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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.144 − 車窓 −
10月12日、車窓のブラインドを開け放ったら、ビル群の上に小さめの満月を認めました。
ビルやネオンと群青の空を背景にした満月、近代の美の一つです。月齢表をみると最も遠い距離ゆえに小さくみえたのです。
この時季、山裾や田圃の余白に旧(ふる)い墓石群が目につきます。彼岸花(曼珠沙華)の鮮やかな朱が周りを彩っているからです。
昼下がりの和らかな陽光の下、静寂の中に佇んでいるこの光景は、位置取り、花の選択や配置など、先人の温かさや知恵を感じます。
立ち寄ったホテルでみたナナカマド、山百合が脇役です。赤と白の対比、典雅です。
室内ではブラックダリア(ミステリー小説のタイトルとしても有名)の落ち着きと秋桜(コスモス)の軽みの対比を楽しんでいます。
久し振りに夜汽車に乗りました(vol.59、65、96)。
線路の継ぎ目からの正確なリズムの音を背景に、乗客の受容、車内の静寂さ、今、殆どないのは何故でしょう。
(vol.59 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=85)
(vol.65 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=91)
(vol.96 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=124)
車内の明るさ、光源の色、楽しむ飲食、パソコンやゲームをしている乗客などが違います。勿論、駅舎の佇まい、駅弁、列車の速度、レールの構造、そして沿線風景などに劇的な変貌もあります。
この変化は、便利さや豊かさと引き換えに失ったものです。「何かを得ようとすれば何かを失わなければならない」はここでも真実です。
かの旅の夜汽車の窓に
おもひたる
我がゆくすゑのかなしかりしかな
(石川啄木)
私は、この歌が実感としてわかる最後の世代です。
窓に写る、険しさや徒労感、これが自分かとたじろいだ経験は、誰でも持っているのではないでしょうか。
鉄道の旅で失ったものがもう一つあります。それは“別離”の光景です。
以前のプラットホームには“別れ”がみられました。昔の駅は、幼心にも、人生で大切な何かを教えてくれていたように思います。少し大袈裟に言えば、“人生の教室”のようなところでした。
列車の窓が開かなくなったこと、距離時間が短縮したこと、それに伴って往来が容易になったこと、あるいは旅先の人情や慣習を体験できなくなったことなど…。
ここでも仕事や時間の効率化と引き換えに失ったものの大きさに気付かされます。
仕事を離れて、当て所(あてど)なく地方の在来線に乗れば、昔味わった感覚を再び味わえるのでしょうか。
もはや叶わないことがわかっているからこそ愛おしいのではないでしょうか。
近くは山頭火や尾崎放哉、旧(ふる)くは西行や芭蕉、自分では出来ないことをしている彼等に、人々が憧れを抱く理由は、ここにあるのかも知れません。
今週の花材は、執務室は秋の静謐を、秘書室は実りの豊かさを提示しているようです。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
ビルやネオンと群青の空を背景にした満月、近代の美の一つです。月齢表をみると最も遠い距離ゆえに小さくみえたのです。
この時季、山裾や田圃の余白に旧(ふる)い墓石群が目につきます。彼岸花(曼珠沙華)の鮮やかな朱が周りを彩っているからです。
昼下がりの和らかな陽光の下、静寂の中に佇んでいるこの光景は、位置取り、花の選択や配置など、先人の温かさや知恵を感じます。
立ち寄ったホテルでみたナナカマド、山百合が脇役です。赤と白の対比、典雅です。
室内ではブラックダリア(ミステリー小説のタイトルとしても有名)の落ち着きと秋桜(コスモス)の軽みの対比を楽しんでいます。
久し振りに夜汽車に乗りました(vol.59、65、96)。
線路の継ぎ目からの正確なリズムの音を背景に、乗客の受容、車内の静寂さ、今、殆どないのは何故でしょう。
(vol.59 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=85)
(vol.65 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=91)
(vol.96 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=124)
車内の明るさ、光源の色、楽しむ飲食、パソコンやゲームをしている乗客などが違います。勿論、駅舎の佇まい、駅弁、列車の速度、レールの構造、そして沿線風景などに劇的な変貌もあります。
この変化は、便利さや豊かさと引き換えに失ったものです。「何かを得ようとすれば何かを失わなければならない」はここでも真実です。
かの旅の夜汽車の窓に
おもひたる
我がゆくすゑのかなしかりしかな
(石川啄木)
私は、この歌が実感としてわかる最後の世代です。
窓に写る、険しさや徒労感、これが自分かとたじろいだ経験は、誰でも持っているのではないでしょうか。
