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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.209 − 稚 (いわく) −
雪が降った翌朝、快晴です。足元は辛いのですが、空の青が心を軽くしてくれます。
ようやく溶けたと思ったら、再びの雪景色、除雪作業は、そこに住む人間にとっては、溜息の出る思いです。
そんな中、職員の方の構内での除雪作業、シャベルから発せられる、凍った雪を取り除く規則的な音が、執務室まで届いてきます。只々、感謝しての仕事です。
この度の春の雪、あちこちに、円山応挙の「雪松図屏風」と見紛(まご)うような景色が眼前に展開しています。道端、廊下、あるいはロビーで暫し足を止めて見入って、心に栄養を与えています。
東京に降る雪、春の雪です。
福島でのこの湿った大雪は、この地にも春の訪れが近いことの兆しです。只、すぐに溶けてしまう雪は、早朝、ささくれ立った氷と化します。車で踏みしだくと、“バリバリ”という音は小気味好いのですが、スリップの危険を知らせる警告音でもあります。
カナダで修業していた時、冬に備えてスパイクタイヤを求めて店に行ったところ、店員の方にどうしても理解してもらえませんでした。ラジアルタイヤはあるが、そんなタイヤはないとのことでした。
当時、スパイクタイヤが手に入らないのは私の語学力不足と思っていました。後で考えてみると、融雪剤を撒き、24時間除雪しているので、彼(か)の地では必要なかったのです。今では、スパイクタイヤは過去です。
この時季、水仙、あるいはフリージアを活けると、雪や乾いた青空を背景にした黄色と凜とした佇まいが、目に鮮やかです。
水仙や白き障子のとも映り
芭蕉
雪の日、鉄路、奥羽山脈の麓を走る時、大地は、空や山との境界がなくなり、白一色に覆われます。
屋敷林だけが蹲(うずくま)ったような姿で、黒緑の色彩でその存在を教えてくれます。
年末・年始、成人式、若い人やかつて若かった人が、故郷(ふるさと)に帰ってきます。一張羅(いっちょうら)で粧(めか)し込んでの漫(そぞ)ろ歩き、彼・彼女等の気分の高揚や気負いがこちらにまで伝ってきます。
昔、彼・彼女等が自分で、あるいは子供を連れて夜間に病院を受診して “東京の病院では…”とよく非難がましく言われました。一瞬カッとなり、「私は、つい最近まで東京都心の○病院で働いていました」と切口上で言い返して、黙らせていたものです。
若者の気負いは、今なら、微苦笑して聞き流せます。
2月10日(1904)、日露戦争の開戦した日です。約100年前の出来事です。
1904年を基点として100年前と後を考えると、時代の目まぐるしい動きに自分の想像が付いていきません。
人間の想像力なんて、大したものではないことを思い知らされます。
2月12日(1538)、風景画を最初に描いた画家として知られるアルトドルファーの命日です。
創始者というのは、それだけで尊敬に値します。
今週の花材は、執務室の雪柳と百合、秘書室のカラーの白が、雪が降った翌朝の爽やかさを象徴しているようです。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
ようやく溶けたと思ったら、再びの雪景色、除雪作業は、そこに住む人間にとっては、溜息の出る思いです。
そんな中、職員の方の構内での除雪作業、シャベルから発せられる、凍った雪を取り除く規則的な音が、執務室まで届いてきます。只々、感謝しての仕事です。
この度の春の雪、あちこちに、円山応挙の「雪松図屏風」と見紛(まご)うような景色が眼前に展開しています。道端、廊下、あるいはロビーで暫し足を止めて見入って、心に栄養を与えています。
東京に降る雪、春の雪です。
福島でのこの湿った大雪は、この地にも春の訪れが近いことの兆しです。只、すぐに溶けてしまう雪は、早朝、ささくれ立った氷と化します。車で踏みしだくと、“バリバリ”という音は小気味好いのですが、スリップの危険を知らせる警告音でもあります。
カナダで修業していた時、冬に備えてスパイクタイヤを求めて店に行ったところ、店員の方にどうしても理解してもらえませんでした。ラジアルタイヤはあるが、そんなタイヤはないとのことでした。
当時、スパイクタイヤが手に入らないのは私の語学力不足と思っていました。後で考えてみると、融雪剤を撒き、24時間除雪しているので、彼(か)の地では必要なかったのです。今では、スパイクタイヤは過去です。
この時季、水仙、あるいはフリージアを活けると、雪や乾いた青空を背景にした黄色と凜とした佇まいが、目に鮮やかです。
水仙や白き障子のとも映り
芭蕉
雪の日、鉄路、奥羽山脈の麓を走る時、大地は、空や山との境界がなくなり、白一色に覆われます。
