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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.153 − 冬の虹 −
12月10日の皆既月食、赤銅色が少し無気味でした。
冬籠もりに入るこの時季、氷雨(ひさめ)が落ち葉や大地を濡らしています。
冬の雨は、広大な田畑や里山を霧で包み、走っている車でさえも優雅にみえます。
雨の中、前照灯をつけた電車が田圃の中を弧の字を描いて黙々と走っていきます。
静寂な空気が流れているような外とは対照的に、車内はお年寄りの男女のグループが賑やかに旅の始まりに興奮して話しています。
以前なら何も感じなかった鉄道の内と外の情景の対比が、今は何故か愛しく、心安らぎます。
那須連峰の山肌には雪、山頂付近は雲に隠れています。その下は霧がかかったように煙(けぶ)っています。雪が舞っているのでしょう。霧を背景に地表から天に向かって虹の弧が大きく山を跨(また)ぐように現れていました。
風、大気、雲、そして空、自然は、揃って冬の到来を告げており、人々に冬支度を促しているようです。
一方、都会での、冬の雨は、ときに高層ビルを雲で包み込み、沈黙の雲海を出現させます。
この静寂や孤独は、都会の持つ一つの側面です。エドワード・ホッパーの絵で象徴できるような気がします。
対極にある都会の喧騒はジャクソン・ポロックの絵で表現できるのではと、雨の中、濡れて歩きながら考えていました。
しづけさは斯(か)くのごときか
冬の夜のわれをめぐれる音す
(斎藤茂吉)
一転、建物の縁の直線が冬の抜けるような青空を切り取っている造形の対比は、現代美術の傑作をみるようです。
仕事で、伊勢志摩に行ってきました。輝くばかりの夕陽を期待していましたが叶いませんでした。代わりに、穏やかで、少し重々しい日没をみることができました。
須田国太郎の「窪八幡」にみられる赤色の夕陽、雲に隠れて、余光で、厚い雲の上空が薔薇色に染まり、それより更に上空は水彩で描いたような透明な、薄い水色の空が眼前に展開しました。そのうち景色は闇に沈み、静寂さだけがあたりを支配しました。一泊の強行軍でも来た甲斐がありました。
「南蛮美術の光と影」展に行ってきました。戊辰戦争による混乱で、会津若松、鶴ヶ城から散逸してしまった「泰西王侯騎馬図屏風」(たいせいおうこうきばず びょうぶ)が一堂に会するというのです。想像以上に大きく、桃山時代の美術品が放つ開放的で、進取の息吹が観る者に伝わってきます。
何故、このような南蛮美術が会津藩という譜代大名第一の鶴ヶ城にあったのでしょうか。徳川の治世でも大切に保存されていたのが不思議な感じがします。
この屏風で印象的なのは、画面、大きさ、色彩の対比、静と動の対比などありますが、何といっても馬でした。
この馬をみて、北海道の農民作家、神田日勝(かんだ・にっしょう)の絶筆である「馬」(神田日勝記念美術館)の迫力を思い出しました。
〔神田日勝記念美術館HP http://kandanissho.com/
(「Gallery」最終ページに同作品が掲載されています)〕
今週の花材は、赤と緑、白と緑の組み合わせです。
華麗と清冽を表現していて、激励と労(いたわ)りを与えられています。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
冬籠もりに入るこの時季、氷雨(ひさめ)が落ち葉や大地を濡らしています。
冬の雨は、広大な田畑や里山を霧で包み、走っている車でさえも優雅にみえます。
雨の中、前照灯をつけた電車が田圃の中を弧の字を描いて黙々と走っていきます。
静寂な空気が流れているような外とは対照的に、車内はお年寄りの男女のグループが賑やかに旅の始まりに興奮して話しています。
以前なら何も感じなかった鉄道の内と外の情景の対比が、今は何故か愛しく、心安らぎます。
那須連峰の山肌には雪、山頂付近は雲に隠れています。その下は霧がかかったように煙(けぶ)っています。雪が舞っているのでしょう。霧を背景に地表から天に向かって虹の弧が大きく山を跨(また)ぐように現れていました。
風、大気、雲、そして空、自然は、揃って冬の到来を告げており、人々に冬支度を促しているようです。
一方、都会での、冬の雨は、ときに高層ビルを雲で包み込み、沈黙の雲海を出現させます。
この静寂や孤独は、都会の持つ一つの側面です。エドワード・ホッパーの絵で象徴できるような気がします。
対極にある都会の喧騒はジャクソン・ポロックの絵で表現できるのではと、雨の中、濡れて歩きながら考えていました。
しづけさは斯(か)くのごときか
冬の夜のわれをめぐれる音す
(斎藤茂吉)
一転、建物の縁の直線が冬の抜けるような青空を切り取っている造形の対比は、現代美術の傑作をみるようです。
仕事で、伊勢志摩に行ってきました。輝くばかりの夕陽を期待していましたが叶いませんでした。代わりに、穏やかで、少し重々しい日没をみることができました。
須田国太郎の「窪八幡」にみられる赤色の夕陽、雲に隠れて、余光で、厚い雲の上空が薔薇色に染まり、それより更に上空は水彩で描いたような透明な、薄い水色の空が眼前に展開しました。そのうち景色は闇に沈み、静寂さだけがあたりを支配しました。一泊の強行軍でも来た甲斐がありました。
