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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2011.07.01

vol.130  − 異邦の空 −

朝まだき、外に目を転じると朝霧がビルの谷間を取り巻いて埋め、鳥の声に交じり梵鐘の音が耳に届いてきます。
この湿潤さと静寂さを際立たせる音、帰国を改めて実感しました。
福島も梅雨に入っていました。沿線には紫陽花(アジサイ)や栗の花が目につきます。トウモロコシも姿をみせています。

心身のリフレッシュと学会主催者である友との友情に感謝する為に、北欧に行ってきました。
北欧では、窓を打つ不規則な雨の音で目を覚まし、一日で肌寒さ、暖かさ、そして霧雨と、真に「一日の中に四季がある」でした。
私は、我儘を聞いてもらい、学会の合間は寝ることに専念しました。お蔭で指先が温かくなりました。

何軒かの花屋を覗くと、芍薬(シャクヤク)、ダリア、紫の矢車草、薔薇(バラ)、ベロニカ(虎の尾)、ラベンダー(らしきもの)、石楠花(シャクナゲ)、ピンクの紫陽花が店先を飾っていました。

学会の合間を縫って、友が会食の席を設けてくれ、私のシャンパン好き(依存症ではありません!)に合わせて、ポール・ロジェ(2000)を用意してくれていました。
出逢いを大切にすること、それを継続する為に絆を強める努力をするという自分なりの哲学が間違っていないことを実感した瞬間でした。
彼と知り合った頃(1982年)に流行って今も歌い継がれている「素直になれなくて(シカゴ)」(1982年)や「雨を見たかい(CCR)」(1971年)が、会食後ずっと脳裡に流れていました。

中継地のロンドンに暫し滞在して、「雨、蒸気、速度−グレイト・ウエスタン鉄道」(ターナー)と「フォリー=ベルジェール劇場のバー」(マネ)を鑑賞してきました。前者の空気の描写、後者の絵の大きさ、構図の意図的な作り変え、そして華やかな場とは裏腹の虚無的な女性の表情が印象的でした。
鑑賞後は、オールド・トム・ジンを使った有名なドライマティーニを楽しみました。緊張がすっかり解けたせいか、立ちくらみする程指先が温かくなりました。

鉄路の外に拡がる田圃(たんぼ)の緑の草原を愛で、部屋にはバラを設(しつら)え、心に出来た余裕が維持できるようにしました。
私が一生償っていかなければならないある患者さんに、季節毎にいつも持って見舞いに行く淡紫のバラ(ブルームーン)を自宅に飾るのは初めてです。

帰国後、すぐに国内出張しました。
空港での整備員の離陸時の手を振り、頭を下げての挨拶、あれは確かJALの事故(1985年)以来の習慣だったと思います。このような振る舞い(所作)は、この時季の湿潤な空気とともに日本人の文化の根幹に流れている何かを象徴しているような気がします。

今週の花材は、執務室はゴッホの「ひまわり」を連想させます。
秘書室は、夏の到来を告げているようです。



(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)


今週の花


【理事長室】
■スモークツリー   ウルシ科/落葉高木/
原産:中国〜南ヨーロッパ/別名「煙の木」
「霞の木」/煙がモクモクとしているような姿が
特徴。独特のフワフワは花後に花序が伸びた
もの。花自体はあまり目立たず、花後の姿を
観賞。
■ヒマワリ(サンリッチマンゴー)   キク科/
一年草/原産:北アメリカ/もっとも有名な
夏の代表花。太陽のような花姿で、「サンフラ
ワー」の英名をもつ。サンリッチシリーズは花
粉の出ない品種。
■ユリ(コンスタンタ)   ユリ科/球根植物
/オリエンタルハイブリッド系の品種。オリエン
タルハイブリッド系は大きく優雅な花姿と芳香
が特徴。「コンスタンタ」は白色の大輪咲き。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1301.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

【秘書室】
■キングプロテア(ビーナス)   ヤマモガシ科/半
耐寒性低木/原産:南アフリカ/満開時は直径30
cmにもなる大きな花。存在感のある個性的な花姿
が魅力。南アフリカ共和国の国花。
■ドラセナ(コーディラインカプチーノ)   リュウゼツ
ラン科/原産:熱帯アジア・熱帯アフリカ/ドラセナ
は日本で出回る観葉植物の代表種。昔ドラセナ属
に分類されていた為「ドラセナ」の名で流通(正式に
は「コルジリネ」)。
■ヒペリカム   オトギリソウ科/落葉低木/原
産:中国/花期は5〜7月頃で黄色の花が咲く。切
花では花の観賞価値はなく、花後の実を観賞するた
めに流通。赤実の他、淡いピンク〜暗赤、茶色やグ
リーンもある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1302.jpg
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