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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2011.09.22

vol.141  − 波紋 −

吾亦紅(ワレモコウ)と小菊、そして撫子(ナデシコ)を投げ入れて秋を実感しています。

蜻蛉返り(とんぼがえり)での東京往復、西日を避けた座席を求めました。
何もせず外の景色をみていました。和らかい光を放つ夕陽が稜線にかかるところでした。
この陽光が、黄緑色の広大な田圃(たんぼ)の稲穂の上に、ほぼ真横から降り注ぎ、一時(いっとき)、セピア色の写真をみるような懐かしさを感じました。
西をみれば、根来(ねごろ)の日の丸盆のような朱の太陽(vol.20、56、88)、東には新幹線の高架の足長おじさんのような長い影、手先が温かくなりました。
   (vol.20 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=37
   (vol.56 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=82
   (vol.88 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=114

         草山に膝をいだきつまんまろに
         真赤き秋の夕日をぞ見る
                          (若山牧水)

今度の震災、哀しみと寂しさを抱(かか)えて成長していかなくてはならない子供が増えたことに思いが至りました。
突然の震災、事故、そして自殺で親を失ってしまった孤児達に、自分にもっと出来ることはあるかと考えているうちに、列車は福島盆地に到達してしまいました。

人間は野心や嫉妬、そして潔さや清廉の二面性を有しています。
だからこそ、目頭が熱くなる話にも出会います。
1982年、ボストンでのポトマック川への飛行機墜落で、ロープを女性に2度も手渡して力尽きた男性、東日本大震災での津波襲来時に自らの命を顧みずに住人を避難させた人々、そして先日の紀伊半島での豪雨で祖母を助けて自らを犠牲にした少年(産経新聞 産経抄 平成23年(2011)9月9日)、
これらの人々を思う時、熱い想いが胸の奥から溢れます。

9月18日、乃木希典(のぎ・まれすけ)夫妻の葬儀が行われた日です。
彼は13日の明治天皇の大葬儀(たいそうぎ)に、妻・静子とともに明治天皇に殉じて自刃(じじん)しています。
森鴎外や夏目漱石などがこの事件を切っ掛けに著作を残しています。

彼には、“棺を蓋(おお)いて事定まる”が、当時も、今も、当て嵌(は)まりません。
彼の生涯を俯瞰(ふかん)してみると、軍人の理想を自分なりに定義して、その鋳型に自分を嵌め込むことに努力したのではないのかという思いがします。

国家と日本人が新しい時代を感覚として共有していたのもここまでです。その後40年弱で崩壊してしまいました。
この過程については、“世間”の視点で考察した面白い本があります(黒岩比佐子「日露戦争  勝利のあとの誤算」)。

今週の花材からは、執務室、秘書室いずれも実りの秋の後の穏やかさが醸しだされています。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)

今週の花


【理事長室】
■UFOピーマン   ナス科/原産:南アメリカ/《名前の
由来》実の形がUFOに似ていることから/正式名称は「カ
プシクム・バッカツム」。一枝にいくつも実がぶら下がり、UF
Oがゆらゆら飛んでいるような個性的な姿。トウガラシの仲
間で、ハバネロ級の辛さ。
■ピンポン菊   キク科/多年草/ピンポン玉のようにま
ん丸に咲く可愛い菊。非常に花持ちが良く、長期間観賞で
きる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1411.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

【秘書室】
■りんどう(紅竜)   リンドウ科/多年草/原産:アフリカ/《名前の由
来》根が薬になり、竜の胆のように苦いことから(竜胆:りんどう)/日本
の秋を代表する花で世界に約400種。「紅竜」はピンク色の品種。
■アンスリュウム(プレビア)   サトイモ科/常緑多年草/原産:中南
米/ロウ細工のようなツヤがあり、造花と見間違うような花。花弁のよう
に見える部分は苞で、中心の棒状が花序。苞を観賞するため、暑さにも
強く非常に長く楽しめる。「プレビア」は薄紫色。
■紫稲   イネ科/観賞用に栽培されている、穂が紫色の稲。ドライフ
ラワーにしても綺麗に色が残り、生花・ドライともに人気。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1412.jpg
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