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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2012.02.03

vol.159  − 蒼穹 (そうきゅう) −

世間が、今が冬の底と思っているこの時、自然は、静かに、しかし確実に春への歩みを進めています。
日の出はわずかに早くなり、日の入りは誰の目にも分かる程延びています。
室内には、フリージアを設(しつら)えて、乏しい室内の色彩を補っています。

この時季、高台にある大学から盆地の底にある市街地へ降りていく時、北の方向に、抜けるような青い空を背景に、文字通り純白の蔵王の嶺々が凜とした姿をみせてくれます。
毎年のことですが、何時(いつ)みてもその神々しさに圧倒されます。
   (vol.107 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=135

冬型の気圧配置が崩れると、透明度の高い、突き抜けるような青の天空が拡がります。
この青が、昼は山や建物を背景に拡がり、思わず深呼吸したくなるような色彩で人々を癒してくれます。
夜には、この天空が、深い青の大気で、月と星の鋭角的な光を引き立ててくれます。

昨年、外での最後の仕事は、病院再建・改革の会議でした。
快い疲労の中で、車中から凍(い)てつく夜空を見上げると、強風と寒気で大気は澄み渡り、そこに上弦の月と星が輝いているのに気付きました。体調が悪かった時だけに、一入(ひとしお)心に沁みました。
深い群青と黄金色の対比、しばらく眺めていました。

冬の月を思い浮かべるとき、何故か、荒々しい海や海岸を連想してしまいます。
山間(やまあい)の小さな町に育ったので、海をみて育ったわけではありません。しかし、自らに課した目標を果たして、心満ちて燃え尽きた時、様々な海の姿、例えば、波の花が飛んでいる海岸や月との組み合わせなどが、しばらく目の前に展開します。
若い時から暇をみつけては海に足を伸ばして、眺めた海の数だけの情景が重なった結果でしょうか。
あるいは、究極の願望が形になって顕(あらわ)れてしまうのでしょうか。

海からの月の出をみたいというのが目下の望みです。残念ながら、まだ観たことがありません。何時、何処でみられるかも、私には天文学的な知識がなく、分かりません。

         ありがたやけふ満つる月と知らざりし
         この大き月海にのぼれり
                                    (若山牧水)

この歌からすると、満月の月の出と海の組み合わせはいつか、どこかで必ずみられる筈です。

1月30日は、奇しくも我が国の歴史を大きく変えた出来事が目白押しに起きています。西南戦争の勃発(1877年)、日英同盟の調印(1902年)、そしてヒトラー内閣の成立(1933年)などです。
それぞれの出来事に、様々な視点からの数多くの文献が発表されています。時には歴史を振り返って、その時、先人達がどう考えて、どの様な判断をしたのか、先人達に学ぶことも、将来を考えるうえでは必要ではないでしょうか。

今週の花材は、執務室、秘書室ともに色の乏しいこの時期、暖色系と緑の対比で整えられています。
しかも、時とともに花が開き、色彩の組み合わせも変わり、真に“早春”です。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)


今週の花


【理事長室】
■レンギョウ   モクレン科/落葉低木/原産:中国・朝鮮・日本
/早春を彩る代表的な花木。耐寒性耐暑性に優れ丈夫で育てや
すく、生垣や公園の植栽に利用される。葉に先立って黄金色の4
花弁の花を枝いっぱいに咲かせる。
■LAユリ〔ロイヤルトリニティ〕   ユリ科/球根植物/鉄砲ユリ
と透かしユリの掛け合わせ種(LongifrorumAsiaticHybrid)。中
輪咲きで透かしユリよりも花持ちが良い。「ロイヤルトリニティ」はオ
レンジ色の人気品種。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1591.jpg
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【秘書室】
■エピデンドラム   ラン科/原産:中南米/小さな花が集まって半円
形のひとつの花のように咲く。葉は多肉植物のように肉厚で、一列に互生
してつける。次々と開花していくので、切花でも長期間楽しめる。
■カーネーション   ナデシコ科/多年草/原産:南ヨーロッパ・西アジ
ア/江戸時代にオランダから渡来。赤やピンク等のスタンダードな色から
絞りや覆色の個性的な色まで品種が豊富。母の日に贈る花として古くか
ら親しまれる。
■ラナンキュラス   キンポウゲ科/球根植物/原産:西アジア・ヨーロ
ッパ/《名前の由来》ラテン語の蛙(ラナ)に由来。蛙の生息する湿地を好
んで咲くことから/薄く柔らかい花びらが幾重にも重なり、ボリューム感の
ある花。
■オクラレルカ   アヤメ科/多年草/原産:トルコ/剣のように先の尖
った長い葉。勢いのあるシャープなラインで、生け花などに重宝される。ア
イリスの一種で紫色の花が咲くが、葉だけが流通する。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1592.jpg
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