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理事長室からの花だより
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理事長室からの花だより
vol.212 − 歩 (あゆむ) −
早朝の出勤時、車のライトが点(つ)いていません。大気は冷たくても、春です。梅の開花も聞かれます。
この時季、東の空が薄紅色からだんだんと、篝火(かがりび)のような色に染まり、日の出の始まりです。
曙(あけぼの)の雲が最も美しい季節でもあります。
山頂から顔を出さない朝陽が、西の山々の頂(いただき)を赤く染め上げています。
近年の気象の荒々しさは不気味です。
先般の、最強の寒気襲来、列車がトンネルを抜けて福島盆地に入ると、雪のない大地から、文字通り、今までの周囲とは打って変わって横殴りの雪と雪原、これまであまり経験したことのない降り様でした。
そして、今度の強烈な北海道や北東北の風雪、自然は、時に非情です。
人々の安寧(あんねい)な暮らしと気持ちをまだ手に入れていない今、これまで何をしてきたのか、今、何をしているのか、そして残されたこれからの日々何をしようとしているのか、自分の人生をこれで終わって本当にいいのか、裡(うち)なる自分に問い掛けてしまいます。
聖書の影響でしょうか、リンカーン、ヴェルレーヌ、ゴーギャンなどが同じような言葉を残しています。
只、このような、自らを主語にしての考え方、内から外へ向かって広げる視点は、一神教の世界で育った人間の発想です。例えれば、森でなく木をみています。
・・・・・・・・・・
皎皎(こうこう)たり 空中の孤月輪(こげつりん)
江畔(こうはん) 何れの人か 初めて月を見し
江月 何れの年か 初めて人を照らせし
・・・・・・・・・・
張若虚(ちょうじゃくきょ)
この月をはじめてみたのは誰か、この月が、はじめて人を照らしたのはいつか、自然と人間が一体となった雄大な詩です。多神教の文化では、主人公は、自然で、外から内に向かう発想です。
復興への一歩一歩の地均(なら)し、こんな時にこそ発想の転換ができます。
自らを振り返ってみても、小さな病院の勤務で心身の限界を感じた時、外来を一日休みにして、その日を朝から手術だけに当てました。皆が納得してくれました。
苦しいときこそ必死で考え、決断できます。そして、視点の先は、木でなく、森です。こんな時だからこそ、昔、先人達が、確かに持っていた里山の思想に戻ることが、今、求められているのではないでしょうか。
人は、自分の背中がみえないだけに、時には振り返る機会も必要です。
何故なら、人は過去という軸と他人との関わりというもう一つの軸の交叉したところで生きているのですから。
背中というのは、その人の人生やその時の心境を映し出す鏡です。
過去のない人生なんてありません。それだけに、原発事故で過去を奪い去られて避難されている人々の苦悩、痛い程分かります。
自らに「今が全(すべ)て」と、過去を振り返らずに来ただけに、喜び、哀しみ、そして後悔を含めて過去を愛(いと)おしんで良いのだ!と人生観が変わりました。
今週の花材は、執務室は“春”、秘書室は一輪ずつの暖かさの象徴です。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
この時季、東の空が薄紅色からだんだんと、篝火(かがりび)のような色に染まり、日の出の始まりです。
曙(あけぼの)の雲が最も美しい季節でもあります。
山頂から顔を出さない朝陽が、西の山々の頂(いただき)を赤く染め上げています。
近年の気象の荒々しさは不気味です。
先般の、最強の寒気襲来、列車がトンネルを抜けて福島盆地に入ると、雪のない大地から、文字通り、今までの周囲とは打って変わって横殴りの雪と雪原、これまであまり経験したことのない降り様でした。
そして、今度の強烈な北海道や北東北の風雪、自然は、時に非情です。
人々の安寧(あんねい)な暮らしと気持ちをまだ手に入れていない今、これまで何をしてきたのか、今、何をしているのか、そして残されたこれからの日々何をしようとしているのか、自分の人生をこれで終わって本当にいいのか、裡(うち)なる自分に問い掛けてしまいます。
聖書の影響でしょうか、リンカーン、ヴェルレーヌ、ゴーギャンなどが同じような言葉を残しています。
只、このような、自らを主語にしての考え方、内から外へ向かって広げる視点は、一神教の世界で育った人間の発想です。例えれば、森でなく木をみています。
・・・・・・・・・・
皎皎(こうこう)たり 空中の孤月輪(こげつりん)
江畔(こうはん) 何れの人か 初めて月を見し
江月 何れの年か 初めて人を照らせし
・・・・・・・・・・
張若虚(ちょうじゃくきょ)
この月をはじめてみたのは誰か、この月が、はじめて人を照らしたのはいつか、自然と人間が一体となった雄大な詩です。多神教の文化では、主人公は、自然で、外から内に向かう発想です。
復興への一歩一歩の地均(なら)し、こんな時にこそ発想の転換ができます。
