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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.168 − 出会い −
構内の木々も春の装いを始めました。先陣を切ったのは百合の木(ユリノキ)の白い花(?)です。
太陽が隠れた直後の日暮れ時、白いベールに包まれたような靄(もや)の中、赤いテールランプがその存在を慎ましげに示しながら、往き交っています。
一日中降り続く春の雨は、人の気持ちのみならず大地や空気、そして車までも嫋(たお)やかにしてくれます。
好雨 時節を知り
春に当たりて 乃(すなわ)ち発生す
風に随(したが)いて 潜(ひそ)かに夜に入り
物を潤して 細かに声なし
野径(やけい) 雲 倶(とも)に黒く
江船(こうせん) 火 独り明らかなり
暁に 紅(くれない)の湿れる処を看れば
花は錦官城(きんかんじょう)に重からん
(杜甫)
気が付けば、植え込みや生垣に寒椿(カンツバキ)が咲いています。
“心ここにあらず”、今まで目に入りませんでした。異常気象のせいかどれも今一つ元気がありません。雪や寒さの中、凜として咲く紅い花、という印象が強いだけに、少し寂しく感じてしまいます。
日中、速歩(はやあし)で歩いて交差点で立ち止まる時、以前は自ら求めて探していた日差しを、今は暑く感じるようになりました。空を見上げると、ビルの上に和(やわ)らかい青空、そして雲形定規を思わせる雲の塊が横に拡がっています。
時の歩みは確実です。
4月、出会いの時です。
新しい人々が違った環境に入ってきて、いくつもの出会いが生まれます。この動きそれ自体が、組織に「生命(いのち)」を吹き込みます。仕事や修業の場では「Comfort zoneを越えよ」、とよく言われます。
出会いの積み重ねを人生と定義するなら、人生は出会いに尽きます。何故なら「人生の扉は他人が開く」のですから。
新しい環境に身を投じる時、一瞬、億劫な気分になり、元に戻りたいと思うものです。能因法師の歌に纏わる伝説は、そんな気持ちがあって生まれたのかも知れません(vol.24)。
修行時代、居心地の良さにそこに長く留まっていたいと、一瞬思った遙かな過去を思い出します。
(vol.24 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=41)
4月が巡ってくると、必ず思い出す光景があります(vol.24 同上)。
昔、週一回、片道2時間を掛けて前任地である奥会津の病院へ手術に通っていました。峠を越える時、遠くの山中に雑木林に交じって山桜が一本咲いていました。この姿が、何故か今でも鮮烈に脳裡に焼き付いています。
とほ山の峰越しの雲のかがやくや
峰のこなたの山ざくら花
(若山牧水)
峠を下ると田圃(たんぼ)の中を貫いて延びている細い街道沿いに、辛夷(コブシ)の古木が立っています。
満開の時は、暫し車を停めて眺めたものです。これらの木々を観ることが春の往き帰りの楽しみでした。
今でも、春になれば元気に花を咲かせているのでしょうか。機会があったらこの街道をまた通ってみたいと思っていますが…。
今週の花材は、執務室、秘書室とも新鮮、初々しさを感じさせてくれます。
特に秘書室は、“前へ倣(なら)え”と言われて整列している小学1年生のようです。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
太陽が隠れた直後の日暮れ時、白いベールに包まれたような靄(もや)の中、赤いテールランプがその存在を慎ましげに示しながら、往き交っています。
一日中降り続く春の雨は、人の気持ちのみならず大地や空気、そして車までも嫋(たお)やかにしてくれます。
好雨 時節を知り
春に当たりて 乃(すなわ)ち発生す
風に随(したが)いて 潜(ひそ)かに夜に入り
物を潤して 細かに声なし
野径(やけい) 雲 倶(とも)に黒く
江船(こうせん) 火 独り明らかなり
暁に 紅(くれない)の湿れる処を看れば
花は錦官城(きんかんじょう)に重からん
(杜甫)
気が付けば、植え込みや生垣に寒椿(カンツバキ)が咲いています。
“心ここにあらず”、今まで目に入りませんでした。異常気象のせいかどれも今一つ元気がありません。雪や寒さの中、凜として咲く紅い花、という印象が強いだけに、少し寂しく感じてしまいます。
日中、速歩(はやあし)で歩いて交差点で立ち止まる時、以前は自ら求めて探していた日差しを、今は暑く感じるようになりました。空を見上げると、ビルの上に和(やわ)らかい青空、そして雲形定規を思わせる雲の塊が横に拡がっています。
時の歩みは確実です。
4月、出会いの時です。
新しい人々が違った環境に入ってきて、いくつもの出会いが生まれます。この動きそれ自体が、組織に「生命(いのち)」を吹き込みます。仕事や修業の場では「Comfort zoneを越えよ」、とよく言われます。
