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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2010.05.21

vol.78  − 郷愁 −

最近、「バス停留所」という写真集(柴田秀一郎)が発刊され、いくつかの新聞書評に取り上げられています。高価な本だけに手を出しかねています。
実は私も、昔からいわゆる「バス停」に関心を持っていただけに、この本の紹介をみたときに、同じように愛(いと)しさを持ってみている人がいることを知り、嬉しく感じました。
高校の通学時代、学校前から駅に向かうバスが混むので一つ手前の停留所まで歩いて行き、そこから乗りました。その停留所は、当時既に寂れていて、木製の標識は傾いていました。
あの頃を想い出すと、今でも必ずこの場所が周囲の風景や雰囲気までもが脳裡に浮かびます。

実は、私には以前から気になる“滅びゆく美の風景”が二つあります。いずれも二階建て新幹線の車窓からみえます。
一つは、丘の上の、白壁が剥がれて土壁だけになって傾いて立っている小さな土蔵です。
もう一つは、凹地の低地にポツンと建っているバス停留所です。
以前は交通安全の看板が脇にあり、夜に灯りが点ると、ここだけが生きているように闇の中に浮かんでいます。花を撮ってくれている弟子に撮影を頼んでいるのですが、紹介できるのはいつになることやら…。私自身に絵心やカメラに対する技がないだけに、時間との競争になっています。

尾形光琳の「燕子花図屏風」が根津美術館蔵の琳派のコレクションとともに公開されるというので、週末に出掛けて来ました。
確か4年前の公開時には旧館での展示でした。新しい展示館は隈研吾の設計です。
庭と竹林をアプローチに取り入れて、以前のそれとは全く別物の静謐さが、鎮守の杜の参道で感じるのと同じように流れていました。

先日の東京国立博物館での長谷川等伯展といい、この特別展といい、入場者数の多さにたじろいでしまいました。殆どが高・壮年の女性でした。外とは一転した“さんざめき”とは言えない雰囲気でした。
只、男性ももっと積極的に別な世界に一時でも浸ればいいのにと思います。

前回みたのは、「松林図屏風」は出光美術館で、「燕子花図屏風」は確か4年前に旧館ででした。
これらの時は、訪れる人はいても、館内は静謐そのもので、ゆっくりと絵の前に展開される空間の雰囲気も楽しめたのに、残念でした。
琳派のコレクションといえば、細見美術館(京都)が、小振りな造りですが、建物のデザインと内部の異次元の世界とともに訪れる価値があります。

今週の花材は、執務室はナツハゼの押さえた色彩がヒマワリの鮮烈さを包み込み、心を和ませてくれます。
秘書室は、スズランが主役です。このアレンジメントは部屋に戻ってくるときの猛々しい気持ちを落ち着かせてくれます。

(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)

※県外での会議や学会参加により不在が重なるため、来週の「花だより」は休載させていただきます。

今週の花


【理事長室】
■ナツハゼ   ツツジ科/落葉低木/原産:
日本・朝鮮/《名前の由来》夏にハゼのように
紅葉することから/北海道から九州まで、山
地・丘陵地に生育。春の芽吹きの頃から赤み
を帯びた綺麗な葉色が特徴。花期は5〜6月
頃で、ベル状の小さな花を多数つける。赤褐
色の実がなり、秋に熟すと黒くなり食べられ
る。
■ひまわり(サンリッチマンゴー)   キク科
/一年草/原産:北アメリカ/《名前の由来》
太陽(日)の方向に生育することから/太陽の
ような花を咲かせる夏の代表花。江戸時代に
渡来。品種改良が進み、色・大きさ・咲き方な
ど種類が豊富。「サンリッチ」シリーズは花粉
がでない品種。他にサンリッチレモン、パイン、
オレンジなどあり。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/78_1.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

【秘書室】
■スズラン   ユリ科/多年草/原産:日本〜シベリア東部
/《名前の由来》鈴に似た花形と葉が蘭の葉に似ていること
から/小さなベル型の白い花を連なって咲かせる可憐な花。
園芸用に出回るのはドイツスズランで、日本のスズランよりも
大型で芳香も強い。有毒植物なので注意が必要。
■スノーボール   スイカズラ科/落葉低木/別名「西洋カ
ンボク」「テマリカンボク」/5〜6月頃に紫陽花に似た花を咲
かせる。爽やかなグリーンが特徴で、開花が進むにつれ白く
なる。
■モルセラ   シソ科/一年草/原産:シリア/《名前の由
来》インドネシア・モルッカ諸島原産と間違えられたことから/
別名「シェルフラワー」大きなガクが二枚貝のように見えること
から/ミントのような芳香がある。春に白い小さな花が咲く。
主に花を包むような大きな緑色のガクを観賞する切花。爽や
かなグリーンと独特の茎のラインが特徴。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/78_2.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

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