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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2011.05.20

vol.126  − 花曇 −

花曇り、春雨(しゅんう)と、桜の宴の後のように心悲(うらがな)しい気持ちになってしまいます。

通勤路、野生の藤の大木が雨に濡れて、緑を背景に薄紫の存在をあちこちで主張しています。
私は雨が好きで、出窓や縁側に座って屋根瓦を打つ雨の音に聞き入っていたものです
  (vol.49 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=74)。
今も、雨のCDを執務室に持ち込んでBGMにしています。

私の細やか(ささやか)な望みは、根来(ねごろ)の大盆に気に入った酒やワインを、“中世の黒”を再現した輪島塗の献菓台黒塗に酒の肴を載せ、春雨の中、弟子や支えてくれている事務の方々と酒を酌み交わすことです(彼等は嫌がりますが…)。

         酒ヲ置イテ友生ヲ宴シ
         高会シテ疎櫺(れい)ニ臨ム。
         芳俎(そ)嘉肴ヲ列(つら)ネ
         山罍(らい) 青春ヲ満タス。
                                (宋 孔欣「置酒高楼上」)

こんなことを考えると、心が和みます。

尊敬する女性科学者が、友人からの情報として、頬が緩む文献を教えてくださいました。
それは、「ワインの抗酸化作用はガンマ線照射によるcell deathを防御する」というのです(ACS Medicinal Chemistry Letters 2011,2,270−274)。
酒を飲む口実が出来ました。

芍薬(シャクヤク)の美しさを受け入れられる年齢になりました。
牡丹(ボタン)や芍薬は、菊と同様に、姿、形、そして色が完璧、かつ華麗で、反発すら感じていました。絶頂期の中国磁器のように、“完全な美”に属するからです。“雑草”の僻み(ひがみ)でしょうか…。

芍薬の絵といえば、「花卉摺絵新古今和歌巻」木版金銀泥摺(MOA美術館)の背景に、芍薬が蕾での状態で描かれているのをみたことがあります。
よくみないと見逃してしまいそうです。蕾での描写は、光悦の美学でしょうか。

5月20日は、リンドバーグが大西洋単独横断飛行に成功した日です(1927)。交通手段が、海から空へと転換した歴史的な出来事です。
彼は、アメリカが生んだヒーローです。後に、彼が子供の誘拐事件に巻き込まれました。最近、いくつかの本(グレゴリー・アールグレン、スティーブン・モニアー「リンドバーグの世紀の犯罪」、ルドヴィック・ケネディ「誰がリンドバーグの息子を殺したか」)が出版され、真犯人は彼ではないかと指摘されています。
米国の近・現代史が輝かしいだけ、その裏の闇が深いのでしょう。

今週の花材は、執務室は山ツツジです。瞬時に、小学生のとき、父親に連れられて行った矢祭山にタイムスリップできました。
秘書室は、薄緑で芍薬の完璧さを抑えて優しさが出たアレンジです。

(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)

今週の花


【理事長室】
■山ツツジ   ツツジ科/半落葉低木/原
産:日本/山ツツジの仲間はアジア東部に約9
0種分布し、うち17種が日本に自生。花期は
4〜6月で朱赤色の花が咲き、初夏の山を彩
る古くから栽培され、日本人に親しまれる植物
の一つ。公園樹、生垣などにも利用される。山
ツツジの葉は春に芽吹いて秋に落葉する「春
葉」と、夏から秋にかけて芽吹き越冬する「夏
葉」がある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1261.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

【秘書室】
■芍薬   ボタン科/原産:中国〜朝鮮/花径
が20cmにもなる豪華で存在感のある花。
一重、八重、万重咲きなど品種も豊富。中国から
薬用として渡来。根は漢方薬として鎮痛剤や止
血剤などに利用。江戸時代に園芸用として観賞
されるようになる。牡丹とそっくりだが、牡丹は樹
木で芍薬は草。
■グリーントリュフ   ナデシコ科/多年草/原
産:ヨーロッパ東南部/ナデシコの一種で、マリ
モや芝を連想させる花。フサフサした花の部分
は、花弁・雄しべ・雌しべが変化したもの。非常
に花持ちが良く、長期間楽しめる。
■トルコギキョウ(リネーションピンクピコティ)
リンドウ科/一年草/原産:北アメリカ/品種が
豊富で祝花仏花ともに人気のある花。近年は矮
性種(わいせいしゅ)がつくられ、花壇や鉢植え
でも楽しめる。「リネーション」シリーズは中輪八
重咲き品種。「ピンクピコティ」は白色に桃色覆輪
(ふくりん)。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1262.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

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