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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2012.03.16

vol.165  − 天命 −

3月11日、ほぼ満月でした。一年前はどうだったのでしょうか。

春の日差しが、嶺々の残雪を銀(しろがね)に輝かせています。白と黒の対照、雨に打たれて、より鋭角的になっています。庭の溶け残った雪も急ぎ足で退却しています。
早朝の川面には鴨が羽を休め、周りに静寂が漂っています。

車窓から入ってくる日差しは強いのですが、大気の揺らめきはまだ感じられません。
本格的な春は足踏みです。

夕暮れ、遠目に雲の陰にある気弱げな夕陽が、薄い鈍色(にびいろ)に雲を染めています。
近目に、鳥達が、膨らみ始めた木蓮の木の芽に寄ってきています。

“春の雪”が例年にない程降っています。春の雪は、一時、静けさと余韻をもたらしてくれます。

         駒とめて袖うち拂うかげもなし
         佐野のわたりの雪の夕暮れ
                          (藤原定家)

この一年、原発事故の対応にあたった本学の職員や関係者の頑張りに脱帽です。
天命として自分の置かれている立場を受け入れて、各自の役割を見事に果たしてくれました。不眠、不休という表現は大袈裟ではありません。評価は“時”ですが、この職員達とこの時間を共にした事、生涯誇りに思って歩むことができます。人間の優しさ、勁(つよ)さを教えられました。
と同時に、仕事にあたっては酷薄さや偽善に振り廻されもしました。
被災者が同じ被災者である支援側の人間を責め立てるというのは、惨(むご)過ぎます。“所詮、人間は曖昧な偽善の上に立って生きている”のでは…。

昔の文化として確かに共有していた、里山の入会地や路地にみられる“思いやり”、“察し”、あるいは“公”の精神、これらを現代に合った形で取り戻さないと、奇怪な日本になってしまわないかと心配になります。

         東風(こち)吹かば  にほいおこせよ梅の花  主なしとて  春を忘るな(春な忘れそ)
                                                     (菅原道真)

人口(じんこう)に膾炙(かいしゃ)しているこの歌は、時代背景、彼の出自などを考えて読み解かなければならないようです。
持統天皇の歌(vol.128)も、夏の風情を漂わせた名歌というのではなく、天下奪(と)りを表明していると言われています。
   (vol.128 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=161

東日本大震災復興チャリティーイベントとして開催された名家の逸品「真朱(まそほ)の夜明け」展に行ってきました。入口のデザインが、入場者を一気に雰囲気に浸らせてしまいます。
「まそほ」とは、自然の赤々とした色の輝きをいうのだそうです。この色は、古来、誕生、祈り、出発を象徴しており、魔除けの役割もあったとのことです。
伊達政宗着用の陣羽織は何時みても粋です。我が国の古代の色は、海外のそれと比べると“和らかい”、“優しい”というのが印象的です。狩猟や砂漠の文化と対極にあるからでしょうか。

今週の花材は、執務室の春の謳歌、秘書室は姿形や色に高貴さを感じさせてくれます。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■ユリ〔クリスタルブランカ〕   ユリ科/球根植物
/オリエンタルハイブリッド種のユリ。大きく優雅な
花姿と芳香が特徴。「カサブランカ」に似た純白の大
輪で、上向きに開花する。
■シンビジュウム〔デイライト〕   ラン科/原産:東
南アジア/寒さに強く、冬の代表的な蘭花。非常に
花持ちが良く、開花後1〜2ヵ月楽しめる。「デイライ
ト」は鮮やかな黄色の大輪種。
■モルセラ   シソ科/一年草/原産:シリア/ミ
ントのような芳香がある。主に花を包むような大きな
みどりのガクを観賞するグリーンとして流通。花期は
春で白っぽい花が咲く。爽やかなライトグリーンと独

な茎のラインが特徴。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1651.jpg
(無断転載等はご遠慮ください)

【秘書室】
■エピデンドラム〔フジツボ〕   ラン科/原
産:中南米/小さな花が集まって半円形の一
つの花のように咲く。次々と開花するので、非
常に長く楽しめる。「フジツボ」は落ち着いたピ
ンク色。
■プロテア〔カーニバル〕   ヤマモガシ科/
常緑低木/原産:南アフリカ/独特の花姿が
豪華でエキゾチック。大きいものは直径30cm
にもなる存在感のある花。花持ちが良く、ドラ
イフラワーにも適す。南アフリカ共和国の国
花。
■カーネーション〔プラドミント〕   ナデシコ科
/多年草/原産:地中海沿岸/江戸時代に
オランダから渡来。母の日に贈る花として古く
から親しまれる。淡色から濃色、覆色や絞り模
様など、品種が豊富。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1652.jpg
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