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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.154 − 星霜 −
冬です。
西の山麓から灰色の厚い雲が東に向かって突き出し、西の空に残っている青空を駆逐する勢いです。
電車が福島盆地に入ると、北向きの屋根や日陰にうっすらと雪が残っていました。
初雪が降ったようです。木陰や落葉の上にうっすらと刷毛(はけ)で掃いたように雪が残っていました。
一方、関東平野は、大気が最も美しい時季です。
夜明け前の朝焼けは、赤紫色が暗色系から明色系に刻々と変わっていきます。この変化が終わると夜明けです。
この一年、忘れられない年になってしまいました。
福島県は大震災に加えて、人口密集地帯での原発事故の同時多発という、誰も経験したことのない惨禍に見舞われました。
その対応に、平時の執務を変えずに成し得る限りの努力を続け、体調を崩してしまいました。誕生日前からの体調不良がなかなか回復せず、遂にドクターストップです。“過剰適応症候群”と諭されてしまいました。
ゆく年の惜しくもあるかな ますかがみ
みるかげさへに暮れぬと思へば
(紀貫之「和漢朗詠集」)
事故発生以来、「われわれだけが不幸なのではない。この広い地球には、われわれより悲惨な事態が起こっている」(シェークスピア「お気に召すまま」)と自らに言い聞かせて、自分なりにベストを尽くしてきました。
少しホッとしたら途端にダウンです。
ギリギリの状況で事故収束にあたっている方々からみたら、恥ずかしくて、顔向けができません。
この年末年始も24時間体制で臨むのでしょう。健康に留意してと祈らずにはいられません。何故なら、我が国の、そして地球の将来が彼、彼女等の働きに掛かっているのですから。
畏友(いゆう)の誘いで広島へ行ってきました。
体調は悪かったのですが、心身の切り替えの良い機会と考えました。空港から市内へ入る山陽道の道傍にある紅い山茶花(サザンカ)が、今を盛りと咲いていました。只、周囲の山肌に松枯れが目立ちました。
早朝と深夜、鉄路のレールの継ぎ目から出る音が部屋まで届き、この“ガタンガタン…”が昔の記憶を呼び起こしてくれました。心のオルゴールでした。
何度も訪れた二つの美術館を再訪しました。訪問する度に新たな発見があります。
ひろしま美術館では、アンリ・ルソーの「要塞の眺め」が目に入りました。作者の最晩年の作だそうです。画面の隅に小さく描かれた人物の背中が作者の後ろ姿のようで、静寂、沈黙という音が画面から聞こえてくるようです。
一転、ジョルジュ・ルオーの描く人物はいつみても心を和ませてくれます。
広島県立美術館では、特別展として「近代日本の木彫展」が開かれており、ここで平櫛田中(ひらくし・でんちゅう)の「落葉」(井原市立田中美術館蔵)に再会しました。
何とも言えない侘びしさ、無心などを感じさせられ、心を落ち着かせてくれます。
今週の花材は、執務室、秘書室ともに“凜”がメッセージでしょうか。
執務室の姿は重森三玲(しげもり・みれい)の庭石をみるようです。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
※編集註: 次回掲載は平成24年1月6日(金)予定です。
西の山麓から灰色の厚い雲が東に向かって突き出し、西の空に残っている青空を駆逐する勢いです。
電車が福島盆地に入ると、北向きの屋根や日陰にうっすらと雪が残っていました。
初雪が降ったようです。木陰や落葉の上にうっすらと刷毛(はけ)で掃いたように雪が残っていました。
一方、関東平野は、大気が最も美しい時季です。
夜明け前の朝焼けは、赤紫色が暗色系から明色系に刻々と変わっていきます。この変化が終わると夜明けです。
この一年、忘れられない年になってしまいました。
福島県は大震災に加えて、人口密集地帯での原発事故の同時多発という、誰も経験したことのない惨禍に見舞われました。
その対応に、平時の執務を変えずに成し得る限りの努力を続け、体調を崩してしまいました。誕生日前からの体調不良がなかなか回復せず、遂にドクターストップです。“過剰適応症候群”と諭されてしまいました。
ゆく年の惜しくもあるかな ますかがみ
みるかげさへに暮れぬと思へば
(紀貫之「和漢朗詠集」)
事故発生以来、「われわれだけが不幸なのではない。この広い地球には、われわれより悲惨な事態が起こっている」(シェークスピア「お気に召すまま」)と自らに言い聞かせて、自分なりにベストを尽くしてきました。
少しホッとしたら途端にダウンです。
ギリギリの状況で事故収束にあたっている方々からみたら、恥ずかしくて、顔向けができません。
この年末年始も24時間体制で臨むのでしょう。健康に留意してと祈らずにはいられません。何故なら、我が国の、そして地球の将来が彼、彼女等の働きに掛かっているのですから。
畏友(いゆう)の誘いで広島へ行ってきました。
体調は悪かったのですが、心身の切り替えの良い機会と考えました。空港から市内へ入る山陽道の道傍にある紅い山茶花(サザンカ)が、今を盛りと咲いていました。只、周囲の山肌に松枯れが目立ちました。
