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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.191 − 風 −
台風一過、早朝の虹が橋を跨(また)いでいました。道路沿いには赤い実をつけた木々が目立ちます。
休日、朝の雨、人気(ひとけ)のないビジネス街、街路樹の黄色い落ち葉が舗装路の黒の上に散り落ち、路上が琳派の絵のようです。雨の音が、都会の街路に生じた静寂さを一層強調しています。
独り、路の真ん中を歩いていると、体が大気に溶け込み、心の中まで静謐になってきます。
会津路、高速道路の傍らには芒(ススキ)、畦道には秋桜(コスモス)、そして黄金色の見渡す限りの田圃(たんぼ)、所々に蕎麦(ソバ)の花が白でアクセントになっています。
この時季の会津路は、人の心を嫋(たお)やかにしてくれます。風がススキやコスモスを揺らし、秋の訪れを知らせています。
端居より とほしく見ゆる倉間の
コスモスの揺れ 秋づきにけり
中村憲吉
若い時には気にもしなかったかすかな気配、例えば風のそよぎを今は愛しく感じます。
仕事での高崎、帰りの車中で、我が国で初めての総2階建て新幹線車両のE1系が、9月末で定期運行を終えるというアナウンスがありました。
約20年間、JR東日本管内で運行されていました。2階席に最初に座った時、見晴らしの良さに別世界の観がしたことを覚えています。遠くまで見渡せるせいか、眼前に展開する景色がゆっくり移動していきます。
2階建て車両導入の背景にあった、東京駅の車両受け入れ能力の不足、東海道新幹線と違う乗客の季節毎の激しい変動、沿線人口の多くないことなどの変化とともに、車両編成の効率重視の結果、当然の帰結だったのでしょう。もう少しすると、この総2階建ての新幹線の車両も“失ったものでしか語れないこと”に属してしまいます。
先日の三連休の中日、新幹線からの車窓、秋空のもと、バイクが高速道路を一列になって疾走していました。
若い時、サイドカーに憧れていました。只、研修医時代にバイク事故の悲惨さをみてきたこと、そして日々の忙しさに紛れて、その夢はすっかり忘れていました。
気が付けば、バイクを乗り廻す年齢はとうに過ぎてしまいました。ここでも時の非情さを感じます。
10月4日、孤高の天才ピアニスト、グレン・グールドが突然に逝去した日です(1982)。
彼のデビュー曲であるゴルドベルグ変奏曲(1955年録音)は、当時大きな“騒ぎ”を巻き起こしました。当時、この曲は世に広く知られてはいなかったように記憶しています。最初の印象は、テンポが非常に速い、クラシックではなくジャズか、でした。
1981年の再録音は、1955年のそれとは全く異なっていました。どちらが良いかで百家争鳴(ひゃっかそうめい)の観があったのを懐かしく思い出します。
時を経た2回の演奏、好き嫌いは別として、新鮮な驚きや感動という点では、断然、前者の衝撃が大きく、これからも神話として語り継がれてゆくのでしょう。
今週の花材は、執務室はこの時季を代表する紅い実、秘書室は菊のような花で秋を知らせてくれています。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
休日、朝の雨、人気(ひとけ)のないビジネス街、街路樹の黄色い落ち葉が舗装路の黒の上に散り落ち、路上が琳派の絵のようです。雨の音が、都会の街路に生じた静寂さを一層強調しています。
独り、路の真ん中を歩いていると、体が大気に溶け込み、心の中まで静謐になってきます。
会津路、高速道路の傍らには芒(ススキ)、畦道には秋桜(コスモス)、そして黄金色の見渡す限りの田圃(たんぼ)、所々に蕎麦(ソバ)の花が白でアクセントになっています。
この時季の会津路は、人の心を嫋(たお)やかにしてくれます。風がススキやコスモスを揺らし、秋の訪れを知らせています。
端居より とほしく見ゆる倉間の
コスモスの揺れ 秋づきにけり
中村憲吉
若い時には気にもしなかったかすかな気配、例えば風のそよぎを今は愛しく感じます。
仕事での高崎、帰りの車中で、我が国で初めての総2階建て新幹線車両のE1系が、9月末で定期運行を終えるというアナウンスがありました。
約20年間、JR東日本管内で運行されていました。2階席に最初に座った時、見晴らしの良さに別世界の観がしたことを覚えています。遠くまで見渡せるせいか、眼前に展開する景色がゆっくり移動していきます。
2階建て車両導入の背景にあった、東京駅の車両受け入れ能力の不足、東海道新幹線と違う乗客の季節毎の激しい変動、沿線人口の多くないことなどの変化とともに、車両編成の効率重視の結果、当然の帰結だったのでしょう。もう少しすると、この総2階建ての新幹線の車両も“失ったものでしか語れないこと”に属してしまいます。