出会いの積み重ねを人生と定義するなら、人生は出会いに尽きます。何故なら「人生の扉は他人が開く」のですから。
新しい環境に身を投じる時、一瞬、億劫な気分になり、元に戻りたいと思うものです。能因法師の歌に纏わる伝説は、そんな気持ちがあって生まれたのかも知れません(vol.24)。
修行時代、居心地の良さにそこに長く留まっていたいと、一瞬思った遙かな過去を思い出します。
(vol.24 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=41)
4月が巡ってくると、必ず思い出す光景があります(vol.24 同上)。
昔、週一回、片道2時間を掛けて前任地である奥会津の病院へ手術に通っていました。峠を越える時、遠くの山中に雑木林に交じって山桜が一本咲いていました。この姿が、何故か今でも鮮烈に脳裡に焼き付いています。
とほ山の峰越しの雲のかがやくや
峰のこなたの山ざくら花
(若山牧水)
峠を下ると田圃(たんぼ)の中を貫いて延びている細い街道沿いに、辛夷(コブシ)の古木が立っています。
満開の時は、暫し車を停めて眺めたものです。これらの木々を観ることが春の往き帰りの楽しみでした。
今でも、春になれば元気に花を咲かせているのでしょうか。機会があったらこの街道をまた通ってみたいと思っていますが…。
今週の花材は、執務室、秘書室とも新鮮、初々しさを感じさせてくれます。
特に秘書室は、“前へ倣(なら)え”と言われて整列している小学1年生のようです。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■木瓜(ボケ) バラ科/落葉低木/原産:
中国/渡来当初は薬木として利用され、明治
大正になってから観賞されるようになる。球形
の実は果実酒や鎮痛剤として利用。庭木や盆
栽で人気があるが、切花でも長く楽しめる。
■雪柳(ユキヤナギ) バラ科/落葉低木
/原産:日本・中国/《名前の由来》柳のよう
に枝がしなやかに垂れることと、花を散らした
様子が雪が降ったかのように見えることから/
春に小さな白い花を枝いっぱいに咲かせる。
■ラナンキュラス キンポウゲ科/球根植
物/原産:西アジア〜ヨーロッパ/《名前の由
来》ラテン語の“蛙”(ラナ)に由来。蛙がたくさ
んいる湿地に自生することから/幾重にも重
なる柔らかい花弁が特徴。/今回は「スカーレ
ット」 (赤)、「ちほの舞」 (白×縁紫)の2種
を使用。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1681.jpg
■木瓜(ボケ) バラ科/落葉低木/原産:
中国/渡来当初は薬木として利用され、明治
大正になってから観賞されるようになる。球形
の実は果実酒や鎮痛剤として利用。庭木や盆
栽で人気があるが、切花でも長く楽しめる。
■雪柳(ユキヤナギ) バラ科/落葉低木
/原産:日本・中国/《名前の由来》柳のよう
に枝がしなやかに垂れることと、花を散らした
様子が雪が降ったかのように見えることから/
春に小さな白い花を枝いっぱいに咲かせる。
■ラナンキュラス キンポウゲ科/球根植
物/原産:西アジア〜ヨーロッパ/《名前の由
来》ラテン語の“蛙”(ラナ)に由来。蛙がたくさ
んいる湿地に自生することから/幾重にも重
なる柔らかい花弁が特徴。/今回は「スカーレ
ット」 (赤)、「ちほの舞」 (白×縁紫)の2種
を使用。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1681.jpg
【秘書室】
■モルセラ シソ科/一年草/原産:シリア/《名前の由来》原産
地と間違えられたモルッカ諸島の名から/ミントに似た芳香がある。
花期は春で、大きな緑のガクの中に白っぽい花が咲く。爽やかな緑
色と独特の茎のラインが特徴。
■ピンポン菊 キク科/多年草/原産:オランダ/ピンポン玉のよ
うにまん丸く咲く菊。花持ちのよい菊の中でも、特に長く観賞できる。
今回は白、ピンク、紫の3色を使用。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1682.jpg
■モルセラ シソ科/一年草/原産:シリア/《名前の由来》原産
地と間違えられたモルッカ諸島の名から/ミントに似た芳香がある。
花期は春で、大きな緑のガクの中に白っぽい花が咲く。爽やかな緑
色と独特の茎のラインが特徴。
■ピンポン菊 キク科/多年草/原産:オランダ/ピンポン玉のよ
うにまん丸く咲く菊。花持ちのよい菊の中でも、特に長く観賞できる。
今回は白、ピンク、紫の3色を使用。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1682.jpg