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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2013.06.14

vol.224  − 惜 (おしむ) −

空梅雨(からつゆ)の今、風が梢(こずえ)を揺らして吹き抜けていくのがみえます。
緑は益々深く、樹々(きぎ)の匂いが川のせせらぎに乗って届いてきます。
「浅き瀬にこそ仇波は立て」、水流が減り、瀬音が一段と高くなっています。

ジャカランダの薄紫、エゴノキの白、散り敷かれている花々をみていると“花は土に還(かえ)る”を実感します。人生と巡る季節は合せ鏡のようです。

         春を留(とど)むるに  春住(とど)まらず
         春帰って人寂漠(せきばく)たり
         風を厭(いと)ふに風定(しず)まらず
         風起(た)って花蕭索(せうさく)たり
                               白居易(はくきょい)

春を引き留めておきたいと思っても、春は逝ってしまいます。
人は、逝ってしまった春を惜しみ、立ち尽くしてしまいます。花を散らしてしまう風を憾(うら)んでも、風が静まることはありません。花は散り、寂しさは一層募ります。無常は世の常です。

我が国にも同じような歌があります。

         またも来む  時ぞとおもへど  たのまれぬ
         わが身にしあれば  惜しくもあるかな
                                 紀貫之

春は去り、また巡り来ます。只、その時、人の命はあるかどうかは分かりません。

花は、真に生命の謳歌の象徴です。
花の華やかさが眩しければ眩しい程、人の命の儚さに想いが向いてしまいます。ここに“名残”をみます。

歳月は流れてゆくのではなく、積み重なっていくものです。
   (vol.210 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=247
年齢を重ねるに従い分かることもあります。挫折は人を優しくします。悲しみの数だけ優しくなれるのです。
   (「学長からの手紙」vol.210 http://www.fmu.ac.jp/univ/daigaku/letter/210.html
理不尽や不条理に曝(さら)され、怒り、哀しさ、悔しさ、寂しさ、落胆が時とともに昇華されて、その人間特有の優しさが形作られていくような気がします。

勿論、挫折が余りに大きかったり、数が多すぎては却って人間をだめにしてしまいますが…。

気分転換に、土曜日に開かれる朝市に顔を出してみました。
マルシェの日本版でしょうか、生鮮食料品が主に並んでいます。花や野菜の香りが季節を感じさせてくれます。なかには授産施設からの出店もあります。

どんな人間もそれまでの人生によって形作られた自分を変えることは難しいものです。
気が付けば、誰も立ち寄っていない売り場や授産施設の出店に足が向いてしまいます。悪いことに、欲しくないものまで買ってしまいます。只、一時、気分転換を図ることができます。

H・グレイが6月13日に逝去しています(1861)。享年34歳という若さです。
この本を有名にした画を描いたカーターの名前が歴史の中で埋もれてしまっているのは、歴史の皮肉です。
「グレイの解剖学」は今でも医学を志す者の基本的な教科書の一つです。海外では、彼の名を冠した医学ドラマシリーズも作られています。彼が、1827年生まれは分かっているのですが、誕生日まではどこにも記載がありません。

今週の花材は、執務室、秘書室ともに緑の葉の間を通り抜ける風を連想させてくれます。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■ニシギキ   ニシキギ科/落葉低木/カエ
デ・スズランの木と並ぶ世界三大紅葉樹。枝に
コルク質の翼を4方向につけるのが特徴。春に
小さな花が咲き、赤い実をつける。
■ギガンジュウム   ユリ科/ネギ坊主のよう
な紫色の球状花。小さな花が密集して咲き、開
花が進むにつれ球形が大きくなる。茎にハサミ
を入れるとネギの香りがする。
■アンスリュウム〔マスコット〕   サトイモ科/
常緑多年草/ロウ細工のような光沢のある造
花と見間違うようなトロピカルな花。花弁のよう
に見える部分は苞で、棒状の部分は花。「マス
コット」はピンク系の品種。
■LAユリ〔パーティダイヤモンド〕   ユリ科/
球根植物/鉄砲百合とスカシユリの掛け合わ
せ品種。両種の長所をもちあわせた中輪咲きの
ユリ。
■ドラセナ〔ゴッドセフィアーナ〕   リュウゼツ
ラン科/常緑低木/卵形の葉にはいる黄白色
の斑が特徴。数あるドラセナの仲間の中で特異
なグリーン。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2241.jpg

【秘書室】
■リアトリス   キク科/多年草/北アメリカ原産で大正末期に渡来。
細長い穂状に花を咲かせる。他に球状に花を咲かせる玉咲き品種もあ
る。
■バラ〔ブルーミルフィーユ〕   バラ/落葉低木/花形・花色等多岐に
わたり品種は約2万種超。世界的にも古くから親しまれ人気のある花。
「ブルーミルフィーユ」は淡紫色で花弁が多い品種。
■モルセラ   シソ科/一年草/ミントのような芳香がある。花弁のよう
に見える円形のガクの中に小さな白い花が咲く。爽やかなライトグリーン
と独特の茎のラインが特徴。
■ドラセナ〔ミリオンバンブー〕   リュウゼツラン科/常緑低木/「ドラ
セナ・サンデリアーナ」を竹のように仕立てたもの。開運や金運などに良
いとされ、雑貨店等でも流通。
■モンステラ ■アレカヤシ ■テマリソウ(今回は使用花材が多いた
め、使用頻度の高いグリーン類の詳細は省略しました)
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/2242.jpg

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