HOME > 理事長室からの花だより

理事長室からの花だより

新着 30 件

一覧はこちらから

理事長室からの花だより

2012.02.24

vol.162  − 現世 (うつしよ) −

時は、確実に移ろっています。
立春を過ぎても、寒気は尚厳しいのですが、日の入りの時間が延びているのは、誰の目にも明らかです。
日の出も、出勤時には尚、車のライトは点いていますが、外はもう闇ではありません。遠景の山や街並みが、透明度の高い灰色の空を背景に、紫黒(しこく)の色彩を帯びて姿をみせてくれるようになりました。
春はもうすぐそこです。

室内は、雪柳と八重の紅いチューリップ、色や形の対照を愛でています。

鉄路からみる田畑には所々に雪が残っています。
農家の方々は、放射能の汚染で、これまで通りに作物が作れるのかどうかが分からず、途方に暮れています。
冬の間、雪に隠れている田畑は、雪に封じ込められている今のように、これからも封印されてしまうかも知れません。食料生産という生の営みを、農家の方々に“やめろ”と言うのは、“生き甲斐や誇りを捨てろ”と言うのと同じです。
東京では原発事故は“終わり”ですが、農業、漁業、林業などに携わる人々を始め、福島では未だ始まったばかりです。このような自然の荒廃が、人々の心を荒涼としたものにし、結果として、国民を分断して、やがて国の乱れに繋がらないことを祈るばかりです。

“時”は人間に優しくもあり、峻厳(しゅんげん)でもあります。
時の経過は、悲しみや辛さを癒してくれます。厳しい過去でも懐かしく振り返ることが出来たり、美しくみえることさえあります。
他方、時間は、人間から、容赦なく歳月を奪い取ってしまうものでもあります。気が付けば、老いは目の前にあり、失ってしまった時間の大きさにたじろぎます。
時とは絶妙な“神”のようです。

         なにごともかはりのみゆく世の中に
         おなじかげにてすめる月かな
                                (西行)

振り返ってみれば、歩んできた道々で、どれ程の本やレコード(CD)を手に取ったことでしょう。
それらのどれが、どれ程、自分の人生に関わったのかは分かりません。
只、若い時と年老いた今とでは、決定的に違う点があります。それは“挑戦”の有無です。若い時には、分野や好みに関係なく、一度は関心を持って挑戦したものです。

若い時と老いてからの未知なるものに対しての接し方の差は、忙しさだけでない、何かが違うような気がします。感受性なのでしょうか。
今だから言えることは、若い時には、何にでも、一度は、挑戦しておいたほうが良いということです。
何故なら、どれが、どれ程、その後の人生に影響を及ぼすかなど、誰もその時は分からないのですから。
それは、丁度、どの出会いが自分にとって掛け替えのない大切なものかは、その時は分からないと同じように、です。
 (「医局員への手紙」 (現:「学長からの手紙」)
  No.37「出会いを大切に」 http://www.fmu.ac.jp/univ/daigaku/letter/037.html

今週の花材は、執務室は枝振りから元気を、秘書室はとりどりの色から情熱と温かさを、視る人に与えています。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■ハクモクレン   モクレン科/落葉高木/
春を告げる花として、古くから庭木などで親し
まれる。葉に先立ち、枝先に上向きに花を咲
かせる。花は5cmほどもある大輪で芳香があ
る。花びらは日が当たると開花し、暗くなると
閉じる。濃紅色の花を咲かせる紫木蓮(シモク
レン)もある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1621.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)









【秘書室】
■ラナンキュラス〔エムシリーズ〕   キンポ
ウゲ科/球根植物/原産:西アジア・ヨーロッ
パ/《名前の由来》ラテン語の蛙(ラナ)に由
来。蛙がたくさん生息する湿地に自生すること
から/幾重にも重なる柔らかい花弁が特徴。
「エム」シリーズの“エム”は育成地の宮崎県
から。丈夫で花持ちが良く、花形が美しい品
種。今回は「エムレッド」「エムオレンジ」「エム
クリーム」の3色を使用。
■ピンポン菊   キク科/多年草/原産:オ
ランダ/ピンポン玉のようにまん丸に開花す
る。花持ちの良い菊の中でも特に長く楽しめる
品種。“菊=お供え”のイメージを一新させ、祝
用に多く利用される。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1622.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

▲TOPへ