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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.192 − 月 −
庭の山桜や山法師の葉が紅く色づき始めました。
土手には芒(ススキ)が銀波のように風にそよいでいます。秋の芒、季節を知らせてくれる水先案内人です。
この時季、海から秋刀魚、山から茸や栗、畑から様々な果物、“秋の恵み”が揃います。
軒先で七輪を使って秋刀魚を焼いた経験があります。佐藤春夫の「秋刀魚の歌」を思い出します。
今は、近所からの苦情、家の中では警報器に気を付けなければなりません。
戸外では、青空の下(もと)、赤い実が目につきます。ウメモドキ、ツルウメモドキ、山査子(サンザシ)、珊瑚樹(サンゴジュ)、七竈(ナナカマド)、枯れゆく田園の中、はっとさせる魅力があります。
どこからともなく金木犀(キンモクセイ)の香りが漂ってくるのも今です。
家の中は、竜胆(リンドウ)、桔梗(キキョウ)の青、撫子(ナデシコ)の紅、菊の黄が季節を感じさせてくれます。
このところ、国内外での苦難の今、戊辰の戦いの後の会津藩の武士やその子供の生き方を人々が振り返っています。
義和団の乱(1900)における柴五郎中佐、ラフカディオハーンから「神のような人」と尊敬された秋月悌次郎、山川浩・健次郎・捨松の兄弟妹、「鬼の官兵衛」と謳われた佐川官兵衛、「北海道の赤ひげ」と敬われた関場不二彦などの名前を目にします。
厳しい境遇が人を磨いたのです。「何かを得るには何かを失う(捨てる)」は、ここでも真実です。
この時季は、気温や湿度が下がり、大気の透明度が高くなります。そして、中秋の名月、太陽の沈む頃、東から昇ってきます。今年は充分な鑑賞は叶いませんでしたが、雲間から一瞬顔をみせてくれました。
半夜 碧き雲収まり
中天 素(しろ)き月流る
城を開いて好き客を邀(むか)え
酒を置いて清き秋を賞す
影は透りて衣香潤おい
光は凝りて歌う黛(まゆずみ)は愁う
斜ける輝きは猶お玩(もてあそ)ぶ可く
宴を移して西楼に上(のぼ)らん
劉禹錫
いつか、このような場を持ちたいものです。月を愛で、月の光を浴びて酒を酌み交わす、そして遠くの人(友)を想うのは、人間の理想の一つのような気がします。
月の名曲というと、西洋では、題名や歌詞は月自体というよりは「月の光」とか「月の夜」など、月に寄せての何かに焦点があるように感じます。我が国では、月自体が主たる鑑賞の対象です。
人去りてのちのしづけき月の面や
満月となりて照りわたるなり
上田三四二
10月12日、コロンブスがサンサルバドルに到着した日です(1492)。
彼の航海によって南北アメリカ大陸が世界史に登場し、動乱の世界の幕開けです。力作「銃・病原菌・鉄」(ジャレド・ダイアモンド)がこの悲劇の理由を、壮大な考察で明らかにしてくれています。
今週の花材は、執務室は深い秋を、秘書室は澄んだ秋を感じさせてくれます。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
土手には芒(ススキ)が銀波のように風にそよいでいます。秋の芒、季節を知らせてくれる水先案内人です。
この時季、海から秋刀魚、山から茸や栗、畑から様々な果物、“秋の恵み”が揃います。
軒先で七輪を使って秋刀魚を焼いた経験があります。佐藤春夫の「秋刀魚の歌」を思い出します。
今は、近所からの苦情、家の中では警報器に気を付けなければなりません。
戸外では、青空の下(もと)、赤い実が目につきます。ウメモドキ、ツルウメモドキ、山査子(サンザシ)、珊瑚樹(サンゴジュ)、七竈(ナナカマド)、枯れゆく田園の中、はっとさせる魅力があります。
どこからともなく金木犀(キンモクセイ)の香りが漂ってくるのも今です。
家の中は、竜胆(リンドウ)、桔梗(キキョウ)の青、撫子(ナデシコ)の紅、菊の黄が季節を感じさせてくれます。
このところ、国内外での苦難の今、戊辰の戦いの後の会津藩の武士やその子供の生き方を人々が振り返っています。
義和団の乱(1900)における柴五郎中佐、ラフカディオハーンから「神のような人」と尊敬された秋月悌次郎、山川浩・健次郎・捨松の兄弟妹、「鬼の官兵衛」と謳われた佐川官兵衛、「北海道の赤ひげ」と敬われた関場不二彦などの名前を目にします。
厳しい境遇が人を磨いたのです。「何かを得るには何かを失う(捨てる)」は、ここでも真実です。
この時季は、気温や湿度が下がり、大気の透明度が高くなります。そして、中秋の名月、太陽の沈む頃、東から昇ってきます。今年は充分な鑑賞は叶いませんでしたが、雲間から一瞬顔をみせてくれました。
半夜 碧き雲収まり
中天 素(しろ)き月流る
城を開いて好き客を邀(むか)え
酒を置いて清き秋を賞す
影は透りて衣香潤おい