屋敷林だけが蹲(うずくま)ったような姿で、黒緑の色彩でその存在を教えてくれます。
年末・年始、成人式、若い人やかつて若かった人が、故郷(ふるさと)に帰ってきます。一張羅(いっちょうら)で粧(めか)し込んでの漫(そぞ)ろ歩き、彼・彼女等の気分の高揚や気負いがこちらにまで伝ってきます。
昔、彼・彼女等が自分で、あるいは子供を連れて夜間に病院を受診して “東京の病院では…”とよく非難がましく言われました。一瞬カッとなり、「私は、つい最近まで東京都心の○病院で働いていました」と切口上で言い返して、黙らせていたものです。
若者の気負いは、今なら、微苦笑して聞き流せます。
2月10日(1904)、日露戦争の開戦した日です。約100年前の出来事です。
1904年を基点として100年前と後を考えると、時代の目まぐるしい動きに自分の想像が付いていきません。
人間の想像力なんて、大したものではないことを思い知らされます。
2月12日(1538)、風景画を最初に描いた画家として知られるアルトドルファーの命日です。
創始者というのは、それだけで尊敬に値します。
今週の花材は、執務室の雪柳と百合、秘書室のカラーの白が、雪が降った翌朝の爽やかさを象徴しているようです。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■雪柳 バラ科/落葉低木/原産:日本・
中国/《名前の由来》柳のように枝がしなやか
に垂れる事と、花を散らした様子が雪が降った
かのように見える事から/春に小さな白い花
を枝いっぱいに咲かせる。庭木としてもよく利
用される。
■OHユリ〔シベリア〕 ユリ科/球根植物
/優雅な花姿と芳香が特徴のオリエンタルハ
イブリッド種。「シベリア」は白色品種。
■ユーカリ〔ポリヤンタマス〕 フトモモ科/
常緑高木/原産:オ−ストラリア/原産地を中
心に約600種分布。コアラの食べる木として
有名。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2091.jpg
■雪柳 バラ科/落葉低木/原産:日本・
中国/《名前の由来》柳のように枝がしなやか
に垂れる事と、花を散らした様子が雪が降った
かのように見える事から/春に小さな白い花
を枝いっぱいに咲かせる。庭木としてもよく利
用される。
■OHユリ〔シベリア〕 ユリ科/球根植物
/優雅な花姿と芳香が特徴のオリエンタルハ
イブリッド種。「シベリア」は白色品種。
■ユーカリ〔ポリヤンタマス〕 フトモモ科/
常緑高木/原産:オ−ストラリア/原産地を中
心に約600種分布。コアラの食べる木として
有名。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2091.jpg
【秘書室】
■カラー〔ウェディングマーチ〕 サトイモ科/球根植物/
原産:南アフリカ/《名前の由来》Yシャツの襟(カラー)に似
た花姿から/メガホン状の花に見える部分は苞で、その中
に棒状の花序をもつ。
■モカラ〔ムーンライトイエロー〕 ラン科/原産:東南ア
ジア/「バンダ」「アラクニス」「アスコケントルム」の3種の
蘭を交配した人工種。南国らしい濃く鮮やかな色合いの品
種が豊富。暑さにも強く、非常に観賞期間の長い花。
■アンスリュウム〔チョコ〕 サトイモ科/常緑多年草/
原産:熱帯アメリカ/光沢があり造花と見間違うような花。
花弁のように見える部分は苞で、中心の棒状の部分が花。
「チョコ」は品種名の通り、シックな茶系の色。
■ドラゴン柳 ヤナギ科/雲竜柳の変種。くねくねした
枝の形が特徴。黄色〜赤茶系の茎で、枝振りも変化に富
む。今回はドライになったものを使用。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2092.jpg
■カラー〔ウェディングマーチ〕 サトイモ科/球根植物/
原産:南アフリカ/《名前の由来》Yシャツの襟(カラー)に似
た花姿から/メガホン状の花に見える部分は苞で、その中
に棒状の花序をもつ。
■モカラ〔ムーンライトイエロー〕 ラン科/原産:東南ア
ジア/「バンダ」「アラクニス」「アスコケントルム」の3種の
蘭を交配した人工種。南国らしい濃く鮮やかな色合いの品
種が豊富。暑さにも強く、非常に観賞期間の長い花。
■アンスリュウム〔チョコ〕 サトイモ科/常緑多年草/
原産:熱帯アメリカ/光沢があり造花と見間違うような花。
花弁のように見える部分は苞で、中心の棒状の部分が花。
「チョコ」は品種名の通り、シックな茶系の色。
■ドラゴン柳 ヤナギ科/雲竜柳の変種。くねくねした
枝の形が特徴。黄色〜赤茶系の茎で、枝振りも変化に富
む。今回はドライになったものを使用。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2092.jpg