早朝と深夜、鉄路のレールの継ぎ目から出る音が部屋まで届き、この“ガタンガタン…”が昔の記憶を呼び起こしてくれました。心のオルゴールでした。
何度も訪れた二つの美術館を再訪しました。訪問する度に新たな発見があります。
ひろしま美術館では、アンリ・ルソーの「要塞の眺め」が目に入りました。作者の最晩年の作だそうです。画面の隅に小さく描かれた人物の背中が作者の後ろ姿のようで、静寂、沈黙という音が画面から聞こえてくるようです。
一転、ジョルジュ・ルオーの描く人物はいつみても心を和ませてくれます。
広島県立美術館では、特別展として「近代日本の木彫展」が開かれており、ここで平櫛田中(ひらくし・でんちゅう)の「落葉」(井原市立田中美術館蔵)に再会しました。
何とも言えない侘びしさ、無心などを感じさせられ、心を落ち着かせてくれます。
今週の花材は、執務室、秘書室ともに“凜”がメッセージでしょうか。
執務室の姿は重森三玲(しげもり・みれい)の庭石をみるようです。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
※編集註: 次回掲載は平成24年1月6日(金)予定です。
今週の花
【理事長室】
■ニシキギ ニシキギ科/落葉低木/原産:日本・中国・朝鮮/カエ
デ、スズランノキ(鈴蘭の木)と並ぶ世界三大紅葉樹。枝にコルク質の翼
(よく)を4方向につけるのが特徴。春に小さな花が咲き、赤い実をつけ
る。
■パフィオぺディラム(シンディグリーン) ラン科/原産:東南アジア・
中国・インド/《名前の由来》ギリシャ語の“パフィア”(ヴィーナス)と“ぺ
ディロン”(サンダル、上靴)の 2語からで、ヴィーナスのスリッパという
意味。花びらの一部が袋状になることに由来/袋状になる唇弁(しんべ
ん)が印象的で目を引くユニークな花姿。品種により形が様々で、みな個
性的な花。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1541.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)
■ニシキギ ニシキギ科/落葉低木/原産:日本・中国・朝鮮/カエ
デ、スズランノキ(鈴蘭の木)と並ぶ世界三大紅葉樹。枝にコルク質の翼
(よく)を4方向につけるのが特徴。春に小さな花が咲き、赤い実をつけ
る。
■パフィオぺディラム(シンディグリーン) ラン科/原産:東南アジア・
中国・インド/《名前の由来》ギリシャ語の“パフィア”(ヴィーナス)と“ぺ
ディロン”(サンダル、上靴)の 2語からで、ヴィーナスのスリッパという
意味。花びらの一部が袋状になることに由来/袋状になる唇弁(しんべ
ん)が印象的で目を引くユニークな花姿。品種により形が様々で、みな個
性的な花。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1541.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)
【秘書室】
■カラー(ウェディングマーチ) サトイモ科
/球根植物/原産:南アフリカ/《名前の由
来》花(苞)がシャツの襟に似ていることから/
江戸時代にオランダから渡来。花のように見え
る部分は苞で、その中に棒状の花序がある。
■ブルースター(ピュアブルー) ガガイモ
科/原産:ブラジル/《名前の由来》淡い水色
の5枚の花びらが星のように咲くことから/ベ
ルベットのような独特な質感の花びらをもつ。
色違いでピンクスター、ホワイトスターもある。
「ピュアブルー」は従来のブルースターより花
びらが丸みをおび、可愛らしく開花する。
■アンスリューム(バニラ) サトイモ科/
常緑多年草/原産:中南米/ツヤツヤの花
(苞)と葉が特徴の南国の花。花びらに見える
部分は苞で、中心の棒状の部分が花。「バニ
ラ」はクリーム色の品種で、冬期は赤みがか
る。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1542.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)
■カラー(ウェディングマーチ) サトイモ科
/球根植物/原産:南アフリカ/《名前の由
来》花(苞)がシャツの襟に似ていることから/
江戸時代にオランダから渡来。花のように見え
る部分は苞で、その中に棒状の花序がある。
■ブルースター(ピュアブルー) ガガイモ
科/原産:ブラジル/《名前の由来》淡い水色
の5枚の花びらが星のように咲くことから/ベ
ルベットのような独特な質感の花びらをもつ。
色違いでピンクスター、ホワイトスターもある。
「ピュアブルー」は従来のブルースターより花
びらが丸みをおび、可愛らしく開花する。
■アンスリューム(バニラ) サトイモ科/
常緑多年草/原産:中南米/ツヤツヤの花
(苞)と葉が特徴の南国の花。花びらに見える
部分は苞で、中心の棒状の部分が花。「バニ
ラ」はクリーム色の品種で、冬期は赤みがか
る。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1542.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)