鉄道の旅で失ったものがもう一つあります。それは“別離”の光景です。
以前のプラットホームには“別れ”がみられました。昔の駅は、幼心にも、人生で大切な何かを教えてくれていたように思います。少し大袈裟に言えば、“人生の教室”のようなところでした。
列車の窓が開かなくなったこと、距離時間が短縮したこと、それに伴って往来が容易になったこと、あるいは旅先の人情や慣習を体験できなくなったことなど…。
ここでも仕事や時間の効率化と引き換えに失ったものの大きさに気付かされます。
仕事を離れて、当て所(あてど)なく地方の在来線に乗れば、昔味わった感覚を再び味わえるのでしょうか。
もはや叶わないことがわかっているからこそ愛おしいのではないでしょうか。
近くは山頭火や尾崎放哉、旧(ふる)くは西行や芭蕉、自分では出来ないことをしている彼等に、人々が憧れを抱く理由は、ここにあるのかも知れません。
今週の花材は、執務室は秋の静謐を、秘書室は実りの豊かさを提示しているようです。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■ハイビスカスローゼル(カクテルレッド) ア
オイ科/非耐寒性常緑低木/原産:西アフリカ
/一般的なハイビスカスとは異なり、ガクが肥大
する食用種。ハイビスカスティーの原料で、ジャ
ムやソース、サラダなどにも使用される。花期は
秋で、花後に赤暗色の実をつける。
■リンドウ(ハイジ2号) リンドウ科/多年草
/原産:南アフリカ/日本の秋を代表する花。母
の日のカーネーションのように、敬老の日の贈り
物として定着。「ハイジ2号」はピンク色。
■LAユリ(シガロン) ユリ科/球根植物/
鉄砲ユリとスカシユリの掛け合わせ品種。スカシ
ユリに似た花姿で花持ちが良い。「シガロン」は
シックな渋赤色。
■ドラセナ(アトム) リュウゼツラン科/原
産:熱帯アフリカ/日本で一番多く出回る観葉
植物。「アトム」は葉色が赤色。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1441.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)
■ハイビスカスローゼル(カクテルレッド) ア
オイ科/非耐寒性常緑低木/原産:西アフリカ
/一般的なハイビスカスとは異なり、ガクが肥大
する食用種。ハイビスカスティーの原料で、ジャ
ムやソース、サラダなどにも使用される。花期は
秋で、花後に赤暗色の実をつける。
■リンドウ(ハイジ2号) リンドウ科/多年草
/原産:南アフリカ/日本の秋を代表する花。母
の日のカーネーションのように、敬老の日の贈り
物として定着。「ハイジ2号」はピンク色。
■LAユリ(シガロン) ユリ科/球根植物/
鉄砲ユリとスカシユリの掛け合わせ品種。スカシ
ユリに似た花姿で花持ちが良い。「シガロン」は
シックな渋赤色。
■ドラセナ(アトム) リュウゼツラン科/原
産:熱帯アフリカ/日本で一番多く出回る観葉
植物。「アトム」は葉色が赤色。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1441.jpg
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【秘書室】
■フォックスフェイス ナス科/原産:ブラジ
ル/別名「カナリアナス」「角茄子」(ツノナス)
/《名前の由来》実がキツネの顔に似ているこ
とから/1本に20〜30個の独特の形をした
実をつける。水につけなくても1ヵ月以上楽しめ
るので、ディスプレイなどに最適。
■ガーベラ(トマホーク) キク科/多年草
/大正初期に渡来し、「花車」(ハナグルマ)
や「花千本槍」(ハナセンボンヤリ)と呼ばれ
る。「トマホーク」は花の直径が13〜15cmも
ある大輪品種。とても細い花弁が特徴のスパ
イダー咲き。
■クロトン トウダイグサ科/常緑低木/
葉色、葉姿など多品種ある肉厚な葉。切花と
しても丈夫で、長期間鮮やかな葉色を楽しめ
る。沖縄などの暖地では生垣などにも利用さ
れる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1442.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)
■フォックスフェイス ナス科/原産:ブラジ
ル/別名「カナリアナス」「角茄子」(ツノナス)
/《名前の由来》実がキツネの顔に似ているこ
とから/1本に20〜30個の独特の形をした
実をつける。水につけなくても1ヵ月以上楽しめ
るので、ディスプレイなどに最適。
■ガーベラ(トマホーク) キク科/多年草
/大正初期に渡来し、「花車」(ハナグルマ)
や「花千本槍」(ハナセンボンヤリ)と呼ばれ
る。「トマホーク」は花の直径が13〜15cmも
ある大輪品種。とても細い花弁が特徴のスパ
イダー咲き。
■クロトン トウダイグサ科/常緑低木/
葉色、葉姿など多品種ある肉厚な葉。切花と
しても丈夫で、長期間鮮やかな葉色を楽しめ
る。沖縄などの暖地では生垣などにも利用さ
れる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1442.jpg
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