(しかり)です。
日本人が住みたいと思う建物やその有り様は、時代や世代を越えても変わっていません。
季節、用途、気分に応じて自由に移動でき、広さを調節できる柔軟な仕切りは、その典型です。
現代建築で用いられる大きな窓際で、安心感を高めるため少しだけ立ち上げた腰壁(こしかべ)は、今に伝わる工夫の一つです。
立っても座っても視線を妨げない抑えた天井の高さ、視線が天井から軒裏(のきうら)へ円滑に追える高さへの配慮、これも内と外を明確に区別しない和の建築の特徴の一つです。
軒先から雨が落ちて、踏み石を叩き、地面に染み込んでいく情景は、日本人が辿り着いた意匠の一つです。
間仕切りも和の設え(しつらえ)の一つです。平安時代の絵巻物をみると、几帳(きちょう)、御簾(みす)、衝立(ついたて)、屏風(びょうぶ)などで空間を仕切っています。
簡単に置け、移動でき、終われば折り畳んで仕舞えるパーテーションやスクリーンが、間仕切りとして、今、再び、姿を変えて登場しています。
家具も同様です。明治になって西洋から家具が入ってくるまでは、我が国の家具は、その時々の必要に応じて、場を設える道具でした。
床に座る時、座布団、卓(たく)、膳(ぜん)を持ってきて場を設えます。これらは、移動、収納が簡単で、限られた空間を自由に変えることが出来ます。
縁側や窓際に座布団を持ってきて座ったり、アジマックワ(vol.282)や座禅用布団を枕にして横になるなどは、“和の贅沢(ぜいたく)”の一つです。
(vol.282 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=319)
和室が、今、少なくなっています。
和の文化では、床の間は“聖なる空間”です。
テレビが普及していった時代、床の間はテレビの置き場所と化してしまいました。
(vol.295 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=332)
(vol.300 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=337)
伝統的な床の間の様式は消えても、我々日本人は、花や美しいモノを愛(め)でる心まで失ったわけではありません。
今という時代、現代の“床の間”の設えは、形を変えて至る所にみられます。
階段の踊り場(おどりば)、玄関の一角などに、長板一枚を“場”として、日本人が“美しい”と感じるモノが然(さ)りげ無く置いてあるのをみます。“精神的な床の間”です。
“現代の床の間”に飾るモノは、伝統を発展させて、個人の自由や好みが反映されています。
伝統を受け継いでいる骨董品(こっとうひん)、現代の作品などです。そこには時代、国、領域を越えて、飾る主(あるじ)が“美しい”と感じているモノが置かれていて、観る者を飽きさせません。
“床の間”に飾ってあるモノは、その出自がどこであれ“和の美しさ”なのです。伝統の呪縛(じゅばく)から解き放たれて、自由な美しいモノが、不思議と和を感じさせてしまうのです。それが“現代の和”です。
今週の花材は、執務室と秘書室で色使いが対照的です。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■スカビオサ マツムシソウ科/明治時代に渡来した西洋
松虫草(マツムシソウ)。日本に自生する松虫草に比べ、花が
大きくこんもりとして花色も豊富。
ピンク「ピンキー」・赤紫「アメジスト」
■カラテア〔インシグニス〕 クズウコン科/多年草/熱帯
アメリカに300種が自生。 「インシグニス」は葉模様が面白く
葉裏が赤味を帯びて縁は波打つ。
■菊〔マグナ〕 キク科/多年草/ダリアのような花姿が
特徴のデコラ咲きの菊。「マグナ」はシックな赤茶色。
■アンスリュウム〔チョコ〕 サトイモ科/常緑多年草/
ろう細工のような光沢があり、造花と見間違うような花。団扇
(うちわ)のような部分は苞で、棒状の部分が花。
■カーネーション〔みやび〕 ナデシコ科/多年草/母の日
の花として古くから親しまれ、世界的に生産量が多い主要花。
「みやび」はベージュ地に濃赤の絞り模様が入る。
■ガーベラ〔セス〕 キク科/多年草/四季咲性で春から
秋まで長期間楽しめる。花色はとても豊富で一重咲、八重咲、
スパイダー咲などある。緑「カーミット」。
■テマリ草〔グリーンウィッキー〕 ナデシコ科/多年草/
真ん丸でマリモや芝を連想されるような花。 フサフサした部
分は雄しべ・雌しべ・花弁がガク片のように変化したもの。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/4021.jpg
■スカビオサ マツムシソウ科/明治時代に渡来した西洋
松虫草(マツムシソウ)。日本に自生する松虫草に比べ、花が
大きくこんもりとして花色も豊富。
ピンク「ピンキー」・赤紫「アメジスト」
■カラテア〔インシグニス〕 クズウコン科/多年草/熱帯
アメリカに300種が自生。 「インシグニス」は葉模様が面白く
葉裏が赤味を帯びて縁は波打つ。
■菊〔マグナ〕 キク科/多年草/ダリアのような花姿が
特徴のデコラ咲きの菊。「マグナ」はシックな赤茶色。
■アンスリュウム〔チョコ〕 サトイモ科/常緑多年草/
ろう細工のような光沢があり、造花と見間違うような花。団扇
(うちわ)のような部分は苞で、棒状の部分が花。
■カーネーション〔みやび〕 ナデシコ科/多年草/母の日
の花として古くから親しまれ、世界的に生産量が多い主要花。
「みやび」はベージュ地に濃赤の絞り模様が入る。
■ガーベラ〔セス〕 キク科/多年草/四季咲性で春から
秋まで長期間楽しめる。花色はとても豊富で一重咲、八重咲、
スパイダー咲などある。緑「カーミット」。
■テマリ草〔グリーンウィッキー〕 ナデシコ科/多年草/
真ん丸でマリモや芝を連想されるような花。 フサフサした部
分は雄しべ・雌しべ・花弁がガク片のように変化したもの。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/4021.jpg
【秘書室】
■デルフィニュウム・シネンシス〔プラチナブルー〕
キンポウゲ科/多年草/ブルー系の花色が美しく、切り花だ
けでなく鉢植えでも人気。シネンシス系は草丈が低く、枝が良
く分岐して多数の花を付ける。
■カーネーション〔ムーンライト〕 (理事長室と同花材)
「ムーンライト」は純白色。
■ラナンキュラス〔エムホワイト〕 キンポウゲ科/球根植
物/薄く柔らかい花弁が幾重にも重なるのが特徴。花色が豊
富で、花径13cm以上にもなる大輪品種もある。
■アイビー〔ホワイトワンダー〕 ウコギ科/常緑蔓性植物
/地面やフェンス等を這うように育ち、壁面緑化にも利用され
る強健な植物。「ホワイトワンダー」は丸みを帯びた葉形で白
斑が入る品種。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/4022.jpg
■デルフィニュウム・シネンシス〔プラチナブルー〕
キンポウゲ科/多年草/ブルー系の花色が美しく、切り花だ
けでなく鉢植えでも人気。シネンシス系は草丈が低く、枝が良
く分岐して多数の花を付ける。
■カーネーション〔ムーンライト〕 (理事長室と同花材)
「ムーンライト」は純白色。
■ラナンキュラス〔エムホワイト〕 キンポウゲ科/球根植
物/薄く柔らかい花弁が幾重にも重なるのが特徴。花色が豊
富で、花径13cm以上にもなる大輪品種もある。
■アイビー〔ホワイトワンダー〕 ウコギ科/常緑蔓性植物
/地面やフェンス等を這うように育ち、壁面緑化にも利用され
る強健な植物。「ホワイトワンダー」は丸みを帯びた葉形で白
斑が入る品種。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/4022.jpg