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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.97 − 残照 −
10月20日(旧暦9月13日)は十三夜、
朧月夜のように夜霧にかすんでいましたが、悪天候の中、その姿をみせてくれました。
今、庭には木や草花が見当たりません。山茶花(サザンカ)の開花が待たれているところです。
室内では、茶の木の花や紫式部の実が一輪挿しで色彩を提供してくれています。
20日の新聞紙上には葉ボタンの写真が掲載されており、彩(いろど)りを添えています。
(福島民報社ホームページより http://www.minpo.jp/view.php?pageId=4144&mode=0&classId=0&blockId=9738711&newsMode=article
※3ヵ月経過後(1月20日以降)はリンク切れの可能性がありますことをご了承ください)
秋の夕暮れ、山間(やまあい)の道を戻るとき、影濃く影絵となっていく遠くの山を背景に、両脇に生い茂っている芒(ススキ)が残照を受けて光っています。
この時季、その土地の、ある一瞬にしか出会えないこの情景は、古来、我が国の人々の心を揺さぶってきた代表的な詩情溢れる一コマです。
山は暮(くれ)て野は黄昏(たそがれ)の芒哉(すすきかな)
与謝蕪村
画家としても秀でていた、絵をみるような蕪村の句が、前述した情景をこの一句で集約してしまって余す所がありません。この情景は、「日本の原風景」の一つではないでしょうか。
この時季は、また、茸(キノコ)の季節でもあります。
茸は、何故、代表的な茸である松茸(マツタケ)、舞茸(マイタケ)、あるいは椎茸(シイタケ)が、松キノコ、舞キノコ、そして椎キノコとは言わないのでしょうか。誰でも一度は考える疑問です。
この答が分かる本が最近出版されています(木村紀子「原始日本語のおもかげ」)。このような言葉から、茸は、昔から我が国で食されていたことが分かります。
一方、一人の人間の愚かな行為が、先人の知恵や工夫を台無しにしてしまう場合もあります。
海外で講演した後、約20年前に訪れたことのあるホテルを再訪しました。このホテルのプールは、プールからの視線が、プールの縁(ふち)とその前面に広がる海が連続するように設計されており、その斬新なデザインが世界を驚かせました。
今回の訪問で、プールの側面に設えられていたのと同じデザインの柵が海とプールを遮るように設けられているのをみて愕然としました。二度にわたる経営者の交代、新館なるものを建て増しもして、結果的に海外によくある一見豪華にみえる“fake”なリゾートホテルに成り下がっていました。
経営のトップが代わると、ホテル創設時での美的感覚を含む設計思想までが失われる、という現実をみせつけられました。我が身の生き方や組織のあり方が問い掛けられているような気がしました。
今週の花材は、執務室も秘書室も“紅葉”の再現です。
それぞれ趣は違いますが、各部屋の役割に合っています。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
朧月夜のように夜霧にかすんでいましたが、悪天候の中、その姿をみせてくれました。
今、庭には木や草花が見当たりません。山茶花(サザンカ)の開花が待たれているところです。
室内では、茶の木の花や紫式部の実が一輪挿しで色彩を提供してくれています。
20日の新聞紙上には葉ボタンの写真が掲載されており、彩(いろど)りを添えています。
(福島民報社ホームページより http://www.minpo.jp/view.php?pageId=4144&mode=0&classId=0&blockId=9738711&newsMode=article
※3ヵ月経過後(1月20日以降)はリンク切れの可能性がありますことをご了承ください)
秋の夕暮れ、山間(やまあい)の道を戻るとき、影濃く影絵となっていく遠くの山を背景に、両脇に生い茂っている芒(ススキ)が残照を受けて光っています。
この時季、その土地の、ある一瞬にしか出会えないこの情景は、古来、我が国の人々の心を揺さぶってきた代表的な詩情溢れる一コマです。
山は暮(くれ)て野は黄昏(たそがれ)の芒哉(すすきかな)
与謝蕪村
画家としても秀でていた、絵をみるような蕪村の句が、前述した情景をこの一句で集約してしまって余す所がありません。この情景は、「日本の原風景」の一つではないでしょうか。
この時季は、また、茸(キノコ)の季節でもあります。
茸は、何故、代表的な茸である松茸(マツタケ)、舞茸(マイタケ)、あるいは椎茸(シイタケ)が、松キノコ、舞キノコ、そして椎キノコとは言わないのでしょうか。誰でも一度は考える疑問です。
