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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.170 − 移ろい −
野山そして街で、同時に、あるいは相前後して、白い花が咲き、そして散っています。
列車の車窓から、白梅、辛夷(コブシ)、白木蓮、そして桜が目に入ります。桜前線は、今、北上中です。
霞が関界隈は桜が多いところです。東京都心で一番早く咲く外務省の財務省側にある桜は、早々と散り、他も後を追うように次々と地に還っています。
この時季になるとこの詩を思い出します。
(vol.52 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=78)
(vol.87 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=113)
しかも、齢(よわい)を重ねるに伴って、この詩に寄せる想いも変わってきました。
・
・
・
今年花落ちて顔色改まり
明年花咲いて復た誰か在る
・
・
・
年年歳歳花相似たり
歳歳年年人同じからず
・
・
・ (劉廷芝〔希夷〕)
この詩は、自然の継続性と人間の無常や儚さを対比するという、漢詩の典型的な体裁をとっています。
この漢詩が我が国にもっとも親しまれている理由は、日本人の感性に寄り添っているからでしょう。
人にもまた、花と同じ一度限りの四季があることを、“同じからず”で示しています。
人から自然をみると、自然の四季は万人に平等です。そして、花もまた無常ではないのかということを説いているのでは…。丁度、時という川の流れの中で、四季という輪が渦を巻いて流れているように。
一方、人生の四季も万人に平等です。
卒業式で学生に問い掛けました。必ずやってくる人生の黄昏に立ったとき、人は必ず自らに問い掛けると。
人生の四季に従って生きた果てに、「自分は誇りを持って、ぶれずに生きてきたのか」と。
去年は、桜が全く目に入りませんでした。今年は、桜の名所でなくても良いから、川縁(かわべり)の、あるいは路傍(みちばた)の桜を愛でようと思っています。
何故なら、年に一度、一生に一度のこの時季の桜なのですから。
妖気漂う夜桜も良いのですが、年齢のせいか、やはり老木の散る桜に心が向かいます。
さくら花幾春かけて老いゆかん
身に水流の音ひびくなり
(馬場あき子)
この歌のような人生の四季を辿りたいと思い続けています。
4月14日(1912)、タイタニック号が氷山に激突して沈没した日です。
この沈没から今年で100年、事故の原因や謎などが以前にも増して賑やかに論じられています。
15日(1865)、リンカーンが狙撃されて死亡しています。
我が国では、3分間スピーチの原型として、わずか272語の短い文章であるゲティスバーグの演説が有名です。(vol.101 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=129)。
彼は、今の視点からみると国の分裂を防ぎつつ、奴隷制度の廃止に漕ぎつけた偉大な政治家です。
同じ日に、レオナルド・ダ・ヴィンチが生まれています(1452)。
鏡面文字の謎、「モナリザ」のミステリー、あるいは同時代の人々が今に伝える超人間性や神秘性など、現在も話題に事欠きません。
今週の花材は、執務室では花蘇芳(ハナズオウ)、秘書室ではカトレアの赤紫が、落ち着きの赤を表現しています。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
列車の車窓から、白梅、辛夷(コブシ)、白木蓮、そして桜が目に入ります。桜前線は、今、北上中です。
霞が関界隈は桜が多いところです。東京都心で一番早く咲く外務省の財務省側にある桜は、早々と散り、他も後を追うように次々と地に還っています。
この時季になるとこの詩を思い出します。
(vol.52 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=78)
(vol.87 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=113)
しかも、齢(よわい)を重ねるに伴って、この詩に寄せる想いも変わってきました。
・
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今年花落ちて顔色改まり
明年花咲いて復た誰か在る
・
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・
年年歳歳花相似たり
歳歳年年人同じからず