「南蛮美術の光と影」展に行ってきました。戊辰戦争による混乱で、会津若松、鶴ヶ城から散逸してしまった「泰西王侯騎馬図屏風」(たいせいおうこうきばず びょうぶ)が一堂に会するというのです。想像以上に大きく、桃山時代の美術品が放つ開放的で、進取の息吹が観る者に伝わってきます。
何故、このような南蛮美術が会津藩という譜代大名第一の鶴ヶ城にあったのでしょうか。徳川の治世でも大切に保存されていたのが不思議な感じがします。
この屏風で印象的なのは、画面、大きさ、色彩の対比、静と動の対比などありますが、何といっても馬でした。
この馬をみて、北海道の農民作家、神田日勝(かんだ・にっしょう)の絶筆である「馬」(神田日勝記念美術館)の迫力を思い出しました。
〔神田日勝記念美術館HP http://kandanissho.com/
(「Gallery」最終ページに同作品が掲載されています)〕
今週の花材は、赤と緑、白と緑の組み合わせです。
華麗と清冽を表現していて、激励と労(いたわ)りを与えられています。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■珊瑚水木 ミズキ科/落葉低木/《名前の由来》冬になると枝が
珊瑚のような鮮やかな色に染まることから/白玉水木(シラタマミズ
キ)の変種。初夏に白い小さな花が咲き、秋に白い実をつける。美しい
枝色を楽しむ花材として流通。
■エクメア(ウラベニサンゴアナナス) パイナップル科/常緑多年
草/原産:ブラジル/円錐形の独特な花穂が魅力。鮮やかな紅色は
ガクで、その先端から出る青紫色が花弁。赤いガクの部分は2ヵ月以
上も美しく、長期間楽しめる。
■エピデンドラム ラン科/原産:中南米/《名前の由来》ギリシャ
語の“epi”(上に)と“denndoron”(木)から。本属が一般的に着生蘭
であることから/細く伸びた茎の先に小さな花が密集し、半円形のひと
つの花のように見える。次々と花が咲き、長期間楽しめる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1531.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)
■珊瑚水木 ミズキ科/落葉低木/《名前の由来》冬になると枝が
珊瑚のような鮮やかな色に染まることから/白玉水木(シラタマミズ
キ)の変種。初夏に白い小さな花が咲き、秋に白い実をつける。美しい
枝色を楽しむ花材として流通。
■エクメア(ウラベニサンゴアナナス) パイナップル科/常緑多年
草/原産:ブラジル/円錐形の独特な花穂が魅力。鮮やかな紅色は
ガクで、その先端から出る青紫色が花弁。赤いガクの部分は2ヵ月以
上も美しく、長期間楽しめる。
■エピデンドラム ラン科/原産:中南米/《名前の由来》ギリシャ
語の“epi”(上に)と“denndoron”(木)から。本属が一般的に着生蘭
であることから/細く伸びた茎の先に小さな花が密集し、半円形のひと
つの花のように見える。次々と花が咲き、長期間楽しめる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1531.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)
【秘書室】
■アンスリューム(シンバ) サトイモ科/常緑多年草/原産:中南米
/ツヤツヤの花(苞)と葉が特徴の南国の花。花びらに見える部分は苞
で、中心の棒状の部分が花(花序)。主に苞を観賞するため、非常に長く
楽しめる。「シンバ」は白色の苞の端に緑が混ざる。
■ピンポン菊 キク科/多年草/原産:オランダ/ピンポン玉のように
まん丸に咲く菊。花持ちの良い菊の中でも特に長く楽しめる品種。供花よ
りも祝花での利用が多く、花色も豊富。
■グラジオラス アヤメ科/球根植物/原産:南アフリカ/《名前の由
来》葉の形に由来し、ラテン語で剣を意味する“gladius”から/園芸品種
は1000種を超え、花色も豊富。漏斗状の花が次々と花茎いっぱいに開
花する。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1532.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)
■アンスリューム(シンバ) サトイモ科/常緑多年草/原産:中南米
/ツヤツヤの花(苞)と葉が特徴の南国の花。花びらに見える部分は苞
で、中心の棒状の部分が花(花序)。主に苞を観賞するため、非常に長く
楽しめる。「シンバ」は白色の苞の端に緑が混ざる。
■ピンポン菊 キク科/多年草/原産:オランダ/ピンポン玉のように
まん丸に咲く菊。花持ちの良い菊の中でも特に長く楽しめる品種。供花よ
りも祝花での利用が多く、花色も豊富。
■グラジオラス アヤメ科/球根植物/原産:南アフリカ/《名前の由
来》葉の形に由来し、ラテン語で剣を意味する“gladius”から/園芸品種
は1000種を超え、花色も豊富。漏斗状の花が次々と花茎いっぱいに開
花する。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1532.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)