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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2010.09.03

vol.91  − 沈思 −

9月、長月は夜長月の略とされています。福島では、夜、虫の音が戸外から聞こえてきます。昔は、夜の縁側が心持ち良く感じられるときです。
そして、この月は、女郎花(オミナエシ)や桔梗(キキョウ)といった花が代表です。
しかし、最近は盛夏の延長という感じがする程、様変わりです。着物は薄物で通さなければならない程です。

海にも異変です。秋は秋刀魚(サンマ)や魳(カマス)の季節です。
学生時代、下宿で七輪を借りて軒先でサンマをよく焼きました。ところが今や、サンマは高級魚です。

お盆の前後、いつも想い出す風景があります。それは、奥会津の旧会津西街道の国道沿いの家々の軒先で、多くの家が迎え火を焚いている風景です。この風景は今も受け継がれているのでしょうか。
いまでも、この風景を想い出すと不思議と心が落ち着きます。

先日、新幹線の車窓から、緑から黄色と多彩な色を呈している田圃に多数の白鷺(シラサギ)をみました。
背景と鳥の色の対照が鮮やかでした。初めての経験です。

         黄昏(たそがれ)に独(ひと)り立つ   仏堂の前
         地に満(み)つる槐(えんじゅ)の花   樹に満つる蝉(せみ)
                                          (白居易)
時々、庭に立ちこの雰囲気を味わっています。
この詩に代表されるように、秋は愁(うれい)の季節です。事実、愁は「秋」と「心」で構成されています。確かに、夕暮れ時、庭に立っているとこの気分に浸ることができます。

先日、新潟開催時には足を運べなかったので、東京での「奈良の古寺と仏像−會津八一のうたにのせて−」という特別展に行ってきました。
會津八一の教育者としての側面に以前から関心があっただけに、充分堪能しました。
「學規」の展示もあり、背筋が伸びました。
         學規
         ・ふかくこの生を愛すべし
         ・かへりみて己を知るべし
         ・学芸を以て性を養うべし
         ・日々新面目あるべし
                   秋艸堂(しゅうそうどう)主人

唐招提寺の「如来形立像」(にょらいぎょうりゅうぞう)は、いつ見ても見飽きることがありません。
今回初めて見た橘寺の「伝・日羅立像」(でん・にちらりゅうぞう)にも心惹かれました。
只、八一の歌の表示が小さくて、老人の目には苦行です。

夏休みが終わり、国内外で再び慌ただしい毎日が始まりました。
後半戦開始を告げる月でもあります。どんなに忙しくとも(「心を亡くす」と書くので、多分、こういう字を書くこと自体が自分を見失っているのかも知れません)、
暫し、庭に独り佇む、それだけの時間を持つことが大切だとしみじみと思える年齢になりました。


(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)

※編集註:今回は「今週の花」活け込み前の、海外出張出発直前に書き上げた原稿のため、お花についてのコメントがありませんことをご了承ください。
また、海外出張で学内不在のため、来週の「花だより」は休載させていただきます。

今週の花


【理事長室】
■栗   ブナ科/落葉高木/原産:中国・北
アメリカ・地中海沿岸/5〜6月頃に黄白っぽ
い穂状の芳香のある花が咲く。秋に実が成熟
するとイガが裂けて中から堅い実が現れる。
材は硬く耐久性があり腐りにくいので建築材
や家具、枕木などに利用される。
■ガマズミ   スイカズラ科/落葉低木/原
産:日本・中国・朝鮮/花は5〜6月頃に白い
小さな花を密集させ円盤状に開花。秋に真っ
赤に熟す果実は、非常に美しく観賞価値が高
い。実は甘酸っぱく、果実酒などにも利用され
る。
■ピンポン菊   キク科/多年草/原産:オ
ランダ/ピンポン玉のようにまん丸に咲く菊。
菊の中でも特に花持ちが良く、長く楽しめる。
今回は黄色を使用、他に白、ピンク、グリー
ン、茶色などあり。
■リューカデンドロン(ロリオロム)   ヤマモ
ガシ科/原産:南アフリカ/《名前の由来》ギ
リシャ語で白(リューカ)と木(デンドロン)から
/「ロリオロム」は黄緑色の爽やかな色合い。
他に、苞葉が赤く色づく「サファリサンセット」や
シルバー毛に覆われた「アージェンタムシルバ
ー」などあり。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/911.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)




【秘書室】
■トルコギキョウ(アンバーダブルワイン)   
リンドウ科/多年草/原産:北アメリカ/アン
バーシリーズは琥珀を思わせるヨーロピアン調
のシックな色合い。独特な質感の品種で花傷
みが少なく長く楽しめる。「ダブルワイン」は本
年から販売開始された新種で、ボルドー色の
八重咲き。
■ワレモコウ   バラ科/多年草/茶色の実
のように見える部分が花序。小さな花の集ま
りで花弁が無いのが特徴。日本全土の山野に
自生し、7〜10月頃に咲く。根はタンニンを多
く含み、止血薬などに用いられる。
■ミスカンサス   ユリ科/多年草/白いラ
インの入ったしなやかな細長い葉。耐寒性・耐
陰性が強く、非常に丈夫な植物。束ねて使用
したり、カールさせたり、色々楽しめる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/912.jpg
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