先日の三連休の中日、新幹線からの車窓、秋空のもと、バイクが高速道路を一列になって疾走していました。
若い時、サイドカーに憧れていました。只、研修医時代にバイク事故の悲惨さをみてきたこと、そして日々の忙しさに紛れて、その夢はすっかり忘れていました。
気が付けば、バイクを乗り廻す年齢はとうに過ぎてしまいました。ここでも時の非情さを感じます。
10月4日、孤高の天才ピアニスト、グレン・グールドが突然に逝去した日です(1982)。
彼のデビュー曲であるゴルドベルグ変奏曲(1955年録音)は、当時大きな“騒ぎ”を巻き起こしました。当時、この曲は世に広く知られてはいなかったように記憶しています。最初の印象は、テンポが非常に速い、クラシックではなくジャズか、でした。
1981年の再録音は、1955年のそれとは全く異なっていました。どちらが良いかで百家争鳴(ひゃっかそうめい)の観があったのを懐かしく思い出します。
時を経た2回の演奏、好き嫌いは別として、新鮮な驚きや感動という点では、断然、前者の衝撃が大きく、これからも神話として語り継がれてゆくのでしょう。
今週の花材は、執務室はこの時季を代表する紅い実、秘書室は菊のような花で秋を知らせてくれています。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■ウメモドキ モチノキ科/落葉低木/《名前の由来》
葉の形が梅に似ていることから/6月頃に薄紫の小花を咲
かせ、9〜10月に赤い実をつける。まとまりの良い樹形で、
庭木としてよく利用される。
■菊〔パンテオン〕 キク科/多年草/原産:オランダ/
ダリアのような花姿のデコラ咲き品種。菊なので長く鑑賞で
きる。「パンテオン」は赤茶色の渋い色。
■アンスリュウム〔シンシア〕 サトイモ科/常緑多年草
/原産:中南米/一見造花と見間違うような南国の花。花
弁のように見える部分は苞で、棒状の部分が花。
■ユーカリ〔ポポラスベリー〕 フトモモ科/常緑高木
/原産:オーストラリア/原産地を中心に約600種分布。コ
アラの食べる木として有名。「ポポラスベリー」は花が咲くま
でに成長し、つぼみをたくさん付けたもの。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1911.jpg
■ウメモドキ モチノキ科/落葉低木/《名前の由来》
葉の形が梅に似ていることから/6月頃に薄紫の小花を咲
かせ、9〜10月に赤い実をつける。まとまりの良い樹形で、
庭木としてよく利用される。
■菊〔パンテオン〕 キク科/多年草/原産:オランダ/
ダリアのような花姿のデコラ咲き品種。菊なので長く鑑賞で
きる。「パンテオン」は赤茶色の渋い色。
■アンスリュウム〔シンシア〕 サトイモ科/常緑多年草
/原産:中南米/一見造花と見間違うような南国の花。花
弁のように見える部分は苞で、棒状の部分が花。
■ユーカリ〔ポポラスベリー〕 フトモモ科/常緑高木
/原産:オーストラリア/原産地を中心に約600種分布。コ
アラの食べる木として有名。「ポポラスベリー」は花が咲くま
でに成長し、つぼみをたくさん付けたもの。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1911.jpg
【秘書室】
■風船唐綿(フウセントウワタ) ガガイモ科/原産:南
アフリカ/夏に小さな白い花が咲く。トゲトゲした紙風船の
ような実を鑑賞するものとして流通。晩秋に実が熟すと、
パカッと割れて種があらわれる。
■フリースドルフ ナス科/一年草/観賞用の唐辛子
の一種。枝にパプリカを小さくしたような実をたくさんつけ
る。今回は黄色を使用、他に赤やオレンジもある。
■ピンクッション〔ミーガン〕ヤマモガシ科/常緑低木/原
産:南アフリカ/《名前の由来》針刺しに似た花姿から/
針山に待ち針を刺したような独特の花姿。待ち針のように
見える一つ一つが雄しべ。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1912.jpg
■風船唐綿(フウセントウワタ) ガガイモ科/原産:南
アフリカ/夏に小さな白い花が咲く。トゲトゲした紙風船の
ような実を鑑賞するものとして流通。晩秋に実が熟すと、
パカッと割れて種があらわれる。
■フリースドルフ ナス科/一年草/観賞用の唐辛子
の一種。枝にパプリカを小さくしたような実をたくさんつけ
る。今回は黄色を使用、他に赤やオレンジもある。
■ピンクッション〔ミーガン〕ヤマモガシ科/常緑低木/原
産:南アフリカ/《名前の由来》針刺しに似た花姿から/
針山に待ち針を刺したような独特の花姿。待ち針のように
見える一つ一つが雄しべ。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1912.jpg