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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.189 − 儚さ −
日中は暑くても、朝晩の大気や昼の日差しは秋のそれで、やわらかです。
“稲刈り前線”はあっという間に北上してきています。
花守の家屋の入口、紅と白の対比で萩とチューベローズ(?)が佇んでいました。
万葉集には萩の歌が最も多いそうです。この木の花には祈りの意味があるのでしょうか。
子供の頃によく通った学用品店が閉店したのを聞きました。
時代の流れに逆らうことは簡単でないことを改めて思い知らされます。
当時、日常生活の中に確かにあった御用聞きのお兄さん、鋳掛屋(いかけや)や研ぎ師のおじさん、錺屋(かざりや)のおじいさん、今は心の裡(うち)の残像です。
人は、頻(しき)りに「時代に適応しろ」と言います。
しかし、自分の職業や生き方に誇りを持っている人程、簡単に変えられるものではありません。
ここにも王義之の「後世から今日を見れば、今日から往昔を見ると同様であろう」、人生はすべてこの絶えざる嘆惜のうちに過ぎていく、悠々たる時の流れとその対極にある人生の儚さを感じます。
夜道を歩いていると、戸や窓を開け放っている家屋から蚊取り線香の香りが漂ってきました。
一瞬で子供の頃に戻っていました。
いもうとの小さき歩みいそがせて
千代紙かひに行く月夜かな
木下利玄
舗装もされていない月明かりの道路が、セピア色の写真のように浮かんできます。
この気配は、川瀬巴水(かわせ・はすい)の浮世絵が漂わせている空気です。
福島では、復興事業の策定や事業実施に、猫の手も借りたい状態です。
原発事故以前との切望は、落華枝に上り難し、です。次から次へと選択や判断を迫られる毎日、樹静かならんと欲すれども風止まず、「五十鈴川の鴨」(竹西寛子)の主人公のような心境には至りません。
9月15日は、我が国における商人の職業倫理を作った石門心学(せきもんしんがく)の創始者、石田梅岩(いしだ・ばいがん)の誕生日です(1685)。彼は、先駆者の鈴木正三(すずき・しょうさん)とともに我が国における実業思想の祖です。キリスト教世界におけるマックス・ウェーバーのような位置づけでしょうか。
明治以降、我が国での資本主義の急速な確立は、たまたまではなく、遥か鎌倉時代以来、庶民の間に脈々と伝承されてきた精神が彼等により思想としてまとめられたということのようです。
9月20日、シベリウスの命日です(1957)。戦後まで生きていたと知った時、驚きました。
彼の交響曲第2番を聴いてクラシック音楽にのめり込みました。
(vol.17 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=33)
チャイコフスキー、ドヴォルザーク、あるいはブラームスに通じる哀愁を帯びた抒情性を彼に感じます。
先年、スウェーデンの交響楽団が来日公演した際、スタッフにプロの音楽家としてシベリウスのどの曲が好きか聞いたところ、第2番とともに第7番という答えが返ってきました。
今週の花材は、執務室は秋の澄み切った大気を、秘書室は秋の静けさを表現しています。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
“稲刈り前線”はあっという間に北上してきています。
花守の家屋の入口、紅と白の対比で萩とチューベローズ(?)が佇んでいました。
万葉集には萩の歌が最も多いそうです。この木の花には祈りの意味があるのでしょうか。
子供の頃によく通った学用品店が閉店したのを聞きました。
時代の流れに逆らうことは簡単でないことを改めて思い知らされます。
当時、日常生活の中に確かにあった御用聞きのお兄さん、鋳掛屋(いかけや)や研ぎ師のおじさん、錺屋(かざりや)のおじいさん、今は心の裡(うち)の残像です。
人は、頻(しき)りに「時代に適応しろ」と言います。
しかし、自分の職業や生き方に誇りを持っている人程、簡単に変えられるものではありません。
ここにも王義之の「後世から今日を見れば、今日から往昔を見ると同様であろう」、人生はすべてこの絶えざる嘆惜のうちに過ぎていく、悠々たる時の流れとその対極にある人生の儚さを感じます。
夜道を歩いていると、戸や窓を開け放っている家屋から蚊取り線香の香りが漂ってきました。
一瞬で子供の頃に戻っていました。
いもうとの小さき歩みいそがせて
千代紙かひに行く月夜かな
木下利玄
舗装もされていない月明かりの道路が、セピア色の写真のように浮かんできます。
この気配は、川瀬巴水(かわせ・はすい)の浮世絵が漂わせている空気です。
福島では、復興事業の策定や事業実施に、猫の手も借りたい状態です。
原発事故以前との切望は、落華枝に上り難し、です。次から次へと選択や判断を迫られる毎日、樹静かならんと欲すれども風止まず、「五十鈴川の鴨」(竹西寛子)の主人公のような心境には至りません。
9月15日は、我が国における商人の職業倫理を作った石門心学(せきもんしんがく)の創始者、石田梅岩(いしだ・ばいがん)の誕生日です(1685)。彼は、先駆者の鈴木正三(すずき・しょうさん)とともに我が国における実業思想の祖です。キリスト教世界におけるマックス・ウェーバーのような位置づけでしょうか。
