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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.142 − 薄明 −
この時季、瀬音で目を覚まし、鳥の鳴き声で起床します。外は暗く、灯りが必要です。テラスの夜露、朝霧、秋の深まりを実感します。
夏から秋、時は連続しているにもかかわらず、季節は確実に秋になっています。
何処(いずこ)より 秋風は至る
蕭蕭(しょうしょう)として 雁の群を送る
朝来(ちょうらい) 庭樹に入る
孤客 最も先に聞く
(劉禹錫 「秋風引」)
白い竜胆(リンドウ)と緑、対比が鮮やかです。
このところ、帰宅して着物に着替えても心が素になるまでに時間がかかっています。庭を愛(め)で、本に向かい、音楽を聴いたりしますが、心身の緊張がなかなか解けません。
野分晴(のわきばれ)の下、車窓からの見渡す限りの黄金色の田圃(たんぼ)は、真に野分跡(のわきあと)そのものです。4、5日後に通っても同じでした。
倒れてしまった実った稲穂は、水抜きをして起こさないと芽が出てしまいます。刈り取る人がいないのか、刈っても売れないからなのか、このままでは米も稲藁も朽ち果ててしまいます。
道傍の蕎麦畑の白い花、今年は寂寥感を感じてしまいます。
秋桜(コスモス)の群生も風に戦(そよ)いで鳴いているようにみえます。
お彼岸が来てしまいました。
子供の頃、おはぎ(ぼた餅)を作ってもらいました。私は、同時に作ってもらった十念(じゅうねん)が絡まっているのが好きでした。後年、胡麻が買えなくて十念を使っていたと聞かされた時、その頃の情景が脳裡を駆け巡りました。十念は、今では鳥の餌として売っているとのことでした。
何故、彼岸におはぎ(ぼた餅)を食べるのか。小豆の赤色は邪気を払い、ぼた餅は牡丹に掛けて春の呼び名、おはぎが萩に掛けて秋の呼び名と知り、古人の粋に脱帽です。
9月24日(1877年)、西郷隆盛が自刃した日です。ここに武士の世が終わったことをみます。サムライのしがらみすべて引っ被る、覚悟の後半生(こうはんせい)です。
9月22日(1868年)、会津藩が落城しました。その後の苛酷な運命は、多くの書物で世に知られています。
今という危機の時代、「ある明治人の記録 会津人柴五郎の遺書」(石光真人 編著)は一読の価値があります。
明治になってからの旧会津藩の人々の烈(はげ)しい生き方は、私には今を生きる縁(よすが)です。
「鬼の官兵衛」と謳(うた)われた佐川官兵衛、秋月悌次郎(中村彰彦「落花は枝に還らずとも」)[vol.63、113]、そして山川兄弟姉妹(山川浩、健次郎、二葉、大山捨松)、東海散士(「佳人之奇遇」の作者)、
若松賤子(小公子の訳者)、日本のナイチンゲールと謳われた瓜生岩子など、時代が、あるいは境遇が人を育てたのでしょうか。
(vol.63 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=89)
(vol.113 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=141)
今週の花材は、執務室は典雅、秘書室は清楚を、花器と一体として醸し出しています。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
夏から秋、時は連続しているにもかかわらず、季節は確実に秋になっています。
何処(いずこ)より 秋風は至る
蕭蕭(しょうしょう)として 雁の群を送る
朝来(ちょうらい) 庭樹に入る
孤客 最も先に聞く
(劉禹錫 「秋風引」)
白い竜胆(リンドウ)と緑、対比が鮮やかです。
このところ、帰宅して着物に着替えても心が素になるまでに時間がかかっています。庭を愛(め)で、本に向かい、音楽を聴いたりしますが、心身の緊張がなかなか解けません。
野分晴(のわきばれ)の下、車窓からの見渡す限りの黄金色の田圃(たんぼ)は、真に野分跡(のわきあと)そのものです。4、5日後に通っても同じでした。
倒れてしまった実った稲穂は、水抜きをして起こさないと芽が出てしまいます。刈り取る人がいないのか、刈っても売れないからなのか、このままでは米も稲藁も朽ち果ててしまいます。
道傍の蕎麦畑の白い花、今年は寂寥感を感じてしまいます。
秋桜(コスモス)の群生も風に戦(そよ)いで鳴いているようにみえます。
お彼岸が来てしまいました。
子供の頃、おはぎ(ぼた餅)を作ってもらいました。私は、同時に作ってもらった十念(じゅうねん)が絡まっているのが好きでした。後年、胡麻が買えなくて十念を使っていたと聞かされた時、その頃の情景が脳裡を駆け巡りました。十念は、今では鳥の餌として売っているとのことでした。
何故、彼岸におはぎ(ぼた餅)を食べるのか。小豆の赤色は邪気を払い、ぼた餅は牡丹に掛けて春の呼び名、おはぎが萩に掛けて秋の呼び名と知り、古人の粋に脱帽です。
9月24日(1877年)、西郷隆盛が自刃した日です。ここに武士の世が終わったことをみます。サムライのしがらみすべて引っ被る、覚悟の後半生(こうはんせい)です。
