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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2013.03.29

vol.215  − 佇 (たたずむ) −

福島では梅、椿、山茶花(サザンカ)が一緒に咲いています。
朝まだき、瀬音に混じって鳥(毎年聞くのですが名前が分かりません)の鳴き声がしきりに聞こえてきて、春の巡(めぐ)りを実感させてくれます。
只、最近の季節の変化の荒々しさは、日本人の季節感に影響を及ぼすのではと心配しています。

都内では、外務省脇の桜(vol.170 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=204
が咲いたと思ったらあっという間もなく満開です。
江戸見坂下の小さな公園の辛夷〔コブシ〕(vol.126 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=159)、ビジネス街での椿や山茶花、東京ならではの花の協演、心做(な)しか街行く人々の表情も明るく感じます。

鉄路から、河の畔(ほとり)に立つ奥州白河城が目に入ります。
夜目(よめ)には、土井晩翠の詩そのままの姿です。東北では珍しい総石垣造りの城で、戊辰の役、ここで激しい戦いがありました。幼い頃、城巡りの際に、ある一角に来た時、ここが人柱の場所だと、父から教えられた記憶があります。

東日本大震災で、石垣の一部が崩壊してしまいました。
江戸時代に築かれた石垣の大部分は無事との事、自然の力と古人の叡知を再認識しました。

国家試験、学位記授与式(卒業式)が終わると、大学は、一瞬、虚脱感が構内の木立(こだち)を覆います。
“透明な哀しみ”と表現したくなるような感情です。別離に伴う哀しみは、人(ヒト)を成長させてくれます。
巣立った若者には、勁(つよ)く、優しい医療人になって欲しい、この一言に尽きます。

       餞別
         君と後会(こうくわい)せむこと何(いづ)れの処(ところ)とか知らむ
         我が為に今朝(きんてう)一盃(いっぱい)を尽(つく)せ
                                               白(はく)

富山への出張で、県立近代美術館に再び足を運びました。
建物は、前川國男の監修で、白御影石とミラーガラスを多用した箱形の外観です。周りに池を配しているのですが、財政難からか、枯池でした。多数の噴き出しノズルが床に剥き出しになっていて、そこだけ廃墟を思わせます。

この美術館の特色の一つは、剣持勇の「籐(とう)丸椅子」、ル・コルビュジェの「LC4」、C・マッキントッシュの「ヒルハウスチェア」、H・ウェグナーの「Y−チェア」など、歴史に残る近代の椅子のコレクションです。
実際に座って体験できる椅子の用意、前回訪問時にはなかった工夫です。
マンズーの「着衣の少女」と新妻実の「ピラミッド‘83」の彫像は目を引きます。前者は妖しげで、少し不気味です。
ピカソの「肘掛け椅子の女」の醸し出す和(やわ)らかな雰囲気、みている人間の心まで穏やかにしてくれます。
一番惹かれるのは、ナウム・ガボの「空間の中の線の構成NO.2」です。涼やかな穏やかさと張り詰めた緊張感を感じさせる、不思議な作品です。ペギー・リーの「シー・シェル」が脳裡に流れます。
鑑賞の通路上に何気なく置かれているのも、素敵です。只、そこに足を止めている人をみません。

今週の花材は、執務室は寒風を避けて日溜まりの中に蹲(うずくま)っている子供を、秘書室は早春の春風に似た清冽さを感じさせてくれます。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■パフィオペディラム〔シンデレラグリーン〕
ラン科/原産:東南アジア・中国・インド/《名
前の由来》ギリシャ語の“パフィア”(ヴィーナ
ス)と“ペディロン”(サンダル・上靴)の2語か
らで、“ヴィーナスのスリッパ”という意味。花
びらの一部が袋状になることに由来/袋状に
なる唇弁が印象的で目を引くユニークな花姿。
■アンスリュウム〔みどり〕   サトイモ科/
常緑多年草/原産:熱帯アメリカ/光沢があ
り造花と見間違うような花。花弁のように見え
る部分は苞で、棒状の部分が花。
■ピンポン菊〔パンテオン〕   キク科/多年
草/原産:オランダ/《名前の由来》ピンポン
玉のように真ん丸に咲く事から/日持ちの良
い菊の中でも、とくに長く鑑賞できる菊。「パン
テオン」はデコラ咲品種。ダリアのような花姿
で赤茶色のシックな菊。
■リューカデンドロン〔サファリサンセット〕   
ヤマモガシ科/原産:南アフリカ/《名前の由
来》ギリシャ語で“白”(リュウカ)と“木”(デンド
ロン)から/花弁のように見える部分は苞葉
で、その中に花序がある。「サファリサンセッ
ト」は赤茶色の品種。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2151.jpg

【秘書室】
■トルコギキョウ〔アンバーダブルワイン〕   
リンドウ科/多年草/原産:北アメリカ/「アン
バー」シリーズは琥珀を思わせるヨーロピアン
調のシックな色合い。蝋細工のような独特な
質感の花弁をもつ。「ダブルワイン」はボルドー
カラーの八重咲品種。
■ピンポン菊〔マライヤグリーン〕   
(理事長室同花材)
■カーネーション   ナデシコ科/多年草/
原産:地中海沿岸/江戸時代にオランダから
渡来。ペールカラーからビビッド、覆輪や絞り
模様など、花色がとても豊富。
■ベアグラス   ユリ科/原産:北アメリカ/
細く長い線状でしなやかな葉。束ねたりカール
させたりとバリエーションが楽しめるグリーン。
非常に丈夫で、籠を編む材料に使用される。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2152.jpg

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