明治以降、我が国での資本主義の急速な確立は、たまたまではなく、遥か鎌倉時代以来、庶民の間に脈々と伝承されてきた精神が彼等により思想としてまとめられたということのようです。
9月20日、シベリウスの命日です(1957)。戦後まで生きていたと知った時、驚きました。
彼の交響曲第2番を聴いてクラシック音楽にのめり込みました。
(vol.17 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=33)
チャイコフスキー、ドヴォルザーク、あるいはブラームスに通じる哀愁を帯びた抒情性を彼に感じます。
先年、スウェーデンの交響楽団が来日公演した際、スタッフにプロの音楽家としてシベリウスのどの曲が好きか聞いたところ、第2番とともに第7番という答えが返ってきました。
今週の花材は、執務室は秋の澄み切った大気を、秘書室は秋の静けさを表現しています。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■デルフィニュウム〔オーロラブルーインプ〕
キンポウゲ科/原産:ヨーロッパ/《名前の由
来》蕾の形がイルカに似ていることから
“Dolphin”→“Delpinum” /ブルー〜ホワイト
系の花色が豊富で、250種程ある。「オーロ
ラ」は茎が硬い八重咲の品種。他の花にはな
い鮮やかな青色が特徴。
■アンスリュウム サトイモ科/常緑多年
草/ツヤツヤした造花と見間違うような花。花
弁のように見える部分は苞で、中心の棒状が
花。白色「シンシア」、緑色「ミドリ」
■ドラセナ〔コーディラインスノーホワイト〕
リュウゼツラン科/常緑低木/ドラセナ類は日
本で出回る観葉植物の代表種。「コーディライ
ン」は正式にはドラセナではなくコルジリネ。以
前ドラセナ属に分類されていたことから現在も
“ドラセナ”の名で流通。「スノーホワイト」は青
葉の縁に白が入る。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1891.jpg
■デルフィニュウム〔オーロラブルーインプ〕
キンポウゲ科/原産:ヨーロッパ/《名前の由
来》蕾の形がイルカに似ていることから
“Dolphin”→“Delpinum” /ブルー〜ホワイト
系の花色が豊富で、250種程ある。「オーロ
ラ」は茎が硬い八重咲の品種。他の花にはな
い鮮やかな青色が特徴。
■アンスリュウム サトイモ科/常緑多年
草/ツヤツヤした造花と見間違うような花。花
弁のように見える部分は苞で、中心の棒状が
花。白色「シンシア」、緑色「ミドリ」
■ドラセナ〔コーディラインスノーホワイト〕
リュウゼツラン科/常緑低木/ドラセナ類は日
本で出回る観葉植物の代表種。「コーディライ
ン」は正式にはドラセナではなくコルジリネ。以
前ドラセナ属に分類されていたことから現在も
“ドラセナ”の名で流通。「スノーホワイト」は青
葉の縁に白が入る。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1891.jpg
【秘書室】
■ピンクッション〔ベルドファイア〕 ヤマモガ
シ科/常緑低木/原産:南アフリカ/《名前の
由来》針刺し(ピンクッション)に似た花姿から
/針山にマチ針を刺したような個性的な花。
■ヒペリカム〔マジカルトリンプ〕 オトギリソ
ウ科/半常緑低木/初夏に黄色い花が咲く。
主に花後の実を鑑賞する切り花として流通。
品種は豊富で、赤・ピンク・茶・白・緑がある。
■セダム ベンケイソウ科/600種以上あ
る多肉植物。耐寒性耐暑性があり、乾燥にも
強い。切り花で流通する花が咲く品種も、丈夫
で長く楽しめる。
■雪柳〔塗雪柳(ヌリユキヤナギ)〕 バラ科
/落葉低木/原産:日本・中国/《名前の由
来》柳のように枝がしなやかに垂れ、花を散ら
した様子が雪が降ったかのように見えることか
ら/春に小さな花を枝いっぱいに咲かせる。
「塗雪柳」は紅葉したかのように赤く染めたも
の。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1892.jpg
■ピンクッション〔ベルドファイア〕 ヤマモガ
シ科/常緑低木/原産:南アフリカ/《名前の
由来》針刺し(ピンクッション)に似た花姿から
/針山にマチ針を刺したような個性的な花。
■ヒペリカム〔マジカルトリンプ〕 オトギリソ
ウ科/半常緑低木/初夏に黄色い花が咲く。
主に花後の実を鑑賞する切り花として流通。
品種は豊富で、赤・ピンク・茶・白・緑がある。
■セダム ベンケイソウ科/600種以上あ
る多肉植物。耐寒性耐暑性があり、乾燥にも
強い。切り花で流通する花が咲く品種も、丈夫
で長く楽しめる。
■雪柳〔塗雪柳(ヌリユキヤナギ)〕 バラ科
/落葉低木/原産:日本・中国/《名前の由
来》柳のように枝がしなやかに垂れ、花を散ら
した様子が雪が降ったかのように見えることか
ら/春に小さな花を枝いっぱいに咲かせる。
「塗雪柳」は紅葉したかのように赤く染めたも
の。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1892.jpg