9月22日(1868年)、会津藩が落城しました。その後の苛酷な運命は、多くの書物で世に知られています。
今という危機の時代、「ある明治人の記録 会津人柴五郎の遺書」(石光真人 編著)は一読の価値があります。
明治になってからの旧会津藩の人々の烈(はげ)しい生き方は、私には今を生きる縁(よすが)です。
「鬼の官兵衛」と謳(うた)われた佐川官兵衛、秋月悌次郎(中村彰彦「落花は枝に還らずとも」)[vol.63、113]、そして山川兄弟姉妹(山川浩、健次郎、二葉、大山捨松)、東海散士(「佳人之奇遇」の作者)、
若松賤子(小公子の訳者)、日本のナイチンゲールと謳われた瓜生岩子など、時代が、あるいは境遇が人を育てたのでしょうか。
(vol.63 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=89)
(vol.113 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=141)
今週の花材は、執務室は典雅、秘書室は清楚を、花器と一体として醸し出しています。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■ツルウメモドキ ニシキギ科/落葉蔓性
植物/原産:日本・中国/《名前の由来》蔓性
でウメモドキに似ていることから/春に淡緑色
の小さな花が咲き、秋に実を付ける。実が熟
すと皮が裂け、赤橙色の種が現れる。花期よ
りも落葉後の実姿が美しい。
■オンシジュウム(ゴアラムゼイ) ラン科
/原産:中南米/蝶が舞い飛んでいるような
花姿。熱帯・亜熱帯地域に約400種が分布す
る蘭。黄色の花弁に斑が入るのが特徴。
■アンスリュウム(みどり) サトイモ科/
常緑多年草/原産:中南米/ロウ細工のよう
なツヤがあり、造花と見間違うような花。花弁
のように見える部分は苞で、中心の棒状が花
序。苞を観賞するため、暑さにも強く非常に長
く楽しめる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1421.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)
.
■ツルウメモドキ ニシキギ科/落葉蔓性
植物/原産:日本・中国/《名前の由来》蔓性
でウメモドキに似ていることから/春に淡緑色
の小さな花が咲き、秋に実を付ける。実が熟
すと皮が裂け、赤橙色の種が現れる。花期よ
りも落葉後の実姿が美しい。
■オンシジュウム(ゴアラムゼイ) ラン科
/原産:中南米/蝶が舞い飛んでいるような
花姿。熱帯・亜熱帯地域に約400種が分布す
る蘭。黄色の花弁に斑が入るのが特徴。
■アンスリュウム(みどり) サトイモ科/
常緑多年草/原産:中南米/ロウ細工のよう
なツヤがあり、造花と見間違うような花。花弁
のように見える部分は苞で、中心の棒状が花
序。苞を観賞するため、暑さにも強く非常に長
く楽しめる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1421.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)
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【秘書室】
■アマリリス(ベラドンナリリー フェバリット) ヒガン
バナ科/球根植物/原産:南アフリカ/「ベラドンナリリ
ー」のみがヒガンバナ科アマリリス属に分類される本当
のアマリリス。一般的にアマリリスとして流通している
花はヒガンバナ科ヒッペアストラム属。ユリに似た花を
一茎に3〜4輪つける。「フェバリット」はエレガントな白
色と芳香が楽しめる。
■ミスカンサス ユリ科/白いラインの入ったしなや
かな細長い葉。耐寒性・耐陰性が強く、非常に丈夫な
グリーン。しなやかさを活かし、束ねたりカールさせたり
と色々利用できる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1422.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)
■アマリリス(ベラドンナリリー フェバリット) ヒガン
バナ科/球根植物/原産:南アフリカ/「ベラドンナリリ
ー」のみがヒガンバナ科アマリリス属に分類される本当
のアマリリス。一般的にアマリリスとして流通している
花はヒガンバナ科ヒッペアストラム属。ユリに似た花を
一茎に3〜4輪つける。「フェバリット」はエレガントな白
色と芳香が楽しめる。
■ミスカンサス ユリ科/白いラインの入ったしなや
かな細長い葉。耐寒性・耐陰性が強く、非常に丈夫な
グリーン。しなやかさを活かし、束ねたりカールさせたり
と色々利用できる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1422.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)