光は凝りて歌う黛(まゆずみ)は愁う
斜ける輝きは猶お玩(もてあそ)ぶ可く
宴を移して西楼に上(のぼ)らん
劉禹錫
いつか、このような場を持ちたいものです。月を愛で、月の光を浴びて酒を酌み交わす、そして遠くの人(友)を想うのは、人間の理想の一つのような気がします。
月の名曲というと、西洋では、題名や歌詞は月自体というよりは「月の光」とか「月の夜」など、月に寄せての何かに焦点があるように感じます。我が国では、月自体が主たる鑑賞の対象です。
人去りてのちのしづけき月の面や
満月となりて照りわたるなり
上田三四二
10月12日、コロンブスがサンサルバドルに到着した日です(1492)。
彼の航海によって南北アメリカ大陸が世界史に登場し、動乱の世界の幕開けです。力作「銃・病原菌・鉄」(ジャレド・ダイアモンド)がこの悲劇の理由を、壮大な考察で明らかにしてくれています。
今週の花材は、執務室は深い秋を、秘書室は澄んだ秋を感じさせてくれます。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■ミナヅキ〔秋色ミナヅキ〕 アジサイ科/
落葉低木/《名前の由来》旧暦の6月頃に咲
くことから“水無月”/7〜9月に白い花が咲
く。「秋色ミナヅキ」は夜間温度が低下すること
で、白からピンク色染まったもの。
■ピンポン菊 キク科/多年草/原産:オ
ランダ/ピンポン玉のようにまんまるに咲く可
愛い菊。日持ちする菊の中でも特に長く楽しめ
る。今回は白と黄色の2色を使用。
■ドウダンツツジ ツツジ科/落葉低木/
原産:日本/4〜5月頃にスズランに似た白い
小さな花が咲く。新緑・花期・紅葉と一年を通
して楽しめる樹木。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1921.jpg
■ミナヅキ〔秋色ミナヅキ〕 アジサイ科/
落葉低木/《名前の由来》旧暦の6月頃に咲
くことから“水無月”/7〜9月に白い花が咲
く。「秋色ミナヅキ」は夜間温度が低下すること
で、白からピンク色染まったもの。
■ピンポン菊 キク科/多年草/原産:オ
ランダ/ピンポン玉のようにまんまるに咲く可
愛い菊。日持ちする菊の中でも特に長く楽しめ
る。今回は白と黄色の2色を使用。
■ドウダンツツジ ツツジ科/落葉低木/
原産:日本/4〜5月頃にスズランに似た白い
小さな花が咲く。新緑・花期・紅葉と一年を通
して楽しめる樹木。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1921.jpg
【秘書室】
■LAユリ〔ハイドパーク〕 ユリ科/球根植物/原産:南ア
フリカ/《名前の由来》鉄砲百合(Longifrorum)とスカシユリ
(Asiantic)をかけあわせたユリ/両種の良いところを持ち合
わせた中輪咲の品種。「ハイドパーク」はオレンジ色。
■ヒペリカム〔チェリー〕 オトギリソウ科/半常緑低木/初
夏に黄色い花が咲く。主に花後の実を鑑賞するものとして流
通。「チェリー」はピンク色。
■ゴールデンカスケード フトモモ科/原産:オーストラリア
/細い茎の先端に黄色い穂状の花が咲く。ドライフラワーに適
す。
■アンスリュウム〔ミドリ〕 サトイモ科/常緑多年草/ツヤ
ツヤした造花と見間違うような花。花弁のように見える部分は
苞で棒状の部分が花。
■クロトン トウダイグサ科/常緑低木/肉厚な葉で葉色
や葉形が多種にわたる観葉植物。切り葉としても丈夫で、長
期間鮮やかな葉色が楽しめる。沖縄などの暖地では生垣とし
て利用。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1922.jpg
■LAユリ〔ハイドパーク〕 ユリ科/球根植物/原産:南ア
フリカ/《名前の由来》鉄砲百合(Longifrorum)とスカシユリ
(Asiantic)をかけあわせたユリ/両種の良いところを持ち合
わせた中輪咲の品種。「ハイドパーク」はオレンジ色。
■ヒペリカム〔チェリー〕 オトギリソウ科/半常緑低木/初
夏に黄色い花が咲く。主に花後の実を鑑賞するものとして流
通。「チェリー」はピンク色。
■ゴールデンカスケード フトモモ科/原産:オーストラリア
/細い茎の先端に黄色い穂状の花が咲く。ドライフラワーに適
す。
■アンスリュウム〔ミドリ〕 サトイモ科/常緑多年草/ツヤ
ツヤした造花と見間違うような花。花弁のように見える部分は
苞で棒状の部分が花。
■クロトン トウダイグサ科/常緑低木/肉厚な葉で葉色
や葉形が多種にわたる観葉植物。切り葉としても丈夫で、長
期間鮮やかな葉色が楽しめる。沖縄などの暖地では生垣とし
て利用。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/1922.jpg