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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2010.11.26

vol.102  − 時空 −

この時季、大気が澄みきっているせいか、空が高く感じられます。
深夜、空を見上げると、冷気大気に満ち、静寂(しじま)の中、北斗七星やオリオン座を輝かせている冷涼たる月の光が、庭のすべてを青白く染めています。

まだ薄暗い早朝、通勤時に、道路に面した垣根に山茶花(サザンカ)を今年初めて見つけました。
「夜咄の茶事(よばなしのちゃじ)」のような雰囲気をそこに感じ、勤務に向かって逸る(はやる)気持ちを静めてくれました。

先日、福島に初霜が降りました。大学周辺は薄化粧したように白く、真にこの詩の世界です。
       小倉百人一首
         心あてに折らばや折らむはつ霜の
         置きまどはせる白菊の花
                                      (凡河内躬恒〔おおしこうちのみつね〕)
暁方(あかつきがた)の食事は、庭を眺め、煎茶を喫しながら摂るので、
         霜雪の暁ごとに起きなれて
         雲の香啜る(すする)命なりけり
                                      (上田秋成)
この歌の心象が、この歳になると少しわかります。

11月は、三島由紀夫が自裁した月です(1970年11月25日)。私が大学在学中の事件でした。
今でも、あの時の世の中の衝撃は、昨日のことのように覚えています。
皮肉にも「日本はなくなって、無機的な、からっぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜け目がない、或る経済的大国が極東の一角に残るのであろう」(1970年(昭和45年)7月7日、産経新聞)という彼の事件直前の予言が、今、現実となって眼前に展開されています。

三島由紀夫とは対極の位置にいたと捉えられている司馬遼太郎も、晩年は我が国の将来を憂いていました。

もう一人、我が国の伝統の大切さを説いていた保田與重郎(やすだよじゅうろう)も、戦後は不遇を託(かこ)っていたようですが、今の我が国を予見していたように思います。

彼等は、どのように今の我が国を予見出来たのでしょうか。
感性の鋭さだけなのでしょうか、あるいは我々の知り得ない何かを彼等は持っていたのか…。
少なくとも、これら3人の作家は、日々の移ろいの中の何かをみて、同じ考えを持ったのでしょうか。
そうだとしたら、それは何であったのでしょうか…。

今週の花材は、執務室は透明感のある秋を、秘書室は、穏やかな秋を演出しています。


(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)

今週の花


【理事長室】
■ムラサキモドキ   クマツヅラ科/
落葉低木/別名「オオムラサキシキブ」
/ムラサキシキブの変種。6〜8月頃に
花が咲き、10〜11月に綺麗な紫色の
実を付ける。「ムラサキモドキ」は別名
の通り、ムラサキシキ
ブを一回り大きくしたような花姿。
■ゴアナクロー   茎が黒と緑の斑点
で覆われる。葉がクルクルとカールする
独特のグリーン。
■ピンポン菊   キク科/多年草/原
産:オランダ/ピンポン玉のようにまん
丸に咲く。切花の中で花持ちが良い菊の
中でも、特に花持ちが良く長く楽しめる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1021.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

【秘書室】
■モカラ(ゴールドナゲット)   ラン科/原産:東南アジア/バン
ダ、アラクニス、アスコケントルムの3種類の蘭を交配した人工種。
南国らしい鮮やかな花色の品種が豊富。「ゴールドナゲット」は落ち
着いたオレンジ色の品種。
■スィートピー(トトロオレンジ)   マメ科/一年草/原産:シチ
リア島/蝶のようなかわいい花姿。葉先が巻きヒゲになり、他に絡
まって成長する蔓性植物。甘い香りのする春の花。
■ピンポン菊   (理事長室と同花材)こちらは黄色を使用。
■黄金(おうごん)ミズキ   ミズキ科/落葉低木/日本に自生す
る白玉水木(シラタマミズキ)の園芸品種。晩秋から春先にかけて
枝が黄緑色に輝く。花期は5〜6月頃で白花が咲き、夏に白実を付
ける。
※拡大写真http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1022.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

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