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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.74 − 海鳴り −
福島にも春が来ました。
庭には木瓜(ボケ)、海棠(カイドウ)、沈丁花(ジンチョウゲ)、石楠花(シャクナゲ)、そして連翹(レンギョウ)が彩りを添え、庭の境界の一画を形成している白樫も薄い緑と濃い緑が混ざって心持ち良いハーモニーを奏でています。
山形県の鶴岡を訪れました。3回目の訪問です。今回は、低気圧の通過により、久し振りに轟き渡るような海鳴りを聞きながら床に就きました。
海鳴りは古来、現代に至るまで詩や唄に度々取り上げられています。
われこそは新島守りよ 隠岐の海の荒き波風 心して吹け (後鳥羽院)
凩(こがらし)の果てはありけれ 海の音 (池西言水)
文学では、捕虜として、過酷な環境にも気高く、そして優しく生きた山本幡男を紹介した「収容所(ラーゲリ)から来た遺書」(辺見じゅん)が、読む人に人間という生き物の素晴らしい一面をみせてくれます。
彼は隠岐島出身者です。海鳴りは、彼の人生の一部であったのでしょう。
身内にシベリアの抑留者がいて話を聞いているだけに、香月泰男のことなど併せ考えると、シベリア抑留という非道さを痛感します。
(香月泰男 関連記事vol.22 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=39
vol.62 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=88)
鶴岡が郷里である藤沢周平に「海鳴り」という小説があります。
現代の音楽でも、海鳴りは取り上げられています。私の知っているだけでも、阿久悠の作詞で石川さゆりが唄う「津軽海峡・冬景色」の歌詞や中島みゆきの「海鳴り」というタイトルがすぐ浮かびます。
鶴岡に行くと、食べ物のおいしさと共に私には土門拳記念館の訪問というもう一つの楽しみがあります。
土門拳は、若い時に「筑豊のこどもたち」のシリーズをみてから意識するようになりました。我々の世代は「にあんちゃん」という本で筑豊の子供達のことを知っているから一層強い印象を持ったのでしょう。
芸術新潮の1986年5月号に「執念の土門拳」として特集されて、彼の偉業を初めて通覧したのが関心を持つ切っ掛けでした。
この記念館の素晴らしさは、建物の直線としての美しさと周辺との調和にあります。設計(谷口吉生)や周辺のデザインに友人達(イサム・ノグチ、亀倉雄策、勅使河原宏、草野心平)が協力していることです。
今回、初めて訪問した近くにある酒田市美術館も、建物(池原義郎)と森田茂の代表作である黒川能シリーズの所蔵により、充分訪れる価値があります。酒田市を一望できる立地条件と低層に設計された建物は、長いアプローチとともに、人の心を優しくする雰囲気を持っています。
それにしても、酒田市がこれら2つの美術館を運営していることは財政的に大変な負担だろうと、他人事ながら、心配になります。
この酒田市は、岸洋子というスケールの大きな、そして存在感のある歌手の故郷でもあります。私の出身高校の旧制中学校時代の一期生である高山樗牛も、酒田市の出身です。
この土地の海、夕陽、山、そして食といった風土がこのような人々を育てたのかという想いを、訪問する度に持ちます。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
※編集註:今回は「今週の花」活け込み前の、海外出張出発直前に書き上げた原稿のため、お花についての記載がありませんことをご了承ください。
また、出張で不在が重なる時期のため、来週の「花だより」は休載させていただきます。
庭には木瓜(ボケ)、海棠(カイドウ)、沈丁花(ジンチョウゲ)、石楠花(シャクナゲ)、そして連翹(レンギョウ)が彩りを添え、庭の境界の一画を形成している白樫も薄い緑と濃い緑が混ざって心持ち良いハーモニーを奏でています。
山形県の鶴岡を訪れました。3回目の訪問です。今回は、低気圧の通過により、久し振りに轟き渡るような海鳴りを聞きながら床に就きました。
海鳴りは古来、現代に至るまで詩や唄に度々取り上げられています。
われこそは新島守りよ 隠岐の海の荒き波風 心して吹け (後鳥羽院)
凩(こがらし)の果てはありけれ 海の音 (池西言水)
文学では、捕虜として、過酷な環境にも気高く、そして優しく生きた山本幡男を紹介した「収容所(ラーゲリ)から来た遺書」(辺見じゅん)が、読む人に人間という生き物の素晴らしい一面をみせてくれます。
彼は隠岐島出身者です。海鳴りは、彼の人生の一部であったのでしょう。
身内にシベリアの抑留者がいて話を聞いているだけに、香月泰男のことなど併せ考えると、シベリア抑留という非道さを痛感します。
(香月泰男 関連記事vol.22 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=39
vol.62 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=88)
鶴岡が郷里である藤沢周平に「海鳴り」という小説があります。