自らを振り返ってみても、小さな病院の勤務で心身の限界を感じた時、外来を一日休みにして、その日を朝から手術だけに当てました。皆が納得してくれました。
苦しいときこそ必死で考え、決断できます。そして、視点の先は、木でなく、森です。こんな時だからこそ、昔、先人達が、確かに持っていた里山の思想に戻ることが、今、求められているのではないでしょうか。
人は、自分の背中がみえないだけに、時には振り返る機会も必要です。
何故なら、人は過去という軸と他人との関わりというもう一つの軸の交叉したところで生きているのですから。
背中というのは、その人の人生やその時の心境を映し出す鏡です。
過去のない人生なんてありません。それだけに、原発事故で過去を奪い去られて避難されている人々の苦悩、痛い程分かります。
自らに「今が全(すべ)て」と、過去を振り返らずに来ただけに、喜び、哀しみ、そして後悔を含めて過去を愛(いと)おしんで良いのだ!と人生観が変わりました。
今週の花材は、執務室は“春”、秘書室は一輪ずつの暖かさの象徴です。
(福島県立医科大学理事長 菊地臣一)
今週の花
【理事長室】
■桜〔勝道彼岸〕(ショウドウヒガン) バラ
科/落葉高木/古くから親しまれる春の代表
樹。日本では変種を含め100種以上が自生
し、園芸品種は200を超える。南北に長い日
本では沖縄から北海道まで、約5ヵ月にわたっ
て桜前線が縦断。桜前線の開花日は、全国で
一番多く植えられている染井吉野(ソメイヨシ
ノ)。「勝道彼岸」は勝道桜(ショウドウザクラ)
と江戸彼岸(エドヒガン)の自然雑種。「勝道
桜」は日光山を開いた勝道上人の名に因ん
で。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2121.jpg
■桜〔勝道彼岸〕(ショウドウヒガン) バラ
科/落葉高木/古くから親しまれる春の代表
樹。日本では変種を含め100種以上が自生
し、園芸品種は200を超える。南北に長い日
本では沖縄から北海道まで、約5ヵ月にわたっ
て桜前線が縦断。桜前線の開花日は、全国で
一番多く植えられている染井吉野(ソメイヨシ
ノ)。「勝道彼岸」は勝道桜(ショウドウザクラ)
と江戸彼岸(エドヒガン)の自然雑種。「勝道
桜」は日光山を開いた勝道上人の名に因ん
で。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2121.jpg
【秘書室】
■ピンポン菊 キク科/多年草/原産:オ
ランダ/ピンポン玉のように真ん丸に咲く。と
ても可愛らしく、非常に長く鑑賞できる。今回
は赤茶色とオレンジの2色を使用。
■アンスリュウム〔カリスト〕 サトイモ科/
常緑多年草/原産:熱帯アメリカ/光沢があ
り造花と見間違うような花。花弁のように見え
る部分は苞で、棒状の部分が花。苞を鑑賞す
る花なので、長く楽しめる。
■ヒペリカム〔マジカルトリンプ〕 オトギリソ
ウ科/半常緑低木/初夏に黄色い花が咲く。
切り花では花後の実を鑑賞するものとして流
通。花色は赤を中心に白〜ピンク、茶や緑な
どもある。
■ドラセナ〔コーディラインカプチーノ〕 リュ
ウゼツラン科/常緑低木/原産:熱帯アジア・
熱帯アフリカ/ドラセナ類は日本で流通する観
葉植物の代表種。「カプチーノ」は赤黒の葉の
縁に白色が入る品種。
■モンステラ サトイモ科/蔓性植物/
《名前の由来》ラテン語の“モンストラム”(異
常・怪物)から/成長するにつれ、葉の縁から
葉脈にかけて深い切れ込みや穴ができる。独
特の葉型が面白く、モチーフとしても人気の熱
帯植物。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2122.jpg
■ピンポン菊 キク科/多年草/原産:オ
ランダ/ピンポン玉のように真ん丸に咲く。と
ても可愛らしく、非常に長く鑑賞できる。今回
は赤茶色とオレンジの2色を使用。
■アンスリュウム〔カリスト〕 サトイモ科/
常緑多年草/原産:熱帯アメリカ/光沢があ
り造花と見間違うような花。花弁のように見え
る部分は苞で、棒状の部分が花。苞を鑑賞す
る花なので、長く楽しめる。
■ヒペリカム〔マジカルトリンプ〕 オトギリソ
ウ科/半常緑低木/初夏に黄色い花が咲く。
切り花では花後の実を鑑賞するものとして流
通。花色は赤を中心に白〜ピンク、茶や緑な
どもある。
■ドラセナ〔コーディラインカプチーノ〕 リュ
ウゼツラン科/常緑低木/原産:熱帯アジア・
熱帯アフリカ/ドラセナ類は日本で流通する観
葉植物の代表種。「カプチーノ」は赤黒の葉の
縁に白色が入る品種。
■モンステラ サトイモ科/蔓性植物/
《名前の由来》ラテン語の“モンストラム”(異
常・怪物)から/成長するにつれ、葉の縁から
葉脈にかけて深い切れ込みや穴ができる。独
特の葉型が面白く、モチーフとしても人気の熱
帯植物。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2122.jpg