この答が分かる本が最近出版されています(木村紀子「原始日本語のおもかげ」)。このような言葉から、茸は、昔から我が国で食されていたことが分かります。
一方、一人の人間の愚かな行為が、先人の知恵や工夫を台無しにしてしまう場合もあります。
海外で講演した後、約20年前に訪れたことのあるホテルを再訪しました。このホテルのプールは、プールからの視線が、プールの縁(ふち)とその前面に広がる海が連続するように設計されており、その斬新なデザインが世界を驚かせました。
今回の訪問で、プールの側面に設えられていたのと同じデザインの柵が海とプールを遮るように設けられているのをみて愕然としました。二度にわたる経営者の交代、新館なるものを建て増しもして、結果的に海外によくある一見豪華にみえる“fake”なリゾートホテルに成り下がっていました。
経営のトップが代わると、ホテル創設時での美的感覚を含む設計思想までが失われる、という現実をみせつけられました。我が身の生き方や組織のあり方が問い掛けられているような気がしました。
今週の花材は、執務室も秘書室も“紅葉”の再現です。
それぞれ趣は違いますが、各部屋の役割に合っています。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■枇杷 バラ科/常緑高木/原産:中国
/《名前の由来》果実または葉が楽器の琵琶
の形に似ていることから/11月頃に小さな白
い花が咲き、翌年初夏に果実がなる。今回は
開花前の蕾の状態を使用。
■ユリ(モンテズマ) ユリ科/球根植物/
山百合をもとに改良されたオリエンタルハイブ
リット系。オリエンタルハイブリットの特徴は芳
香のある大輪咲き。「モンテズマ」は濃赤色。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/971.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)
■枇杷 バラ科/常緑高木/原産:中国
/《名前の由来》果実または葉が楽器の琵琶
の形に似ていることから/11月頃に小さな白
い花が咲き、翌年初夏に果実がなる。今回は
開花前の蕾の状態を使用。
■ユリ(モンテズマ) ユリ科/球根植物/
山百合をもとに改良されたオリエンタルハイブ
リット系。オリエンタルハイブリットの特徴は芳
香のある大輪咲き。「モンテズマ」は濃赤色。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/971.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)
【秘書室】
■カラー(ホットショット) サトイモ科/球根
植物/原産:南アフリカ/《名前の由来》メガホ
ン状の苞がYシャツの襟に似ていることから/
苞の中心にある棒の部分が花序。「ホットショ
ット」は黄〜橙のシックな色合い。
■オンシジュウム(ハニーエンジェル) ラ
ン科/原産:中南米/《名前の由来》ギリシャ
語で“コブ”を意味する語「オンコス」から。花弁
にコブのような隆起があることによる/無数の
蝶が飛ぶような花姿。「ハニーエンジェル」は
花弁に斑の入らない綺麗な花色。
■ドウダンツツジ ツツジ科/落葉低木/
原産:日本/花期は4〜5月頃で、スズランの
ような小さな白い花が咲く。丈夫で育てやす
く、生垣などにも利用される。新緑、花期、紅
葉と年間を通して楽しめる。今回のものは紅葉
の姿。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/972.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)
■カラー(ホットショット) サトイモ科/球根
植物/原産:南アフリカ/《名前の由来》メガホ
ン状の苞がYシャツの襟に似ていることから/
苞の中心にある棒の部分が花序。「ホットショ
ット」は黄〜橙のシックな色合い。
■オンシジュウム(ハニーエンジェル) ラ
ン科/原産:中南米/《名前の由来》ギリシャ
語で“コブ”を意味する語「オンコス」から。花弁
にコブのような隆起があることによる/無数の
蝶が飛ぶような花姿。「ハニーエンジェル」は
花弁に斑の入らない綺麗な花色。
■ドウダンツツジ ツツジ科/落葉低木/
原産:日本/花期は4〜5月頃で、スズランの
ような小さな白い花が咲く。丈夫で育てやす
く、生垣などにも利用される。新緑、花期、紅
葉と年間を通して楽しめる。今回のものは紅葉
の姿。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana_img/972.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)