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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.172 − 感慨 −
田圃(たんぼ)には水が張られ、その水面には風や雲、空が映し込まれています。
我が国は、今が一番いい季節です。
若葉が光を浴びてきらきらと輝いています。
その和(やわ)らかい光が、周囲の木々や地面、そして人々までも穏やかにみせてくれます。
この時季、植え込みや生垣のツツジが満開です。植え込みの側では、椿が緑と赤の対比で競演しています。
フルーツ王国を誇っている福島盆地は、梨、林檎、桃が一斉に花を付け、真に桃源郷です。只、農家の方々の授粉作業が、今年は痛々しく感じられます。
川端には菜の花が、庭には連翹(レンギョウ)や喇叭水仙(ラッパスイセン)の黄色、ライラック(リラ)や木蓮(モクレン)の紫、木瓜(ボケ)や海棠(カイドウ)の紅、石楠花(シャクナゲ)の薄桃色が、新緑を背景に春の騒(ざわ)めきを奏(かな)でています。沈丁花(ジンチョウゲ)も香りで存在を主張しています。
大学の法面(のりめん)には、つい先日まで様々な種類の多くの桜が雪柳で足元を飾って咲き誇っていました。
時に降る春の雨は、これらの色彩をより鮮やかにして、膨(ふく)よかな静寂さえもたらしてくれます。
家々に立てられている鯉幟(こいのぼり)も春の華やぎの演出に一役買っています。
一方、花を散らして再びの春まで去っていく木もあります。
構内の木蓮は、花を落として、太い木の幹や枝が勁(つよ)い造形美をみせてくれています。
木蓮は千手といへる手のごとく
立ちし白花(しらはな)今日過ぎてをり
(鈴木幸輔)
夜半、蛙(かえる)や鳥の鳴き声が季節を感じさせてくれます。うるさい程だった蛙がめっきり聞かれなくなって久しいだけに、懐かしい感じがしました。
野菜や花々、そして果物に旬をあまり感じられなくなってきているだけに貴重です。
本学から車で5分もかからないところに片栗(カタクリ)の群生地があります。他日、仕事の合間に、大学を抜け出して行ってきました。小さな里山の斜面の凹地一面に、風に吹かれて咲き誇っていました。
かたくり浄土むらさき浄土風ふけば
花さやさやと地に満ちゆらぐ
(上田三四二〔うえだ・みよじ〕)
二度の大病を得て、医師で歌人でもある著者の生に対する愛惜の思いが満ちています。
さながら、透明感溢れる静謐(せいひつ)な浄土のようです。
5日(土)、大都会の一点の曇りもない空に、大きな満月が出ているのに気付きました。
いやに大きいなと思いながら調べてみたら“事実”でした。“super moon”という現象だそうです。地球と月の距離が1年のうちで最も短くなる時の満月にみられる現象とのことです。自然の不思議さと共に、人間の眼の確かさに我ながら驚かされました。
こういう現象を切っ掛けに、多くの若者が、先人達と同じように、月に関心を持ってくれるといいのですが。
何故なら、古来、日本人ほど月に想いを寄せている人々は居ない(?)のですから。
今週の花材は、執務室、秘書室とも気品を感じさせます。
前者はこの中に気高(けだか)さ、後者は優しさを秘めているようにみえます。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
我が国は、今が一番いい季節です。
若葉が光を浴びてきらきらと輝いています。
その和(やわ)らかい光が、周囲の木々や地面、そして人々までも穏やかにみせてくれます。
この時季、植え込みや生垣のツツジが満開です。植え込みの側では、椿が緑と赤の対比で競演しています。
フルーツ王国を誇っている福島盆地は、梨、林檎、桃が一斉に花を付け、真に桃源郷です。只、農家の方々の授粉作業が、今年は痛々しく感じられます。
川端には菜の花が、庭には連翹(レンギョウ)や喇叭水仙(ラッパスイセン)の黄色、ライラック(リラ)や木蓮(モクレン)の紫、木瓜(ボケ)や海棠(カイドウ)の紅、石楠花(シャクナゲ)の薄桃色が、新緑を背景に春の騒(ざわ)めきを奏(かな)でています。沈丁花(ジンチョウゲ)も香りで存在を主張しています。
大学の法面(のりめん)には、つい先日まで様々な種類の多くの桜が雪柳で足元を飾って咲き誇っていました。
時に降る春の雨は、これらの色彩をより鮮やかにして、膨(ふく)よかな静寂さえもたらしてくれます。
家々に立てられている鯉幟(こいのぼり)も春の華やぎの演出に一役買っています。
一方、花を散らして再びの春まで去っていく木もあります。
構内の木蓮は、花を落として、太い木の幹や枝が勁(つよ)い造形美をみせてくれています。
木蓮は千手といへる手のごとく
立ちし白花(しらはな)今日過ぎてをり
(鈴木幸輔)
夜半、蛙(かえる)や鳥の鳴き声が季節を感じさせてくれます。うるさい程だった蛙がめっきり聞かれなくなって久しいだけに、懐かしい感じがしました。
野菜や花々、そして果物に旬をあまり感じられなくなってきているだけに貴重です。
