HOME > 理事長室からの花だより

理事長室からの花だより

新着 30 件

一覧はこちらから

理事長室からの花だより

2012.06.22

vol.178  − 青葉 −

暁方の時鳥(ホトトギス)、初夏が近いことを告げています。
久し振りに、燕(ツバメ)の巣を見つけました。別なところに板が打ち付けてありましたが、気に入らなかったようです。梅雨空を背景にした3、4羽の燕、時季の使者です。

私は、雨が嫌いではありません。
以前記したように、桟のある出窓で雨音に耳を傾けるのは、自分を取り戻す一時でもあります。
   (vol.49 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=74
   (vol.126 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=159
   (vol.169 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=203

         われのこの安らぎは幾月ぶりならむ
         梅雨曇る青葉の下の一日
                           (荒井 孝)

田園に目を転じると、じゃがいもの花が咲いていました。この時季、エゴノキ、卯木(ウツギ)、山法師(ヤマボウシ)、泰山木(タイサンボク)と何(いず)れも白い花です。
雨に濡れた緑との組み合わせは清冽です。

室内には豪華で気品のある芍薬(シャクヤク)を飾り、豊かな気分を味わっています。
芍薬といえば小野小町の伝説が脳裡に浮かびます。そして、百人一首や六歌仙の不吉(不運)な謎が連想されます。先人の暗諭は深く、大きいと感じさせられます。
鉄瓶で淹れたお茶はまろやかで、一時、心を豊かにしてくれます。

ホテルに泊まる機会が多くあります。
若い時は、夏休みには寝袋を持って、松の根を枕に寝ました。方向転換もできないトイレを備えたホテルなど、全く気にならず、「起きて半畳寝て一畳」、横になれれば良いというのが実際でした。
年齢とともに、若い時のような訳にはいかず、泊まるホテルの質に目が向くようになりました。

先ず気付くのは、ドアの開き方です。自宅やマンションの入口のドアが外開きなのに対して、ホテルは内開きです。廊下がパブリックスペースだからでしょうか。
次に、照明です。海外のホテルや、国内でも高級ホテルでは天井灯がありません。間接照明が一般的です。「陰影礼讃」の時代なら、これが普通だったのでしょうが。
只、疲れていると、スタンドによる間接照明は心地良いものです。事実、今の自分は、帰宅後は部屋の照明をできるだけ落としてしまいます。

海外に出る度に痛感させられるのは、自らの英語のダメさ加減です。
ヨーロッパの人々は、自分達の英語教育のシステムや環境が良いからできるのだと言います。私はこの説明に全く納得していません。

日本人が英語がうまくない(一緒にしないでくれ、と言われるのは承知のうえで)のは、サミュエル・ハンチントンが著書「文明の衝突」で指摘しているように、我が国の一言語、一国の文化圏ということが一番大きな理由でしょう。
もう一つ、英語の論文を書くときに日本語との違いを痛感します。それは、日本語のあいまいさです。
面白い指摘があります。英語は中心から周辺に向かう「コンセプト重視」の文型に対して、日本語は遠景から近景に進む「視点重視」だというのです。その特徴は、主語と動詞に典型的に表されています。

今週の花材は、執務室は“rain forest(雨の森林)”を想起させる緑と碧の協演です。
一方、秘書室は、乾いた穏やかな6月です。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)


今週の花


【理事長室】
■ミヤマシグレ   スイカズラ科/落葉低木
/低山から深山の薄暗い林内に自生するガマ
ズミの一種。花期は6〜7月で、枝先に小さな
白い花を多数咲かせる。花後は実をつけ、秋
に真っ赤に熟す。
■ユウギリソウ〔レイクフォレストブルー〕   
キキョウ科/多年草/原産:南ヨーロッパ/小
さな花が密集してひとつの大きな花のように見
える。ひとつひとつの花は筒状で、雄しべが長
く突き出る。「レイクフォレストブルー」は鮮やか
なブルー。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1781.jpg

【秘書室】
■トルコギキョウ〔ナイチンゲール〕   リンドウ科/多年草
/原産:北アメリカ/品種改良が盛んで、毎年数多くの新品
種が出る。花色、大きさ、咲き方など多岐にわたる。夏の花
なので、比較的暑さにも強く、花持ちが良い。
■リューカデンドロン〔ディスカラー〕   ヤマモガシ科/原
産:南アフリカ/花弁のように見える部分は苞で、その中に
花序がある。非常に長く楽しめ、そのままドライフラワーにな
る。
■グリーントリュフ   ナデシコ科/多年草/原産:ヨーロッ
パ東南部/マリモや芝を想わせる独特の花姿でナデシコの
一種。ふさふさした部分は、花、雄しべ雌しべが変化したも
の。
■アンスリュウム〔みどり〕   サトイモ科/常緑多年草/
花弁のように見える部分は苞で、中心の棒状の部分が花。
熱帯原産の花で、暑さに強く長く楽しめる。
■ドラセナコンシンネ〔トリカラー〕   リュウゼツラン科/原
産:熱帯アフリカ/縦縞模様の細い葉をもつドラセナ。他に
葉色の違う「レインボー」、「ホワイボリー」もある。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1782.jpg

▲TOPへ