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・
・ (劉廷芝〔希夷〕)
この詩は、自然の継続性と人間の無常や儚さを対比するという、漢詩の典型的な体裁をとっています。
この漢詩が我が国にもっとも親しまれている理由は、日本人の感性に寄り添っているからでしょう。
人にもまた、花と同じ一度限りの四季があることを、“同じからず”で示しています。
人から自然をみると、自然の四季は万人に平等です。そして、花もまた無常ではないのかということを説いているのでは…。丁度、時という川の流れの中で、四季という輪が渦を巻いて流れているように。
一方、人生の四季も万人に平等です。
卒業式で学生に問い掛けました。必ずやってくる人生の黄昏に立ったとき、人は必ず自らに問い掛けると。
人生の四季に従って生きた果てに、「自分は誇りを持って、ぶれずに生きてきたのか」と。
去年は、桜が全く目に入りませんでした。今年は、桜の名所でなくても良いから、川縁(かわべり)の、あるいは路傍(みちばた)の桜を愛でようと思っています。
何故なら、年に一度、一生に一度のこの時季の桜なのですから。
妖気漂う夜桜も良いのですが、年齢のせいか、やはり老木の散る桜に心が向かいます。
さくら花幾春かけて老いゆかん
身に水流の音ひびくなり
(馬場あき子)
この歌のような人生の四季を辿りたいと思い続けています。
4月14日(1912)、タイタニック号が氷山に激突して沈没した日です。
この沈没から今年で100年、事故の原因や謎などが以前にも増して賑やかに論じられています。
15日(1865)、リンカーンが狙撃されて死亡しています。
我が国では、3分間スピーチの原型として、わずか272語の短い文章であるゲティスバーグの演説が有名です。(vol.101 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=129)。
彼は、今の視点からみると国の分裂を防ぎつつ、奴隷制度の廃止に漕ぎつけた偉大な政治家です。
同じ日に、レオナルド・ダ・ヴィンチが生まれています(1452)。
鏡面文字の謎、「モナリザ」のミステリー、あるいは同時代の人々が今に伝える超人間性や神秘性など、現在も話題に事欠きません。
今週の花材は、執務室では花蘇芳(ハナズオウ)、秘書室ではカトレアの赤紫が、落ち着きの赤を表現しています。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■花蘇芳(ハナズオウ) マメ科/落葉低木/原産:中国
/江戸時代に渡来。葉が芽吹く前に紅紫色の花を枝いっぱ
いにつける。花期は4月で、花形は蝶を思わせる。白色の花
を咲かせる「白花花蘇芳」(シロバナハナズオウ)もある。
■スカシユリ〔ダブルカクテル〕 ユリ科/球根植物/別
名「アジアンティックハイブリッド」/《名前の由来》花弁の先
端が広く、付け根部分が細くなり、透けることから。スカシユ
リは大輪咲のオリエンタル種に比べ、花が小さく香りもない。
「ダブルカクテル」は八重咲のシックな花色。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1701.jpg
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■花蘇芳(ハナズオウ) マメ科/落葉低木/原産:中国
/江戸時代に渡来。葉が芽吹く前に紅紫色の花を枝いっぱ
いにつける。花期は4月で、花形は蝶を思わせる。白色の花
を咲かせる「白花花蘇芳」(シロバナハナズオウ)もある。
■スカシユリ〔ダブルカクテル〕 ユリ科/球根植物/別
名「アジアンティックハイブリッド」/《名前の由来》花弁の先
端が広く、付け根部分が細くなり、透けることから。スカシユ
リは大輪咲のオリエンタル種に比べ、花が小さく香りもない。
「ダブルカクテル」は八重咲のシックな花色。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1701.jpg
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【秘書室】
■カトレア〔フィニー〕 ラン科/原産:中南
米/“洋ランの女王”と呼ばれる蘭。小輪〜巨
大輪まで品種が豊富。一つの花が大きく、色
鮮やかで華やかな花姿。樹木などの高いとこ
ろに着生する。
■丸葉(マルバ)ルスカス ユリ科/原産:
イラン北部/つややかで光沢のある深緑色の
グリーン。葉のように見える部分は小枝が変
化した葉状茎(ようじょうけい)。本来の葉は退
化している。丈夫でとても日持ちのよいグリー
ン。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1702.jpg