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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2010.07.30

vol.87  − 時の移ろい −

道路の法面(のりめん)にある木蔭に山百合(ヤマユリ)が群生しているのをみつけました。種々の緑を背景にした白は、強烈な日差しの中、清冽です。
目を遠方に転ずれば、凌霄花(ノウゼンカズラ)の橙(だいだい)が高木に巻き付いて高所からその存在を主張しています。
このような景色に稲妻が参加し、以前にはなかったような夕立(この言葉からは想像できない程の激しさ)が、一時、自然の色彩を一層際立たせます。

         年年歳歳花相似たり
         歳歳年年人同じからず   (劉廷芝(希夷))

広く人口に膾炙(かいしゃ)している詩です。
自然と人との対照の中で、人の命の儚さを詠んでいるとだけ理解していました。
只、この詩を“時”の視点からみつめると、この詩が示している“時”の苛酷さに気付きます(当たり前と言われそうですが…)。
“相似たり”は、勿論同じではありません。ここに不常がみてとれます。
“時”は、花にも、人と同様に、容赦なく主役交代を強います。
こう感じるのは、二週間という時を置かずに、草木の花の主役が入れ替わってしまうからです。

最近、昔、闘病生活に携わらせて戴いた患者さんが亡くなったという知らせが時々届きます。
患者さんの病との闘いは、医師にとっても、診断、治療、経過観察や指導、そして転帰という全経過を通して、患者さんやその家族との間に信頼関係を確立しての闘いでもあります。
その全てが、患者さんを中心として関係者が参加しての“共同製作”です。
このことは、「医療は数字だけでは語れない。言葉でしか表せないこともある」ということを示しています。
このような、共感、信頼、そして連帯感など目に見えないことについては、所謂(いわゆる)「論文」では充分には伝えきれません。

私が居なくなれば、患者さんとの絆それ自体も跡形もなく消える運命にあります。
それだけに、自分自身が多くの患者さんとの関わりや歩みの中で得たもの(知識、技術、あるいは知恵)を、何らかの形で次の世代に伝えねばと改めて誓うこの頃です。
このような営みを愚直に継続することこそ、亡くなった患者さんも願っていると確信しています。

今週の花材は、執務室は夏の盛り、深山幽谷の趣があります。
秘書室は、一転、可憐さを演出しています。

(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)

今週の花


【理事長室】
■ナナカマド   バラ科/落葉高木/原産:日
本/《名前の由来》その名の通り七度かまどに入
れて燃え残るくらい燃えにくいことからついたとい
う説がある/未成熟の果実に含まれる「ソルビン
酸」は、殺菌効果が高くカビなどの増殖を抑える
為、植物添加剤として保存料に用いられる。
■ユリ(ティバ−)   ユリ科/球根植物/原
産:南アフリカ/ティバーは大輪の濃いピンクのユ
リ。「百合」をユリと読むのは、球根の鱗片が多数
集まっているため。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/87_1.jpg
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【秘書室】
■デンファレ(リバティーホワイト)   ラン科
/原産:インド・フィリピン/デンドロビウムの
中でも、特にデンドロビウム「ファレノプシス」と
いう野生種を親とした系統のものを、ファレノプ
シス系(通称デンファレ)と呼ぶ。「リバティホワ
イト」は、白べースにグリーンのストライプが入
った品種。
■ピンポン菊   キク科/多年草/原産:オ
ランダ/ピンポン玉のようにまん丸に咲く菊。
菊の中でも非常に花持ちが良く長く楽しめる。
菊=仏事のイメ−ジを変え、お祝用のアレンジ
メントやウェデイングブーケなどにも利用され
る。
■モンステラ   サトイモ科/多年草/原
産:熱帯アメリカ/《名前の由来》ラテン語のモ
ンストラム(異常・怪物)に由来/蔓性の植物
で切り込みや穴のあいた大きな葉が特徴。ハ
ワイアンキルトなどのモチーフによく利用され
る。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/87_2.jpg
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