現代の音楽でも、海鳴りは取り上げられています。私の知っているだけでも、阿久悠の作詞で石川さゆりが唄う「津軽海峡・冬景色」の歌詞や中島みゆきの「海鳴り」というタイトルがすぐ浮かびます。
鶴岡に行くと、食べ物のおいしさと共に私には土門拳記念館の訪問というもう一つの楽しみがあります。
土門拳は、若い時に「筑豊のこどもたち」のシリーズをみてから意識するようになりました。我々の世代は「にあんちゃん」という本で筑豊の子供達のことを知っているから一層強い印象を持ったのでしょう。
芸術新潮の1986年5月号に「執念の土門拳」として特集されて、彼の偉業を初めて通覧したのが関心を持つ切っ掛けでした。
この記念館の素晴らしさは、建物の直線としての美しさと周辺との調和にあります。設計(谷口吉生)や周辺のデザインに友人達(イサム・ノグチ、亀倉雄策、勅使河原宏、草野心平)が協力していることです。
今回、初めて訪問した近くにある酒田市美術館も、建物(池原義郎)と森田茂の代表作である黒川能シリーズの所蔵により、充分訪れる価値があります。酒田市を一望できる立地条件と低層に設計された建物は、長いアプローチとともに、人の心を優しくする雰囲気を持っています。
それにしても、酒田市がこれら2つの美術館を運営していることは財政的に大変な負担だろうと、他人事ながら、心配になります。
この酒田市は、岸洋子というスケールの大きな、そして存在感のある歌手の故郷でもあります。私の出身高校の旧制中学校時代の一期生である高山樗牛も、酒田市の出身です。
この土地の海、夕陽、山、そして食といった風土がこのような人々を育てたのかという想いを、訪問する度に持ちます。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
※編集註:今回は「今週の花」活け込み前の、海外出張出発直前に書き上げた原稿のため、お花についての記載がありませんことをご了承ください。
また、出張で不在が重なる時期のため、来週の「花だより」は休載させていただきます。
今週の花
【理事長室】
■ベニスモモ バラ科/落葉高木/原産:
西南アジア・コーカサス/新葉から赤色を帯び
ているのが特徴で、秋には濃い赤紫色にな
る。花期は4〜5月で、葉に先立ち薄桃色の
桜に似た花が咲く。7〜8月に果実が熟す。果
実は食用になるが酸味があり、主に園芸用と
して栽培される。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/741.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)
■ベニスモモ バラ科/落葉高木/原産:
西南アジア・コーカサス/新葉から赤色を帯び
ているのが特徴で、秋には濃い赤紫色にな
る。花期は4〜5月で、葉に先立ち薄桃色の
桜に似た花が咲く。7〜8月に果実が熟す。果
実は食用になるが酸味があり、主に園芸用と
して栽培される。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/741.jpg
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【秘書室】
■アリウム(スネークボール) ネギ科/原
産:ヨーロッパ/《名前の由来》ラテン語の「匂
い」を意味する語から/品種名の通り、へびの
ようにくねくねした茎が特徴。躍動感にあふ
れ、おもしろい花。「スネークボール」は他のア
リウムに比べ、花がとても小さい。ユリ科ネギ
属の花なので、鋏をいれるとネギの匂いがす
る。
■ダリア キク科/原産:メキシコ/別名
「天竺牡丹」/《名前の由来》スウェーデンの
植物学者の名に由来/江戸時代にオランダ
から渡来。品種がとても豊富で、世界に3万種
以上といわれる。花径が3cmほどの小輪のも
のから30cmを超える超巨大輪まである。大
輪品種は一輪だけでも存在感がありダイナミ
ックな花。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/742.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)
■アリウム(スネークボール) ネギ科/原
産:ヨーロッパ/《名前の由来》ラテン語の「匂
い」を意味する語から/品種名の通り、へびの
ようにくねくねした茎が特徴。躍動感にあふ
れ、おもしろい花。「スネークボール」は他のア
リウムに比べ、花がとても小さい。ユリ科ネギ
属の花なので、鋏をいれるとネギの匂いがす
る。
■ダリア キク科/原産:メキシコ/別名
「天竺牡丹」/《名前の由来》スウェーデンの
植物学者の名に由来/江戸時代にオランダ
から渡来。品種がとても豊富で、世界に3万種
以上といわれる。花径が3cmほどの小輪のも
のから30cmを超える超巨大輪まである。大
輪品種は一輪だけでも存在感がありダイナミ
ックな花。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/742.jpg
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