本学から車で5分もかからないところに片栗(カタクリ)の群生地があります。他日、仕事の合間に、大学を抜け出して行ってきました。小さな里山の斜面の凹地一面に、風に吹かれて咲き誇っていました。
かたくり浄土むらさき浄土風ふけば
花さやさやと地に満ちゆらぐ
(上田三四二〔うえだ・みよじ〕)
二度の大病を得て、医師で歌人でもある著者の生に対する愛惜の思いが満ちています。
さながら、透明感溢れる静謐(せいひつ)な浄土のようです。
5日(土)、大都会の一点の曇りもない空に、大きな満月が出ているのに気付きました。
いやに大きいなと思いながら調べてみたら“事実”でした。“super moon”という現象だそうです。地球と月の距離が1年のうちで最も短くなる時の満月にみられる現象とのことです。自然の不思議さと共に、人間の眼の確かさに我ながら驚かされました。
こういう現象を切っ掛けに、多くの若者が、先人達と同じように、月に関心を持ってくれるといいのですが。
何故なら、古来、日本人ほど月に想いを寄せている人々は居ない(?)のですから。
今週の花材は、執務室、秘書室とも気品を感じさせます。
前者はこの中に気高(けだか)さ、後者は優しさを秘めているようにみえます。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■アリウム〔踊る丹頂〕 ユリ科/球根植
物/ネギやニンニクと同じネギ属の花。茎をカ
ットするとネギの匂いがする。特徴のくねくねと
曲がった茎は成長途中に手を加えたもの。
■カーネーション〔ムーンダスト〕 ナデシコ
科/多年草/母の日に贈る花として古くから
親しまれる。「ムーンダスト」は青いカーネーシ
ョンとして2004年度グッドデザイン金賞を受
賞。ムーンダスト4色のうち、2番目に濃い色の
「プリンセスブルー」を使用。
■アンスリュウム〔ソナタ〕 サトイモ科/常
緑多年草/花弁のように見える苞を鑑賞。花
は苞の中心にある棒状の部分。熱帯原産の
花なので暑さにも強く、非常に長く楽しめる。
■モルセラ シソ科/一年草/ミントのよう
な芳香がある。花を包むような大きな緑色のガ
クを鑑賞。
■モンステラ サトイモ科/多年草/切れ
込みや穴のあいた大きな葉をもつ蔓性植物。
インテリアグリーンとして人気がある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1721.jpg
■アリウム〔踊る丹頂〕 ユリ科/球根植
物/ネギやニンニクと同じネギ属の花。茎をカ
ットするとネギの匂いがする。特徴のくねくねと
曲がった茎は成長途中に手を加えたもの。
■カーネーション〔ムーンダスト〕 ナデシコ
科/多年草/母の日に贈る花として古くから
親しまれる。「ムーンダスト」は青いカーネーシ
ョンとして2004年度グッドデザイン金賞を受
賞。ムーンダスト4色のうち、2番目に濃い色の
「プリンセスブルー」を使用。
■アンスリュウム〔ソナタ〕 サトイモ科/常
緑多年草/花弁のように見える苞を鑑賞。花
は苞の中心にある棒状の部分。熱帯原産の
花なので暑さにも強く、非常に長く楽しめる。
■モルセラ シソ科/一年草/ミントのよう
な芳香がある。花を包むような大きな緑色のガ
クを鑑賞。
■モンステラ サトイモ科/多年草/切れ
込みや穴のあいた大きな葉をもつ蔓性植物。
インテリアグリーンとして人気がある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1721.jpg
【秘書室】
■ニゲラ〔マルベリーローズ〕 キンポウゲ科/一年
草/花弁のように見える部分はガクで、本来の花弁は
退化している。花後、風船のような実になり、中に黒い
種ができる。実になる姿まで長期間楽しめる。黒い種を
もつことから「黒種草」(クロタネソウ)の和名がある。
■カーネーション〔リリアン〕 (理事長室と同花材)
「リリアン」は一本に5〜6輪の花を咲かせるスプレー咲
タイプ。
■ライスフラワー キク科/常緑低木/花期は4〜6
月頃で、名前の通り米粒のような小さな花を房状に咲か
せる。ドライフラワーに適す。今回使用した白色の他、ピ
ンク品種もある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1722.jpg
■ニゲラ〔マルベリーローズ〕 キンポウゲ科/一年
草/花弁のように見える部分はガクで、本来の花弁は
退化している。花後、風船のような実になり、中に黒い
種ができる。実になる姿まで長期間楽しめる。黒い種を
もつことから「黒種草」(クロタネソウ)の和名がある。
■カーネーション〔リリアン〕 (理事長室と同花材)
「リリアン」は一本に5〜6輪の花を咲かせるスプレー咲
タイプ。
■ライスフラワー キク科/常緑低木/花期は4〜6
月頃で、名前の通り米粒のような小さな花を房状に咲か
せる。ドライフラワーに適す。今回使用した白色の他、ピ
ンク品種もある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1722.jpg